表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/209

36草

前回のあらすじ「少女が仲間に加わった!」

―バリスリーを出発してから4日後のお昼「ニビ村・トウモロコシ畑」―


「着いたわね」


「うん……この、たくさんのトウモロコシは特徴的だよね」


 ニビ村に到着した俺達。それを歓迎するかのように一面のトウモロコシ畑が出迎えてくれた。遠くには高い塔のような物も見えて来た。


「凄いな……これって、ちょうど収穫時期に来たのか?」


「このトウモロコシは通年で採れるわよ?」


「……通年?いつでも採れる?」


「そうだけど……トウモロコシの事を知ってたから、通年して採れるのを知ってると思ってたんだけど……」


「そんなトウモロコシは俺は知らん……」


 子供の頃、俺の爺ちゃんが趣味で畑をやっていて、その際にトウモロコシは6~9月頃が収穫時期だ。って教えてくれたのだが……さすが、ファンタジーの世界である。


「それで、今日は宿で一泊して明日からダンジョン攻略かな?」


「いえ。準備で一日、それだから明後日よ……ヴィヨレの事でやらないといけないこともあるしね」


「すいません……迷惑をかけてしまって……」


「いいわよ。それに、あなたは依頼主なのだから。そんなに畏まらなくていいわよ」


「……はい!」


 そんな話をしながら、ストラティオに乗っていくと、農村地帯に入る。建物は大きくなく基本的には平屋建て。店もあるのだがそこまで規模は大きくなさそうだ。


「何かダンジョンがあるのに冒険者用の建物とかが無いな」


「それはそうよ。ここはあくまでこの村に住む人達専用だもの。この周辺は静かにのどかな雰囲気が壊れないように村長が整備してるの」


「そうなのか?いや……そもそも何で町になってないんだ?ダンジョンって宝の宝庫……つまり、それを目当てに人々が住みそうなのに……」


「ふふ!ウィードの言う通りだね……それはダンジョンに行けば分かるよ」


「ダンジョンに?」


「そうそう……だからヴィヨレも言っちゃダメだよ?」


「はい!」


 ヴィヨレにも口止めするなんて、それほど俺が驚く内容なのだろうか……?


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから30分程「エポメノの崩壊した塔・1階 ???」―


「なるほどな……これは驚いた」


「でしょでしょ!このダンジョンの一回全てが街になってるの!」


 エポメノのダンジョンの入り口に着くと、その近くにストラティオ乗り場があって、そこでここまで乗せて来てくれたストラティオ達と別れた……別れる前に頭の毛……いや草をまた噛まれるとは思っていなかったが。おかげで、せっかく元通りになった草の先端にストラティオの歯形が付いてしまった。


 そして、今、ダンジョンの入り口付近にやって来たのだが、先ほどの田園風景と打って変わって、今度は建物だらけであり、ダンジョン内部なので高さも似通ったようなものになっている。


「私も始めて、ここにやってきたのですが……」


トン……


「おい!ボケっとするなよ!」


「え。す、すいません」


「ったく……」


 物珍しそうに周囲を見渡していたヴィヨレが歩いてきた男にぶつかってしまった……いや、ワザとだったなあれ……ってことは。


「あなた。この子から盗んだ物を返してもらえるか……」


「ちぃ!」


 男はココリスが言い切る前に走り出す。まあ、セオリー通りだな。


「えい!」


 俺は毒を逃げる男の背中に当てる。その瞬間、男が足がもつれてその場に倒れ込む。


「何の毒を撃ったの?」


「ただの麻痺を引き起こす毒だ。まあ……感覚も数倍になるオマケ付きだがな」


「感覚も数倍?」


「娼館で売り込む薬作成の際に出来た新薬なんだが……」


 俺達が倒れた男に近づくと、体を、特に背中をビクンビクンと激しく痙攣させている。


「痺れた足を触ると、体がビクンとなるだろう?あれが全身で、ちょっとした刺激で引き起こすってもので……本当は媚薬を作る為だったんだが……」


「何してるのよ!!」


「おお。成長してるな!前はこんな事を話してるだけで頭から湯気を出して倒れてたのに!」


「話を逸らさない!」


「まあまあ……あ、衛兵さん!こっちです!」


 衛兵達が暴れる男を捕えて連行する。衛兵の一人が俺達に簡単な聴取してから、盗まれた物を返してくれた。


「あの男のように、始めて来た旅人をカモにする奴がいますのでご注意下さい!それでは!」


 衛兵が去っていく。すると、ココリスが振り返って歩き出すので、俺達もその後ろに続く。


「……という訳で、少々治安が悪いから気を付けてね?裏通りは特に酷いからヴィヨレは一人で行動しないようにね」


「わ、分かりました……」


「で、これからどこへ向かうんだ?」


「まずは宿を決めて……それから冒険者ギルドね」


「今日はそれだけで終わりだね」


「治安が悪い……宿は金に糸目を付けない感じか?」


「もちろんよ」


 この後、大通り沿いに構える宿に宿泊することに決めてから、今度は冒険者ギルドへと向かう俺達だったのだが、凄く気になる事がある。


「なあ……ドルチェ?」


「どうしたのウィード?」


 俺は前で話している、ヴィヨレとココリスに聞こえないくらいの小さな声で、ドルチェに宿にいた時から……いや、ここに来た時から気になっていたことを訊く。


「何かここ……獣人やら動物やら多くないか?」

 

 町中をあるいていると、耳と尻尾を生やした獣人、それと犬や猫、それ以外の動物が歩いている。動物の中には衣服を着飾った者もいたりする。


「それに……さっき2匹の犬が娼館らしき建物に仲良く入っていったんだが……」


「あはは……それはきっと、その二人は犬になっちゃたんだろうね……」


「……ここのダンジョンって」


「うん。ここのダンジョン……状態異常で獣化ってのがあるんだ……」


「ああ……じゃあ、あの犬2匹は……」


「言葉通りに、獣のように求めるんだと思うよ……そんな趣味がある方々がここに良く来たりするらしいから……」


 ああ。ここが変態ダンジョンの一つですか……なるほど。この村がどうして農村とダンジョン街を分けてるのかが分かった気がする。そうしないと、それが田畑を荒らす害獣かどうかが区別できないから、それと……獣だからって外でやられたら困るもんな……。


「ところで……俺達も獣化するのか?」


「数をこなせば必ずなるよ。それで獣化したらその姿でしばらく過ごさないといけないから、ああやってして解けるのを待ってるんだと思うよ」


「治せないのか?」


「1つは獣化解除薬。ただ獣化は長くても二日で解けるから急ぎじゃ無ければそのまま過ごす人もいるかな。ちなみにステータス画面を見ると、獣化の欄の横に数値が表示されるからそれでどの位か分かるの」


「なるほど……うっかり大通りで素っ裸を晒さなくて済むということか」


「そういうこと。それと……他には魔法で解除してもらう方法。ヒーラーと言われる人々に解除してもらうかな」


「おお!いるんじゃん!光魔法の使い手が!!」


「回復魔法って分類なんだけどね……ただ、毒魔法と同じように使い手が少ないから中々会えないし、どんな魔法があるのか知らないんだよね……」


「へえ……」


 回復魔法か……まあ、俺の場合は薬を作れるから別に問題無いのだが……でも、あったら便利だよな……。


 そんな事を思いつつ、都合よく回復魔法を覚えられないかと思ったが……何のアナウンスも無いのでダメみたいだった。この後、冒険者ギルドに着いた俺達は、盗賊の件を報告、そしてギリムからここのギルドマスターへのお手紙を渡して、後はヴィヨレの依頼の件にここのダンジョンに入る許可を……。


「失礼……そこにいるヴィヨレさんと話をしたいという人がいるのだけどいいかしら?」


 奥の部屋から現れる優しそうな初老の女性。


「え?私ですか?」


「ええ。あなたのお父様……オプトさんとランデル侯爵からよ」


「ランデル侯爵?」


「そうよ。そういえば、あなた達はランデル侯爵と知り合いなのよね……チョット待っててもらっていいかしら」


 初老の女性はそう言って、もう一度、奥の部屋へと入っていった。俺達がランデル侯爵と知り合いだと分かるということは、ギリムのあの手紙を読んだ人だけ……つまり、あの女性がギルドマスターってことか。


「あなた達も入って来て頂戴。その間に部下にダンジョンの許可証を作ってもらうから」


 そのままギルドマスターの案内で、奥の部屋へと入っていく俺達。中には台座と水晶があり、その水晶から上に二人の男性が映し出されていた。


「はははは!まさか、お前さんたちが嬢ちゃんを護衛していたとはな!!お前の嬢ちゃんは運がいいみたいだな!!」


「笑い事じゃないですから……しかし、娘が無事で良かった……」


 俺達を見て大笑いするランデル侯爵。そしてその隣にいて、ホッと肩を下ろした男性がヴィヨレの父親という所だろう。


「ご、ごめんなさいお父様!でも……」


「分かってる。お前がマリーのために薬となる薬草を手に入れるためにそこへ来たのだろう?でも、それで母さんが心配したんだぞ……私のせいで、ってな」


「ごめんなさい……」


 誰に使うかはヴィヨレから訊いていなかったのだが……皆が何となく察していたので、そこは訊かなかったが……母親だったか。


「けど……既にそこにいるのなら、止める理由も無いか……」


「お父様……」


「さてと……そろそろ、私達に詳細を教えてもらっていいかしら?」


「そうだな……その事でお前さん達に依頼をしたい」


「その前に、この子から既に依頼を受けてるわよ」


「なら、早い!安心しろ!無事に達成したら儂からしっかり出すからな!」


「それじゃあ、皆さんにお話しいたしますね……」


 そして、ヴィヨレの父親であるオルトとランデル侯爵から事の詳細を聞く事になるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ