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28草

前回のあらすじ「ココリスの服が弾ける!」

―夜「城壁都市バリスリー・花の宿プリムラ 食堂」―


「美味しーーい!!」


「ええ。頑張った甲斐があったわね」


 二人が美味しそうなクラリルをふんだんに使った料理を堪能する。


「お前さんたちのおかげで領主様に渡した以外にも、色んな知り合いに渡せたからな。今頃、街中クラリル祭り状態だと思うぞ」


 クラリルは足が早いために、食べるならすぐに食べきらないといけない。一応、俺のアイテムボックスなら長期保存できるのだが、それをやるとクラリルの長期保存が出来るという変な噂が流れかねないので、全て美味しく頂いて処理することになった。ちなみに、食べられない俺はいつもよりいい肥料が贈られた。何か調子が良くなった気がする。


「私もこんなにクラリルを頂くのは初めてかしら~!美味しいわ~!」


 そう言って、タルタルソースが掛かったアツアツのクラリルのフライを食べるリリーさん。今日は夫婦そろって、仕事をしつつ宿のお客さん達と一緒に食事……というより飲み会をしている。客もあまり二人の邪魔にならないように、セルフで酒を注いだり、配膳を手伝ったりして、今日の食堂はどこか人情味があふれる居酒屋を彷彿させる。


「まさか、クラリルの料理をこんなに食べられるなんて!取って来てくれたドルチェちゃんとココリスにかんぱーーい!!」


「「「「かんぱーーい!!」」」」


 一人の上機嫌な女性客がジョッキを掲げて二人にお礼を言うと、他の食堂の客も同じようにお礼を言う。


「どういたしましてーー!」


 お酒が入って他の客と同じように上機嫌なドルチェが、お礼に対して挨拶をする。そしてそのまま、近くにいた他の客達とお喋りを始めてしまった。


「今日は本当にお祭りね」


 そんな相方を眺めつつ、クールにお酒を嗜むココリス。ドルチェのように楽しく飲むのも嫌いじゃないが、ココリスのように美人が静かに飲む姿も、俺にとっては眼福である。


(だな……しかし、これって宿屋を営んでいる二人に取って大赤字じゃないのか?)


「そこは多分、大丈夫よ?商業ギルドにも卸して、儲けを出してるだろうし……領主様からも貰ってるんじゃないかしら」


(ちゃんと考えてるんだな……)


「それと、今回の私達の報酬だけど、1ヶ月分の宿代を無料にするって」


(それって報酬として見合ってるのか?)


「本来なら釣り合っていないんだけど、今回は空を飛ぶっていう最短ルートで行って、野宿もしないで帰って来たからそんなに出費していないし、それに依頼人本人が釣ったクラリルの処理をしてくれてるもの、こんな所でしょ?」


(まあ……それもそうか)


 ココリスの話を聞いて納得する俺。確かに依頼人本人がクラリルの捕獲を手伝ってるのだ。それによる負担軽減を考えれば当然ともいえる。


「ほら~♪ココリスも飲もうよ~♪」


 すると、先ほどからお喋りをしていたドルチェがこちらに戻って来た。どうやら大分、酔っ払ってきたみたいで、ココリスに抱き付き、お酒の入ったコップを持っている手とは逆の手でココリスの胸を揉んでいる。むにむにと形を変える胸を真正面から眺められるなんて……今の俺に鼻があったなら鼻血を出していたかもしれない。


「ほら。止めなさいって……」


 ココリスは優しく、ドルチェのその手を引き剥がし、席に着席させる。


「それで二人は何の話をしていたの~?」


「うん?今回の報酬の話よ。しばらくは宿代は気にしないで大丈夫そうよ」


「そうなんだ~♪」


 そう返事してお酒を飲む陽気なドルチェ。今夜はきっといい夢を見れるだろうな……。


「それで……」


(うん?)


「今日の闇魔法はどうだった?」


(あれか……デメリットを除けば強すぎないか?)


 今日、ココリスが使用した闇魔法ソウルドレイン。対象の熱を奪い凍死させる魔法……だと思う。一応、クラリルがかなり冷たくなっていたからそう判断した。そして、デメリットは……奪った熱が術を掛けた本人に脂肪みたいな物になって一定時間動きを阻害するという所だろうか。


(ココリスがあんな体になったのは、中型サイズのモンスターであるクラリルに使用したから、しかも5匹を一気にやったから……)


「水を凍らせた時は、少量だったからかしら……しかも、そもそも冷たいものだから対して奪えてなかったでしょうし」


(だろうな……。しかし、一発放っただけで中型のモンスター5匹を倒せるのはおいしいよな……)


「デメリットに目を瞑れば……ね」


 そう言って、クイッとお酒を一気に飲むココリス。デメリットで1時間程あの体を体験したのを忘れようとしてるのだろう。


(だけど、これで闇魔法の特徴が分かったぞ……闇魔法はあの黒い靄を使って、何かしらを奪うという魔法みたいだな。ブラインドはただ、相手に黒い靄を纏わりつかせるだけだからデメリットとか無い感じかな)


「奪う……他に何を奪えるかしら?」


(ゲームで言うなら……)


 闇……というより呪いみたいな考え方なら……。


(若さを奪って老人にしたり、逆に老いを奪って子供にしたり……相手の容姿を奪って、醜い姿にしたり……)


「……それデメリットがヤバくないかしら?」


(……多分ヤバい)


 闇魔法が発展しなかったのはそれが原因だろう。もしかしたら、奪う事に気付いて使用したもののデメリットで自滅したのかもしれない。もしくは……今日のココリスみたいに恥ずかしい姿になってしまって、言いたくないというのもあるかもしれない。


「とりあえず、デメリットが少なそうなもので試すのもアリかしら?」


(今後、闇魔法を使用していくならな。別に土魔法と槍でもやっていけそうな気がするけど?)


「一応、今は手数を増やしたいっていうのと、闇魔法はデメリットがあるけど少ない魔力で威力が高い魔法を使えるのなら、ここぞという時の為に覚えていて損はないかしら」


(なるほど……まあ、俺も何か案があればその都度出すよ)


「ありがとう」


 流石に歳を奪うとかはマズそうだから、それ以外で何かいい案が無いかを出すとしよう。


「ねえ~~!私は!?」


 すると、静かに聞いていたドルチェが俺の体である草を掴んで上向きに引っ張る。


(あ、止めて!おじさんの大切な残り少ない頭皮の毛が……!!)


「髪の毛じゃないでしょそれ~~?」


「むしろ、もっと大切な胴体な気もするんだけど?」


(頭皮を気にするおじさんにとって髪は重大事項なんだ!!)


「おじさんじゃにゃいでしょ~~www」


 酔っ払っているドルチェ。料理をしっかり食べているが、それよりもお酒の量が多い。


「ほどほどにしないと、この前みたいに頭が痛くなるわよ?」


「だいじょう~~ぶ!ちゃんと二日酔い改善薬を飲んでるから~~!」


「全く……」


(まあ、あの薬を飲んでいるなら問題無いだろう)


 今、ここで話してもどうせ覚えてなさそうなので、俺とココリスは上手く話を逸らし、食事を終えた後はドルチェをベットに横にしてすぐに就寝させるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―翌日「城壁都市バリスリー・花の宿プリムラ 食堂」―


「うう……頭が痛い……」


「効いてないわよ?」


(効いてないですね……)


 俺の作った二日酔い改善薬を飲んでいるはずなんだが……どうも効きが悪かったようだ。


「頭を抑えているドルチェは置いといて……今日はお休みにして、明日はギルドの仕事をしようと思うのだけど」


(いいんじゃないか?そもそもドルチェがこの調子だし……ココリスも買い物に行きたいだろう?)


「ええ。昨日のアレで破けたしね」


 そんな感じでドルチェを置いて、今日の予定が決まる。ということで、二人には買い物に行ってもらって、俺は……。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―およそ1時間後―


(よーーし!作るか!!)


 俺は足りなくなった薬の作製と新たな薬の研究を始める。ちなみに今の俺は小さな植木鉢に植えられている。肥料もたっぷり入れてもらったので魔力の枯渇とかにはならないだろう。


(昨日は音魔法の練習してたしな)


 ステータス画面を覗くと音魔法に新たな項目が追加されていて、コピー・サウンドというのがあった。昨日の夜中、聞こえる音をモノマネしていたらいつの間にか覚えていた。名前の通りで攻撃魔法ではなく、覚えた音をそのまま流すという魔法で……何に使えるかは正直不明である。


(さてと……)


 俺はとりあえず鳥獣変身薬と動物変身薬をさらに調合のアビリティで変化させてみた。


(うん?)


 すると、両方とも同じ物になる……その名は……。


(……水)


 調合をやり過ぎると、無害な水になってしまうのだろうか?もしそれが正しいのなら毒を無害化してから廃棄できる訳なので、これはこれで便利かもしれない。


(うーーん……となると、新しい薬を作らないといけないか)


 その後、他の薬も試していく。毒、麻痺、混乱、魅了とかの回復薬を調合すると、今度はそれぞれの効果を与える毒薬になる。その毒薬をさらに調合すると……。


(水か……発毛剤は痩身薬になるし、ポーションは肥満薬……そういえば、食欲増進薬はまだだったな)


 俺は自分が作った薬の中で唯一、試してなかった食欲増進薬を調合で変化させる。


(まあ……順当だな)


 出来たのは食欲減退薬。まあ、当然なのか……?それなら何で発毛剤が痩身薬で、ケガを治すポーションが肥満薬になるのか……全く謎である。俺は気を取り直して、さらに食欲減退薬を変化させる。


(……なんでそうなるの!!?)


 どうしてこうなるのか分からない!?まあ欲しかった薬だったし、便利だけどさ!!


「すいません!ドルチェ達は今いますか!?」


 俺が出来た薬にツッコミをいれてると、突如、ギリムが食堂に入って来て、コップを拭いていたフランキーさんに尋ねている。


「いないぞ?二人なら買い物に……なあ、ウィード?」


(ああ)


「あ、それならよかった。用事があるのはウィードの方でしたから」


(ああ。いつもは二人と一緒に行動してるからな……で、何のようだ?)


「一緒に領主邸に来て下さい」


 俺が了承するよりも早く、俺が植えられている植木鉢を手に取り食堂から出ていくギリム。


(おい!何があったんだよ!?説明しろよ!?)


「あなたの力を貸してください……少々、面倒な事が起きまして」


(面倒?)


「はい」


 俺は領主邸に着くまでの間に何が起きたのかをギリムから聞いて、これなら二人と一緒に買い物に行けば良かったなと思うのだった。

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