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41草

前回のあらすじ「プリズムレーザ習得中……」

―「エポメノの崩壊した塔・4階 踏みならされた平原の道」―


「プリズムレーザ!!」


 ヴィヨレが襲い掛かって来るウルフに、片手を銃の形にして狙いを定め、指の先端から光のレーザを放つ。すると、相手の額に黒い穴が開き、そのまま倒れる。


「出来ました!!」


「凄いわね……!」


「うん……って、ヴィヨレ後ろ!!」


「え?」


 後ろから来ているウルフに気付いてなかったヴィヨレ。攻撃魔法を撃つとヴィヨレに当たりそうなので、ここは防御型魔法を放つか。


「ライズ・ウォーター・ウォール!!」


 ウルフの前に下から上に湧き上がる水の壁が出現して、襲ってきたウルフを上に跳ね上げる。


「今だ!!」


「はい!」


 そこを先ほど覚えたプリズムレーザで冷静に撃ち放つヴィヨレ。今度はそれがウルフの顎へと当たる。コース的にはそのまま脳を撃ち抜いただろう。落ちてきたウルフはそのまま動かなくなった。


「よし。上手く狙い打ったな」


「でも、さっきみたいに喜んで隙をみせたのは反省点です」


「そうだな」


 そう言って周囲を確認するヴィヨレ。俺も見るが敵はもういないようだ。


「終わったわね」


「凄いよヴィヨレ!そんな戦っていないのにそこまで出来るなんて!」


 そう言って、ヴィヨレに抱き付くドルチェ。


「わわ……!」


「おい。抱き付くと、俺が落とされそうになる」


「あ。ごめん……」


 抱き付くのを止めて離れるドルチェ。


「でも……本当に凄い!こんな素早い動きをするウルフにバンバン当てるなんて!」


「ほら落ち着いて……でも、ルチェの言いたいことは分かるけど」


 各々、警戒をしつつ草原の中を再び歩いていく俺達。教えたプリズムレーザをすぐに自分の物にしたヴィヨレ。その狙撃率はかなり高い。


「ありがとうございます。でもウィードの助言で手をこの形にしたお陰でもあるんですけどね」


「俺の世界だと銃を表す手の形なんだ。撃つ!というイメージにはちょうどいいだろう」


「ですね……この形にしたら命中率が格段に上がった気がします」


「そうか……」


 魔法はイメージが大切である。それならこれだけでも大分違う物になると思っていたが……予想通りである。


「でも、これなら何か杖というか武器が欲しいな……」


「今の威力でも十分だけどね」


「でも……無いのとあるのでは違うんだよね……」


 ドルチェが手に持っている杖を持ち上げる。


「威力の補助に体への負担とかが違うから……」


「まあ、そうね……」


「ココリスさんも魔法を使うんですか?」


「ええ。私は土魔法と闇魔法よ」


「闇魔法ですか……視界を奪うには便利ですよね」


「そうね……でも、これってかなり危険な魔法なのよね」


「え?」


「そこのウィードの悪知恵で攻撃魔法が使えるのよ……デメリット効果ありだけどね」


「そうなんですね……でも、デメリットって?」


「それは……アレで試しにやってみようかしら?」


 俺達が歩いていると目の前に二匹ウルフがいて、気付いた二匹がこちらへと走り出す。ココリスはその方向に向けて手をかざし……。


「ソウルドレイン!」


 かざした手から黒い靄が放出され、二匹のウルフに命中。黒い靄からウルフが体を横にして滑り出て来る。


「これって……」


 倒れたまま動かないウルフに近寄るヴィヨレ。


「……死んでる?しかも冷たい!?」


「ああ。この魔法は黒い靄に当たった生物の熱を即座に奪う魔法なんだ……喰らった奴はそのまま凍死って訳だ」


「へえ……凄いですね。でも……デメリットって?」


「ココリスを見てみろ」


「え?……うん!!?」


 ココリスを見たヴィヨレが違和感を感じ、唸り声を上げる。その違和感を確かめるために、ココリスに近づいて……そのスカートからはみ出ているお腹を触る。


「……え?これって」


「私のお腹の脂肪よ?これが闇魔法のデメリットなのよ……だから、気軽に使える魔法じゃないわね」


 少しぽっちゃりしたココリス。そのお腹を優しく触って確かめるヴィヨレ。


「ちょっと……信じられない魔法ですね」


「うん……こんな魔法があるなんて思わないよね」


「まあ、そうだよな……」


「これって戻るんですか?」


「しばらくしたら戻るわよ。だから安心して」


「そうですか……」


 ホッとするヴィヨレ。自分のせいでこの体のままなのかと心配したのだろう。


「でも……奪う事が出来るならこれを相手に押し付けたり出来ないんですかね?」


「「「え?」」」


 ヴィヨレの発言に呆気に取られる俺達。言われてみれば……奪う事が出来るならそれを与える事も出来るのでは無いだろうか……?直後に上の階に上がれる階段を見つけ、階段を昇りながら話を続ける。


「確かに……そうよね」


「……試してみる?」


「うーーん……試してみたいけど……いきなり戦闘で試すのも……」


「なら、私に試しみますか?」


「ヴィヨレに?」


「はい。それに言い出しっぺですし……」


「それって自ら太りたいと言ってるような物に聞こえるぞ……」


「私は後衛ですから、もし太っても大してリスクは無いですから……ちょっと気にはなりますけど」


「今はいいわ。それに試したいこともあるから……その時にね」


「分かりました……あ」


「元に戻ったわね」


 元の姿に戻ったココリス。前よりかなり早い時間で元に戻っている。


「どうやら少なければ元に戻るのも早いようだな」


「そうみたいね。さてと……今日の目標である20階までまだまだあるから気を抜かないように!」


「うん!」


「はい!」


「後ろは俺に任せろ!」


 今一度、気を引き締める俺達。そしてさらに上の階へと上がっていくのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―そこから数時間後「エポメノの崩壊した塔・16階 荒地」―


「ここのモンスターって、階層毎に分かれてるんだな」


 先ほどからさらに上に上がって来た俺達。その間にウルフ、牙を持つウサギ、タイガーと戦ってきた俺達。それら全てを無傷で制してきた。そして1階毎にモンスターの種類は1種類に統一されていた。


「そうよ。何かテリトリーがあるみたいで、各層ごとにキレイに分かれるてるの……でも、それは下層だけの話であって、上層になると各層3,4種類が普通になってくるわ」


 俺達は闘牛のようなモンスターと戦いつつ、会話をしている。


「わ!」


「大丈夫か?」


 牛が口から放つ何かを避けるヴィヨレ。これは……。


「泥団子か?」


「このマッドギューは魔法で口から泥団子を飛ばすの!だから当たらないように気を付けてちょうだい!じゃないと……」


「きゃ!?」


 ココリスが何かを言う前に、ヴィヨレから悲鳴が出る。


「当たったの?」


「いえ……落ちていた泥団子を踏んだだけです!」


「あ!ごめん!それもダメ!」


「え!?」


 ヴィヨレが声を上げると同時に、その体に変化が起きる。


「わわ!!」


 ヴィヨレの頭に牛耳が生える。そして、足が靴を引き破って牛の蹄のような物になっていく。どうやら手は変わらないようで、蹄になって俺を落とす事は無いようだ。


「ん!?」


 そして最後にヴィヨレの体が膨らむ。それは先ほどのココリスのように脂肪で膨らんだのではなく。筋肉によってガタイが良くなったという意味である。


「ええ!!」


「なるほど……泥団子は攻撃魔法ではなく状態変化魔法ってことか……っと、ポイズンマシンガン!!」


 自身の体の変化に戸惑っているヴィヨレに襲い掛かろうとするマッドギューに俺は毒で出来た弾雨を浴びせる。毒を喰らったマッドギューは倒れてその場で痙攣する。


「はあ!!」


 そして、そこをココリスが槍の連続突きで仕留めた。


「大丈夫?」


「は、はい……」


 戸惑っているヴィヨレを心配するドルチェ。ヴィヨレは自身の状態を確かめるために、手に持っている俺をドルチェに預けて、体の確認を始める。


「走るのは……問題なさそうです」


 その場で、変わってしまった見事な大腿筋を持つ牛の足を上げ下げして確認。その後、軽く円を描くように走って確認する。


「走るスピードが速くなってるな」


 そして、今度はその場で上着を捲り上げて、自信のお腹を確認するヴィヨレ。見事なシックスパックを形成している。さらに片腕を上に曲げると、その腕に立派な筋肉の山が出来る。


「惚れ惚れとする筋肉だな……」


 前世で細マッチョに憧れていた俺。今のヴィヨレはまさにそれだ。しかし……。


「何か……嫌ですねこれ……」


 恥ずかしがるヴィヨレ。着ている服をパツパツにさせながらその両手で体を隠してしまう。


「私は好きだけど……ここは人それぞれよね」


「そうしたら薬を使って戻すか……」


「このままの方がいいよ。後、4層だけだし……それに今の方が身体能力が上がってるから」


「そうね。このまま行きましょう……恥ずかしいと思うけど我慢できる?」


「恥ずかしいですけど……大丈夫です!頑張ります!」


「よし!それじゃあ行くわよ!!」


 再び、上を目指す俺達。その後もマッドギューとの連戦が続いたが……。


「凄いです!簡単に避けられる!!」


 マッドギューの泥団子を猛スピードで避けるヴィヨレ。そして、移動したままプリズムレーザを放っていく。


「ついでに俺も……!!」


 高速移動するヴィヨレに合わせてポイズンマシンガンで弾雨を浴びせる俺。お陰でマッドギューを簡単に倒せてしまった。


「凄いですね……この体」


「そうでしょ?そして……私がどうして昨日、あんな特訓をしたか理解したでしょ?」


「はい……お二人でもそうなってしまうんですね」


 ヴィヨレがドルチェとココリスをまじまじと見る。その二人の姿も今のヴィヨレと同様に筋肉質な牛耳の獣人になっている。


「上に上がっていくと、本体は避けられても魔法の攻撃に当たったり、ヴィヨレみたいに魔法を踏んだりして獣化していく事も増えてくから気をつけてちょうだい」


「はい……そういえば、上に行くと3,4種類のモンスターがいるんですよね?もし、複数のモンスターの魔法攻撃を喰らったら……変化はどうなるんですか?」


「ああ……そう言えばそうだよな……まさか、混ざってキメラみたいなことには……」


「1つだけよ。一度なった物だけが進行するの。だから今なら牛の獣化しか進まないわ」


「へえ……」


「さてと、この体ならあっという間に抜けれるわね……でも、牛にはならないように注意よ」


「はい」


「じゃあ先を進もうか!」


 さらに荒地を進んでいく俺達。さらに上を目指して前に進むのであった。

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