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2草

前回のあらすじ「いきなりドラゴン討伐」


*9/6:誤字修正しました(有料物件→優良物件)

―「???の森」―


「しっかりしてココリス!」


 ピンクのボブヘア女性が声をかけるが反応が無い。ああ……大分、出血してるな。いや。そっちのお嬢さんも大分ケガを。


「あっ!」


 そのピンクのボブヘアの女の子に太い氷の槍が刺さる。そのせいで彼女はその場に倒れ込み。抱えていた茶髪ポニーテルの女性も地面に倒れてしまった。あ、この子達耳が長い……まさかエルフ!


「へへへ……♪逃げるなよ嬢ちゃん達?」


 立派な鎧を着ているが、顔は下品な杖を持った男がやってくる。こいつがやったのか?すると、そいつはピンクのボブヘアの女の子のケガした足を踏み始める。


「あ!いっつ……!」


「いいね~。エルフをいたぶるなんて久しぶりだな~」


「ここがどこか知ってるの!?ホルツ王国!あなたたちの国じゃない……!」


「うるせぇ!穢わらしい種族が!!」


 そう言って、彼女の顔を蹴る。どうやら違反をしているのはこの男のようだ。それにエルフを穢わらしい?なんてことを言うんだ!性格は分からないが、この二人の容姿……アイドルグループに入ったら確実に上位に入るだろう!!それを……!!


「くっ……」


「あらあら!涙を流して!!いくら泣いても助けなんてこの森に!!」


(ポイズンキャノン!!)


 奴の体に目掛けて大量の毒液を飛ばす。


「ぎゃあああーーーー!!!」


 いきなりの襲撃に避ける事の出来ない男はその場でのたうち回り、そして皮膚がドロドロになった状態になった所で動かなくなった。


「え……?いや……!!」


 あ、やり過ぎた。女の子に見せるような死体では無い。足を動かせない彼女は急いで氷の槍を抜き、周囲をせわしなく確認し始める。


「あ……!」


 彼女と目が合う。え?もしかして気付いた?


「い、いや……」


 こっちを見て怯えている。どうやら分かるようだ。足のケガで動けないせいで、逃げられないと悟った彼女の顔を青くなっている……うむ。ここは。


(えい!)


 俺は彼女に回復薬……ポーションを浴びせる。


「きゃ!や、やだ……え?」


 男とは違って、自分のケガが治っていくことに驚いている彼女。俺の行為に呆気に取られているようだ。


「ど、どうして……?」


(どうしてと言われても……喋れないしな……うん?)


 もしかしてアレ使えるか?俺はログを開いてみる。彼女の目線を見るとログ画面の方を向いていたのでどうやら見えるようだ。俺はその下に書き込む。


『お怪我はどうですか?』


「え?は、はい……いたく……ないです…はい」


『それは良かった。そちらの女性も必要かな?』


「あ!は、はい!お願いします!」


『はいよ』


 俺は今度は茶髪の女の子にポーションを浴びせる。ピンク色のボブヘアの女の子が様子を確認すると、その表情が緩んだので問題無いだろう。


『ここで少し休むといい。俺、草だけど強いしな』


「そ、そのようですね……」


 彼女の目線があちらに……。


『ゴメン。あれ片づけるわ』


 俺は収納を発動させて、ドロドロ死体をしまい込む。


「え?消えた!?」


『収納した』


「収納?草なのにそんなスキルを!?」


『珍しいのか?』


「え、ええ。とてもレアなスキルよ」


『あ~……やっぱり』


「やっぱり?」


『これ、この前、飛んできたドラゴンをやっつけたら手に入れたんだ』


「ドラゴン!?この付近で確認されているドラゴンって……まさかイグニス・ドラゴン!?」


『ああ。多分そうだと思う。イグニスを覚えたし』


「イグニス!す、凄いです!そんな呪文を……」


 イグニスについて知ってるのか?発動させても何も起こらないから分からないんだよな……。


『それでドラゴンなんだけど何か知ってるのか?俺、草だから何も分からないままなんだよな』


「そうなんですか……」


『なあ。色々教えてくれないか?ここはどこで……それと二人を襲った男が何者なのかも』


「ええ。命の恩人じゃなくて恩草(おんくさ)?ですし、私の分かる範囲なら」


『じゃあ、頼むよ……えーと。お名前は?』


「申し遅れました」


 彼女が立ち上がり、スカートの裾を軽く持ち上げて挨拶をする。カーテシーをするってことは令嬢なのかな?それともこの世界だと常識?


「私の名前はドルチェです」


『ドルチェか……よろしくな!』


 何か甘そうな名前だな。スイーツ……食べたくなってきたな。草だから食えないけど。


「はい!それで……」


『あ。俺は草でいいよ』


「分かりました。草さん」


 こうして、俺は初めてこちらの原住民と触れ合う事が出来たのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―それから数時間後「カロンの森」―


『なるほど……ここって大分危険な森だったのね。うわ~笑えねえ(失)』


 ここはホルツ王国内にあるカロンの森で、先ほどの男の国であるボルトロス神聖国と接している場所らしい。そしてここのモンスターはどいつもこいつも凶悪なようで俺が倒したウサギさんもオオカミさんも冒険者グループがしっかりとした装備と作戦を立ててから戦うようなモンスターだったらしい。


「ええ。だから草さんも危険なモンスターだと思って」


『いやいや。その気持ちは分かる。いきなり襲ってきた男を溶かすような毒液を飛ばす奴を危険視しないのおかしいでしょ』


「そうですね……」


 ドルチェがおもむろに空を見上げる。すでに夕暮れ。森がどんどん暗くなっていく。


『そっちの女性。起きる気配無さそうだね……ねえ。木々を集めてくれない?焚火の準備した方がいいぞ?』


「は、はい」


 ドルチェが周囲にある枯木を集めて来て、俺が魔法で着火する。


『これでチョットは安全かな?消えそうなら俺が炎を出し続けるから安心しろよ?』


「ありがとうございます……すごいですね」


『まあ……これもドラゴンからの恩恵だけどな。そういえば魔法使えないの?』


「私、風魔法と光魔法は使えるのですが、それ以外は適性なくて。彼女は土属性と闇属性の魔法を」


『もしかして、野宿用の道具をどこかに置いて来ちゃった?』


「逃げるために……」


『ご飯とか大丈夫か?』


「このポシェットに携帯食があるので」


 そう言って、某メーカーが出しているような固形物のクッキーを出す。


『水いるか?コップになる物があれば入れるぞ?』


「えーと……」


「うっ!」


「ココリス!」


 呼ばれたことに反応したのか、先ほどから地面に寝かされていた女性が目を開いたとほぼ同時に体を起こす。


「ここは……ってルチェ無事なの!?え?私も?」


「良かったーー!!」


ドルチェがココリスに強く抱き付き、喜びを表現する。


「あの男は?それにここは?」


「ここはカロンの森の中よ。それとアイツは死んだわ」


「そう……あいつかなりヤバイ魔法使いだったけどどうやって倒したの?」


「私じゃないの」


「え?それじゃあ誰が?」


「そちらの……」


「……何も。え?」


『あ。お目覚めですか?』


「草!?」


「はい……」


『それより、暗くなってきて危険だから、今日はここにいろよ?俺が魔法で何とかするからさ』


「魔法って!?」


『あ。そうだ。これって食える?』


 俺は時々、現れていてその都度、狩っていたウサギを2羽を収納から取り出す。


「え?どこから?」


「収納持ちだそうです」


「え?……え?」


 ココリスさんが俺とドルチェへと首をせわしなく動かしている。驚きのあまり信じられないようだ。


『それで……』


「あ、はい。解体出来ますので」


『水が必要なら言ってね。出すから。それと獣が寄り付かないように臓器とか血は収納で仕舞えると思うから任せてくれ』


「ありがとうございます!ココリスは寝ていてね」


「え?う、うん~?」


『まあ、話しながら夕食を待ちなよ』


「そうね……って言えるかーー!!」


 おお!ツッコミ!久しぶり過ぎて泣けるぜ!!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―夕食後―


「ふう~……助かったわ」


「そうだね。ありがとう草さん」


『いえいえ。どういたしまして』


 二人の食事が終わるまで、俺は焚火の火を見張っていた。


「し、信じられないわ草が喋るなんて……」


『正確にはこのメッセージウィンドを開いての会話だけどね』


「チョット待って……」


 すると、彼女が目を瞑って、何かを口ずさんでいる。


(どう?聞こえるかしら?)


(おお!聞こえる!これも魔法なのか?)


「念話よ。声を出すとモンスターとかに気付かれるからこれで意思疎通するの」


(便利だな……覚えられないかな?)


 俺はおもむろにステータス画面を開く。


通常スキル

念話MAX


……覚えました~~!!やったね!


(よし!覚えた!!)


「え?覚えたんですか?」


「嘘でしょ!?」


(いやいや。ほら出来てるよね?)


 二人が驚いた表情で互いに見合っている。


「す、すごい草ね。魔法使いなら優秀だわ……草だけど」


「そうだね……草だけど」


(そういえば何で二人は俺に気付いたんだ?見れば分かるのか?)


「それは看破ってスキルなの……隠れた相手を見つけたり、ダンジョンの罠とかを見つけたり出来るのよ」


(聞くけど……どう見えてるの俺?)


「種族名は草(w)。危険度は星5の一番危険扱いよ」


(ドラゴン倒したからか……)


「そうでしょうね……それでドラゴンは既にあなたが戦う前から大怪我してたのよね?」


(ああ。間違いないぞ。死体をアイテムボックスに入れてるから取り出せるけど)


「ここで出されても……」


「そうね。でも、ギルドに報告しないとマズいわね」


 二人が悩み始める。まあ、何かヤバそうなドラゴンだし……色々問題があるんだろうな……あれ?これはもしかしてチャンスか?


(なあなあ)


「何?」


(それなら俺を連れていってくれないか?)


「「え!?」」


(ここでジッとしていてもつまらないんだよ!それなら誰かに持っていって欲しいんだ)


「何で私達に?」


(このチャンスを逃したら二度と無い気がする……!)


「ま、まあそうかもしれないね。ここ本来ならすぐにでも移動しないといけないし……」


(それと今なら火属性に水属性の魔法に収納。さらに収納の中にはイグニス・ドラゴンの死骸と大量の手作りポーション付き!こんな優良物件はなかなかお目にかかることが無いぜぇ!さあ、買った買った!!)


「何で売りたたく商人風の話し方なのよ?」


 この世界にもそんな商人いらっしゃいましたか……いや。そんなことより!


(お願いします!ここで一草って辛いんです!もう限界なんです!!)


「いいよ」


「ルチェ!?」


「だって悪い気がしないもの。それに私達のパーティに入ってくれたら大助かりじゃない?」


「それは……そうだけど。草ってパーティに組めるの?そもそも従魔扱い?それとも道具扱い?」


(ダメか……?)


「……いいわ。ここから出るにも今の私達じゃ辛いもの。ここはあなたを信じるわ」


(ありがとーーう!!頑張るよ俺!)


「それじゃあよろしくね」


(おう!)


 こうして俺は長らく住んでいたこの地から離れる機会を得ることに成功したのだった。

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