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58草

前回のあらすじ「マンドレイクの魔女とエンカウント」

―「王都ボーデン・メインストリート パン屋」―


「なるほど……もしかしたらと思っていましけど、あなたがあのウィードだったんですね」


 朝食を取りながら、俺の事を話すモカレート。


「あのってことは、俺って結構有名なのか?」


「一部の人だけですけどね……何でも治す薬の開発にイグニスの討伐……流れている情報だけでも、かなりの高レベルモンスターを従魔にしているとは思っていましたけど……まさか、この子達と同じ植物とは……。ちなみにお二人に訊きたいんだんですけど……この子ってまさか……」


「ええ。魔王よ?」


「ですよね……」


「魔王になる気は無いけどな……そうか。モカレートは知ってる側なんだな」


「私はAランクですからね。冒険者ギルドから教えてもらってます」


 異世界からの転生者の情報は一般的ではない。この情報を教えてもらえるのは、それを対処するための関係者のみである。王様は当然であり、その配下、騎士団があればその騎士団の隊長、副隊長辺りまでが極秘の情報として伝えられる。そして……何でも屋の冒険者ギルドはギルド長とギルド副長、そして一番ランクの高いAランクに教えられる。結構な人数に教えてるのに、この情報が広く広まっていないのが不思議でしょうがない。


「それで、モカレートは調査で何をしていたの?」


「そうですね……そうしたら、朝食後にお見せしますよ」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―朝食後「王都ボーデン・メインストリート 怪しい家」―


「では……皆!よろしくお願いしまーす!」


 モカレートの言葉に反応して、ちょこちょことあっちこっち何かを捜し始めるマンドレイク。あ、一体こけた。


「なるほど……人海戦術で探すのね。人じゃなくてマンドレイクだけど」


「はい。この子達は細かい物を探すのが得意でして……」


「なるほどな……それじゃあ、俺もやるか。スキャン」


 俺も自分のアビリティを使って、まず入り口付近のあらゆる物を調べる。


「ウィードさんは何を?」


「この部屋の全てを鑑定してるのよ」


「え!?そんなアビリティがあるんですか?」


「まあ……実際にウィードが使ってるしね……で、どうなの?」


「……うーーん。無いな。どれもこれもありきたりな物みたいな表記だしな……ここは2階を……うん?」


「何か見つけたの?」


「あら?この子達も何か見つけたみたいですよ」


 モカレートの魔女のような黒いワンピース服の裾を引っ張って、何かを見つけたような仕草をするマンドレイク。数体は俺が感知した方向と同じ方向を指で差している。


「ウィード。何を見つけたの?」


「地下室があるぞ。この家」


 マンドレイク達の後を付いていくと、ある床の一ヶ所をジャンプして何があるかを教えてくれる。


「同じですか?」


「ああ。同じだ……そいつがジャンプしてる所の板が外れて、そこに取っ手があるぞ」


 俺の話を聞いて、モカレートがマンドレイクに指示して、板を外してもらう。そしてモカレートが取っ手を掴み、上に上げると地下への入り口が見えた。モカレートもその板を横に置いてそれを確かめる。


「真っ暗だな……ドルチェ。俺を地下の入り口の上に」


「うん」


 ドルチェが俺を両手で抱え、その腕を地下室の入り口の上に差し出す。


「スキャンそしてエコーロケーション」


 地下に向けて、俺はそれらを発動させる。生物の反応は無し……有害物質も……。


「……」


「ウィード?どうしたの」


「誰かいる……いや、いた。だな」


「……私が行くわ。何かトラップは?」


「無い。それと俺も連れて行ってくれ。何か分かるかもしれない」


「そうしたら私も行きます。マーちゃんとドーちゃん以外はこの場で待機させますね」


 マンドレイクのマーちゃんとドーちゃん……もしかして、残りの4体もそんな名付け……うん?となると一体はンーちゃんになるのか……? 


「兵士を呼んでくるね」


「お願い」


 ドルチェに応援を呼びに行かせ、マンドレイク4体にはその場で誰か邪魔しに来ないか見張ってもらった所で、地下へと続く梯子を下りていく俺達。地下までそんなに深くはなく、すぐに地下室の床に足が着いた。


「よっと!」


 俺は灯りとして火をともす。殺風景な部屋……そこには家具などは無く。1つの椅子と…………。


「……酷いわね」


「ああ……」


「失礼します……」


 下りてきたモカレートが俺達の横を通り過ぎて、それの目や腕などを確認していく。


「死因は……衰弱死ですかね」


「床に真新しい傷があるぞ……恐らくその被害者がどうにかしようとして、暴れたんだろうな」


 そこにいたのは女性の死体。目をこれでもかと見開き、何か恐ろしい物を見たような表情で死んでいる。その口には声を出せないように猿轡をされ、そして……。


「両手、両足……骨を折られていますね……」


 調べ終わったようで、その場から立ち上がるモカレート。


「終わったなら……これを」


 俺は布を収納から取り出す。モカレートは死体を床に寝かせ、その顔に布を被せる。


「「「……」」」


 少しの間、この女性へのご冥福を祈った俺たちは、ドルチェが呼んできた兵士が来るまで、この部屋を調べるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから3時間ほど「王都ボーデン・冒険者ギルド」―


「クエスト完了を確認しました……お疲れさまでした」


「ありがとうございます」


 あの後、俺達は一通り調査したが、目ぼしい物は見つからなかった。その後、兵士がやって来て遺体を回収。その後、あの家をくまなく調べたが何か出る事は無かった。


「嫌な終わり方ね」


「はい……ここまでスッキリしない終わりというのは、久しぶりですね」 


 クエストが終わったのに、その表情はとても暗いモカレート。マンドレイク達が必死に励まそうそしている。


「あ!皆さん!」


 声を掛けられたので、振り向くとフォービスケッツの4人がこちらに近づいてくる。


「あら?あなた達も来ていたのね」


「はい。クエスト完了!報酬もバッチリ!」


「で、そっちは何かあったんかい?暗い表情なんだけど?」


「外で話すわ。お昼時だし」


「二人共……飯食えるのか?」


「大丈夫よ」


「私もです。死体に出くわすなんて冒険者やっていれば、よくあることですから」


 先ほどの死体を見た後で、少し心配したのだが……杞憂のようだった。ちなみに、俺がこの姿じゃ無かったら昼食はいらなかったな……。今回は草で助かった。その後、冒険者ギルドを離れ、適当な飯屋に入って昼食を取りつつ、先ほどの出来事をフォービスケッツの4人に話す。その話を聞いて全員が嫌悪感を示す。


「酷い……」


「寝ながら言うと説得力が無いんだがな……」


 昼食後、ガレットがいつものように肥満薬を飲んでから椅子に座って寝ている。牛になるぞー!と言いたいところだが、今は子豚というところだろうか。 


「面白い薬ですね……私でもそれって作れますか?」


 ガレットの姿を観察しながら、俺に訊いてくるモカレート。


「そういえば、植物学と薬学に関しては国内一だったな」


「いえいえ!そこまで凄いとか過大評価し過ぎですって!!」


「でも、実際にマンドレイクを使役しているところを考えると、凄いと思うぞ?」


「まあ、そこは自分の研究成果ですから……そこには自信がありますね。ただ、それ以外はこの子達が優秀過ぎて……」


「もしかして、薬の調合とかこいつらが教えてくれるのか?」


「はい……そして私はそれを言葉にして書き留めているだけですね。まあ、知識はあるので理解もしていますが……」


「十分だろう。何も知らないのと、きちんと理解してるのでは雲泥の差だしな……薬の情報が知りたいなら教えてもいいぞ。二人もいいよな?」


 ドルチェとココリスが頷いて答える。


「皆さん。ありがとうございます……ちなみに、私もそれを試してもいいですか?」


「……」


「あの~……ウィードさん?どうかされましたか?」


「いや……いいんだが……何でこの世界の奴らって太ることに躊躇しないんだろう?もはやドルチェが珍しい位だぞ」


「私は冒険者であり研究者でもありますから……この調子だと、薬は時間経過で効力が切れる物でしょうし」


「ああ。その通りだ……ほい。お試しだからな。一番軽くて、少ししたら戻る量だ」


 俺は先ほどまで飲み物が入っていたコップに肥満薬を入れる。ウイスキーならワンショットぐらいの量ってところか。


「では……」


 それを飲み干すモカレート。効果は直ぐに現れて……おう……。


「即効性があるんですね……あっという間に着ている服がパツパツに……無味無臭だから水のように飲めますね」


 そう言って、胸の辺りでバッテンしている紐を直そうとするモカレート。しかし、巨乳になったその胸に紐がしっかりと食い込んでしまっている。そのムチッとした大きい胸に食い込む紐というのは男としてそそるものが……。


「ちなみにこれってどんな物を使って調合を?」


「あ、ああ……俺は土から養分を吸って作るんだが……レシピにするとだな」


 俺は紐が食い込んだ巨乳を横目で見つつ、薬のレシピを教えていくのであった。


(変態……)


 ココリス……念話でわざわざそれを言わないで欲しい。

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