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3草

前回のあらすじ「美女エルフ二人が仲間になった!」

―翌朝「カロンの森」―


「それじゃあ、出発しましょう」


「ええ」


(おおーー!!)


 翌朝、俺達はこの森を出ることにした。夜の間、俺はずっと見張りをしていたが……美女エルフの寝顔、ご馳走さまでした!!


(ヤル気全開だぜーー!!)


「それは良かったのですが……根は大丈夫ですか?」


(問題無いって!それより外に出るの楽しみだな~~♪)


 地に根付いていた俺は、出発前に掘ってもらって小さな布袋に入れてもらい、今はドルチェのベルトに括り付けられている。ちなみに地面から掘り出される前に多少、根を切られたのだが……痛みも無く。ステータス画面を確認したが、命に関わるあのHPに特に変化が無かった。それだから問題は無いだろう。


「それじゃあ、私が前衛。二人は後衛をお願いね」


 ココリスがそう言って、両手にナイフを構える。


「うん……慣れていない杖だからちょっとだけ試させてね」


(いつでもオッケーだぜ!回復必要なら言ってくれよ!)


「草なのに頼もしいわね」


「そうだね。ポーションとかも無くしたから回復要員がいるのは大助かりだよ」


(それと必要なら収納があるから言ってくれよ。ギルドで売れるんだろ?)


「……本当に頼もしいわ」


「ふふ♪それじゃあしゅっぱーーつ!」


 ドルチェの掛け声を聞いた所で、俺達は出発するのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―数時間後―


「はああーー!!」


 ココリスがナイフで可愛らしいオオカミの首をすり抜けざまに切り裂いた。


「ウインドバースト!」


 ドルチェが別の可愛らしいオオカミ達を吹き飛ばす。


(トドメだ!ポイズンショット!!)


 俺はその吹き飛ばされて怯んでいるオオカミ達に毒を浴びせる。毒を喰らったオオカミ達はその場でしばらく悶えた後、その動きを止めた。


「ありがとう草さん!」


(どういたしまして!)


「ふ~~……どうやら倒せたようね」


 するとココリスに水を頼まれたので、俺は水を出す。ココリスはそれを使ってナイフを洗浄する。


「うん。それとこの杖でも何とかやれそう」


 そう言ってココリスは杖を軽く振っている。出発してから度々モンスターが現れて倒していたが、二人はある程度の余裕を持って戦闘をしている。素人である自分の目からしても只者では無い。そんな事を思いつつ、俺は倒したオオカミ達を回収していく。


(強いな二人共……ここってかなり危険な森なんだよな?)


「ええ。でも、あなたと私達なら問題無いわよ」


「私達二人共Bクラス冒険者なんです」


(なるほどな!ってそれじゃあ何であんなにピンチだったんだよ?)


「ああ……実は護衛任務である薬師のグループの護衛をしてたんだけど、その際にあいつら……ボルトロス神聖国の奴らが襲い掛かって来たのよ」


(何か違反をしたのか?)


「いいえ。この森にのみ生息する薬草の採取をしていただけよ。それを奴らが横取りしようとしたのよ」


(何だよそれ?強盗じゃん!盗賊じゃん!)


「それをあっちの国が認めてるんだから、余計にタチが悪いわよ」


(何で認めるんだよ)


「人族以外は人には非ず、それ以外は穢れし存在である。っていうのがあの国の教え、方針らしいんです。逆にここ。ホルツ王国はあらゆる種族に人権が認められているので、あちらの国としては良く無い目で見てくるんです」


(他の国はどう思ってるんだよ?そんな危険な国を?)


「基本、無視よ。奴ら何故か強いのよね。それに仮に滅ぼしても統治するのが大変だし……」


(なるほど)


「戦闘になったらすぐさま逃げるのが一番なんだけど、商隊を逃がすために殿を務めていたんだけど、私がへまをしちゃってね」


「それを私が肩を貸して森の中を逃げて……そこを草さんに助けられたってわけだね」


(なるほど……あれ?他の追手は?俺が昨晩ずっと見張ってたけど来なかったぞ?)


「私が風魔法を使って逃げ続けてたの。どうやらこの杖の持ち主であるあの男以外は撒けたみたい」


 そう言って、その男が使ってた杖を見るドルチェ。その顔はかなり不満そうだ。


「ルチェ。どう杖は使えそう?」


「うん。問題無い……けど、相性はあまり良くないかな」


「町に戻ったら、新しい杖を買いましょう。私も新しい槍を手に入れないと」


(ココリスのメインは槍か……それで二人のメイン武器は?)


「「壊された(ちゃった)」」


(そうか……でも、慣れない武器でここのモンスターを倒せるなんて本当に強いんだな!)


「まあね。でも、あなたも強いんだからね?ここのモンスター相手に魔法で圧倒してるくらいだし」


(そう言われると照れるぜ!)


「ふふ……あ。見て」


 ドルチェが指を差す方向に道が見える。


「道に出れた!」


「良かった……!?」


 突如、草むらから鎧を着た男が剣を持って襲い掛かって来た。


「ウインドブレード!」


「くっ!」


 ドルチェの魔法を、男は素早く後ろに下がり攻撃を避ける。避けた男が手を挙げると他の鎧を着た奴らが現れる。いち…に……5人か。


「隊長はどうした?」


「さあ?知らないわ」


「とぼけるな!」


「とぼける? とぼけてるのはどっち? ここはホルツ王国よ! あなた達が人を勝手に襲う理由も権利も無いのよ!」


「ふん! そんなの関係ない! デレルシア神に楯突く者の意見など関係ない!!」


 いや。あるでしょ!何こいつら!?頭に草が生えてるんじゃないか!?というより全身草である俺よりバカだろうお前ら!?


「うん?その杖!隊長のですよ!」


「何!?キサマら!!」


「逆恨み?仕掛けて来たのはそっちでしょ?」


「うるさ……!」


(ポイズンキャノン!)


 うるさいので喋ってる男にこいつらの隊長が喰らった物と同じ毒を浴びせる。


「なっ!?」


「ひっ!!か、体が……!!」


(……やり過ぎた。まさか上半身が消失するなんて)


(やり過ぎよ……)


(どちらにしても戦闘は免れないみたいだけど……)


 念話で会話をしていると、別の男が指示を出してこちらへと攻撃を仕掛けようとする。


「マッドプール!」


 ココリスが魔法を唱えると、目の前の土がドロドロの液体状のぬかるみになって男共がそこにハマる。


(燃えろ!ファイヤショット!)


「フォローウインド!」


 俺が炎で敵に攻撃すると、そこにドルチェが風魔法で追撃……と思いきや、相手に当たって燃え続ける炎が風の魔法の援護を受けて、さらに威力を増す。その炎に巻き込まれた男共はそのまま焼死してしまった。


「もう一度……マッドプール!」


 ココリスがもう一度唱えると、ぬかるみは焼死体を飲み込んで元の地面に戻ってしまった。


「これで気付かれないかな」


「そうだね」


 二人が普通に話をしているが……これ完全殺人じゃん!いや、俺、さりげなく殺人してるじゃん!俺の心大丈夫なのか?


アビリティ

精神耐性Lv3


 ……大丈夫か~~い!?いや、都合良すぎませんか!!いや、これってブラック企業に勤めていた俺個人の元の能力なのかーー!!??


「どうしたの?」


(いや……何でも)


「それじゃあ道に出ましょうか」


(うん)


 思っていた事を俺は口に出さず、カロンの森を横断する唯一の道へ俺達は出てくる。


「……どっちかしら」


 ココリスが左右を見るが……これといった特徴が無い森林と舗装されていない道。太陽は……ここからだと鬱蒼とした木々に隠れて見えない。


「チョット待ってね……ナビゲーション!」


 すると、ドルチェから突風が巻き起こり周囲へと吹き渡る。


「……右だね。それとモンスターとかは今の所いないみたい」


「分かったわ。それと草さん。しばらくは戦闘を任せられるかしら?」


(いいけど。さっきの魔法ってそんなにMPを消耗するのか?)


「私の特殊アビリティでナビゲーションっていう魔法なんだ。効果は私を中心に地形や生物の情報を広範囲で得られるって能力なんだ。ダンジョンだと宝箱とかも見つけられるんだ」


(すげぇーー!!)


「ただ、デメリットでしばらくの間、魔法が使えなくなるんだ」


(え?しばらく?どれくらいなの?)


「えーと。少し歩いていれば治るぐらい……」


(時計とか無いの?)


 俺が訊くと二人が首を横に振る。というより何それ?と訊かれてしまった。この世界には時計という物が存在しないのか……。


アビリティ

体内時計MAX


 いやいや!本当に都合イイな!


(俺、正確な時間を測れるから試しにどれくらいかかるか測ってやるよ)


「え?うん……お願いします」


「時間が正確に分かるって……本当に草なの?」


(草だよ……多分……こうやって会話できる時点で草といえるのか俺にも自信なくなってきた)


「難儀ね……」


 道沿いに出た俺達は町の方へと歩いていく。それからしばらくすると。


「よし!もう大丈夫!」


 ドルチェが指先から風を起こしていた。


(10分か……結構、痛いな)


 これが追われている最中ならかなりのディレイタイムだろう。よく、これを使いながら彼女を引きずりつつ逃げれたもんだ。


「その……じゅっぷんって何なの?」


(時間の呼び名みたいなものだけど……)


「それにしても色々知り過ぎでしょ?それもあなたの能力なの?さっきの話の中で出たBクラスって単語の意味も分かっているみたいだったし」


(みたいなものだな……正確な事は……良く分からない)


「分からない?」


(うん……そもそも何で草が喋れるのか自体が意味不明だしな)


 そう。と言ってココリスさんが前を見直す。疑いますよねーー……俺だって疑うもん。かといって転生者とかこの世界だとどれくらいの認知度なんだろう?そもそもいないかもしれないしな……。全て喋るのも危険だろうし……。


「二人共!モンスター!」


「りょーかい!」


(まかせておけ!)


 そこに都合よくモンスター……可愛らしいゴブリンと戦う事になって、この件をうやむやにすることが出来たのだった。

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