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44草

前回のあらすじ「無鉄砲な犯人」

―次の日「エポメノの崩壊した塔・20層 セーフエリア」―


「さてと……攻略をやっていくわよ」


「はい!」


 あの後、宿に戻ってしっかり休息を取ってきた俺達。何者かが襲ってくるかと心配していたが、新魔法も使って調べたが特に誰かが来るという事は無かった。


 そして今日の朝、再び転移魔法陣を使って、20層のセーフエリアまで戻って来て、次の層への移動中の俺達なのだが、そこでふと気づいたことを訊いてみる。


「なあ、ドルチェとココリスに訊くんだけど……二人ってここを攻略したんだよな?一気にアレでボス部屋まで移動すればいいんじゃないのか?」


「出来ないわよ。どこのダンジョンも同じなんだけど、ボス部屋到達してから一ヶ月すると、使用不可になるの。だから、もう一度踏破しないといけないのよ」


「そうなのか……じゃあ昨日60層まで表示されたけど、一度踏破すればボスに連戦出来るのか?」


「出来ないよ。あの60層の表示なんだけど、アレってボス部屋の先の部屋なんだ。それでそこからボス部屋に戻ることは出来ないから、連戦するには40層からまた60層まで上がらないといけないんだ」


「なるほど……よく出来てるな……」


 まあ、そう都合よくいかないか……。そんな事が出来たら、上級冒険者にとって稼ぎ放題になるもんな。


「さあ、次の層よ」


 階段を登り切った先には、下層でも見られた草原と森が混合したエリアだった。


「ここは何が出るんだ?」


「狐と狸の()()()()が出るわよ」


「どっちか……ですか?」


 ヴィヨレがココリスのその言い方が気になって聞き返した。20層より下は最初のラージ・ドッグとラージ・キャットがいる最初の層を除けば、一種類しか出てこない。さらに複数出るのは、昨日の話では上層と言っていたので、この21層であるこの層では無いだろう。


「この21層から29層ってマジック・フォックスとマジック・ラグーンがランダムでその層を守ってるの。だから、姿を現すまでは分からないんだ」


「フォックスは炎と風を、ラグーンは土と水を使ってくるから気を付けなさい」


「分かった!……で、訊いていいか?」


「何?」


「こいつらって化かしたりする?」


「いいえ?無いけど……どうかしたのかしら?」


「いや。気にするな」


 日本では姿形を変えて、人を化かすというが……それが無いのはありがたい。


「じゃあ……いくわよ!」


 そうして、今日のダンジョン探索が始まるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―数時間後―


 あの後、マジック・フォックスとマジック・ラグーンを討伐しつつ、30層のセーフエリアに辿り着いた。不要な戦闘はしなかったために、そこまで特出するような出来事は起きなかった……しかし、これは……。


「モフモフ~~♪」


「ひゃ!!止めて下さい!!こうなったら!!」


「うわわ!!掴まないで!!」


「あなたたち楽しそうね」


「ココリスも!!」


「え!ちょ!!?」


 お昼を取り終えた3人が、互いの尻尾を触り合って、くんずほぐれつしている……。そんな光景を鼻の下を伸ばしながらガン見している俺。まあ、草だから鼻なんて無いのだが。


「いや……!!ちょっと!!?そこは!!!!」


「ふふん!って……そこは……!」


「きもち……いい……♪」


 お前ら……ここに男がいるのに、そんな声を出していいのか?ってか、あのでかい尻尾、かなり敏感なんだな……。3人とも人に近い獣化中なのだが、その尻尾がデカい。抱き枕には丁度いいサイズだろう。それに見ただけで俺には分かる……最高の触り心地だと!!


「ふかふか~……♪」


「何か……これを枕にして寝たくなりますね……」


 ドルチェがヴィヨレの狐の尻尾に抱き付きその触り心地を寝転がりながら確認する。そしてヴィヨレはココリスの狸の尻尾を枕にして、眠そうな表情をしている。


「ほら!後、半分進まないといけないんだから!!」


「分かってるって……」


「獣化解除薬を出すか?」


「いいえ。このままでいいわ。この先には狐も狸も出てこないから、これ以上の獣化は無いの」


「いいのか?何かその尻尾……大分、感度良さそうなんだが……さっきもいい声を……」


「これで……あなたの(かみ)をカットしてあげた方がいいかしら?」


 そう言って、ココリスは使用している槍を取り出して軽く振り始める。


「いえいえ。丁重にお断りいたします。だからその槍を下ろして下さい……で、本当にいいのか?戦闘の阻害になりそうなんだが?」


「この先の獣化は少し危険なの。だから、ここでこの程度の獣化をして素早く抜けるのが一番よ」


「危険?」


「ええ。しかもランダムだから何が出るかはその日のお楽しみ……」


「それは、うれしくないお楽しみだな……それで、そいつらの詳しい情報はあるんだよな?」


「もちろんよ。ってことで……」


 ココリスが自身の狸の尻尾を動かして寝ていたヴィヨレを起こす。


「うわ?」


「十分に休息は取れたでしょ?出発よ」


「ということだ。ヴィヨレ。俺を運んでくれ」


「は、はい……あれ?」


 俺を手に取ろうとして、立ち上がろうとするヴィヨレだったが、尻尾にしがみ付くドルチェのせいで立てずに、その場に再び座り込んでしまう。


「あなたも起きなさい」


 ヴィヨレは槍の石突で、気持ちよさそうに寝ているドルチェの頭を小突いて起こす。


「うーーん……もうちょっと……」


「……ここで獣化を解除して上に行きたいのかしら?」


 それを聞いたドルチェが素早く起き上がって、身だしなみを整える。


「準備完了です!!」


「はいはい。それじゃあいくわよ」


「この先のモンスターってそんなにヤバいのかよ……?」


「それを移動しながら説明するわ」


 説明を受けつつ階段を上がる俺達。そして31層に着くと、そいつが目の前を歩いていた。


「アレがプラティパスよ。これから出て来るモンスターの中ではマシな部類よ」


「理由は口が嘴になって、手足が水かきになるからか?」


「ええ。アレになると上手く喋れなくなるし、手足に水かきが付いて武器が上手く持てなくなって……中々に厄介な獣化よ」


「水中なら強いんだろうけどな……カモノハシは」


 河川や湖で生息している動物だもんなこいつ。恐らくはその横にある川にいつもは住んでいるんだろう。


「でも、ラッキーだよ。戦わないで済むもの」


「そうなんですか?」


「見れば分かるんだけど……」


 ペタペタと歩きそのまま川へと移動するプラティパス。その動きは……遅い。


「陸上では遅いの。戦う際も水辺の近くを離れないから、近くに寄らなければ問題無いわ」


「という事で……静かに、急いで行動しよう!」


「お前も静かにな……ちなみに、こいつって高く売れるのか?」


「……オススメしないわ」


「そうか」


 素材が高く売れるなら、一匹くらいはと思ったが……安いならわざわざ危険を冒す必要は無いだろう。俺達はプラティパスを無視して、そのまま次の層へと続く階段を見つけて上がっていく。


「また、プラティパスね」


「じゃあ、そのまま進みましょう」


 次の層も同じプラティパスだったので、同じようにして次の層へ。


「ここは?」


 先ほどの2層には川や湖があったのだが、ここにはそれが無く草原が広がっている。


「ここは……」


ブヒッ!


「この声は……」


「ああ……豚か」


「いえ!こいつは……」


 草原の奥から唸り声を上げて、こちらへと歩いてくる群れ。先ほどのモンスター達は四つ足だったのに、こいつらは二足歩行で歩いて、しかも手には武器、体は防具で守られている。


「オークですね」


ブヒィイイイイ!!!!


「なるほど……こいつらの攻撃で獣化するとメス豚になるから……」


「焼くわよ?」


「冗談だ。それと俺、火に耐性があるから燃えないぞ。」


「それより!オークとの戦い方はどうすればいいんですか?」


 俺とココリスのやり取りを遮って、ヴィヨレがオークの対処法について質問をする。


「魔法による攻撃は一切してこないわ。それと武器は棍棒や槍のみ……距離を取って、魔法を撃ち込むこと。間違っても味方に当てないように!」


「はい!」


 ヴィヨレがそう言うと尻尾がピンと立つ。それで、ヴィヨレがしっかり理解した事が皆に分かる。


「じゃあ……行くわよ!」


 先陣を切って、ココリスがオークに目掛けて走っていく。オークも武器を構えて迎え撃とうとする。


「ヴィヨレ!オークの体勢崩すぞ!撃ち抜け!!」


「はい!」


 ヴィヨレが指を前に出して、そこからプリズムレーザを放ってオークを撃ち貫く。俺もウォーターホイルで邪魔なオークを切り裂く。


「くらいなさい!!乱れ突き!!」


 ココリスが連続で突きを放つ。しかも、その攻撃は防具で隠れていない箇所を正確に貫いていく。


ブヒッ!!


「反撃はさせないよ!ウインド・チャージ・カッター!!」


 先ほどから杖の先端に魔力を集中させていたドルチェ。そして杖を前に出すと、十字型のウインド・カッターが複数発射されて、防具を着たオーク達を切り裂いていく。


「これでトドメよ!地雷槍!!」


 ココリスが地面に石突きを強く打ち付けると、その周囲の地面から尖った槍の形をしたオーラともいえる物がオーク達を貫いた。


「……とりあえずは倒したかしら」


「待て……サウンド・サーチ」


 俺は新魔法で周囲にモンスターがいないかを確認する。


「遠くにはいるが……近くにはいないぞ……どうした皆?変な顔して?」


「え?ナビゲーションを使えるの?」


「違う。それとは別の魔法だ……とりあえず、行くぞ。今の戦いを聞いてオーク達が集まってるぞ」


「分かったわ。二人共!」


「は、はい!」


「後で教えてね!!」


「分かってる!この先に2体いるぞ!気を付けろ!」


 俺がサウンド・サーチで周囲を確認をしつつ、さらに前へと進むのであった。

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