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26草

前回のあらすじ「新魔法習得……?」

―「ミスック湖・ほとり」―


「さあ……捕まえるわよ!」


「うん!」


 新魔法を覚えて上機嫌なドルチェとココリスが気合いを入れている。


(それはいいんだが……どうやって釣るんだ?釣り竿の代わりのような物が無いんだが……)


「それはだな……これだ」


 フランキーさんがクラリルを捕えるための道具を見せてくれた。その両手には長く太めの糸と、その糸で括り付けられている何かの肉の塊。この肉を食わせて釣り上げる……っていうのは現実的ではない。そもそも糸が魔法で切られてしまうのだ。となるとこの道具の使い方は……。


(まさか、おびき寄せるのか?それを引っ張ってこのほとりまで?)


「そのまさかだ!これでここまでおびき寄せて、全員で叩く!これを遠くまで投げるのは俺に任せとけ!」


(なんとまあ……)


 かなり原始的な方法だなと思ってしまう。


「それじゃあ……一発目!いくぞ!!」


 フランキーさんが雄たけびを上げて、肉の塊を湖の方へ投げ飛ばす。フランキーさんの腕力はなかなかの物で、かなり遠くまで飛んで湖に落ちた。


「まずまずだな……次は嬢ちゃん達の魔法を使ってさらに遠くまで飛ばすぞ」


「分かりました」


 そんな話をしながら糸をすぐに引っ張り始めるフランキーさん。どんどん引っ張っていて先ほど投げた肉の塊が水を滴らせながら、フランキーさんの手に戻ってくる。


「よーーし!ドルチェ!いくぞーー!!」


 先ほどより勢いよく投げようとするフランキーさん。


「ウィンド・バースト!!」


 タイミングを見計らって魔法を唱えるドルチェ。最初にしては息が合っていて、先ほどより勢いよく、そして遠くへと肉の塊が飛んで行った。


「よしよし……」


 同じように引っ張って手元に肉の塊を戻す。その後、何回もそれを繰り返してひたすらクラリルをおびき寄せる作業になる。


(船とかダメなのか?)


「止めておいた方がいいぞ。小舟なら底に持っていかれる……っと!」


「飲み物を持ってきたわよ」


 特にやることが無くなってしまったココリスが、拠点まで戻って飲み物を入れて戻って来た。


「おお。ありがとう……そこの岩に置いてくれ」


「分かったわ。ルチェも」


「ありがとう!」


 水分を取りつつ、釣れるのを待つ俺達。俺の体内時計で確認するとお昼に近い時間になる。


(皆、お昼はどうするんだ?このまま何も取らずに釣り続ける気か?)


「そんな所ね。こんな状態だとなかなかご飯を取れないから、軽食としてこんなクッキーを用意してるけどね」


 ココリスが自身の鞄から、某メーカーが出しているような固形物のクッキーを出す。


(ああ。最初に会った時に見たそれか)


「あの時はウィードが自分が狩った獲物を貰ったから食べる事は無かったんだよね」


「そうだったわね……」


 まだ、一月も経っていないのにずいぶん昔のような気がする。


「でも、これって味はいいんだけど……口の中がパサつくのよね」


「だね」


「夏場でも腐らないのはありがたいんだがな……」


 物が腐らないようにするには、食物に含まれる水分を出来るだけ抜いたり、アルコールを使ったりして菌の生えにくい状態にしなければならない。このクッキーの場合は水分を抜き、砂糖を多めに使う事でその状態にしているのだろう。


(さっきの軽食を早く食べ過ぎたな)


「そうね……」


 そう言って、皆がそのクッキーを頬張り、水分を取っている。そんな味気の無い昼食を取り、また長い時間が経過する。全員無口で黙々とやっているので、俺は気分転換も兼ねて先ほどから思っていた疑問を尋ねる。


(しかし……ここって他の動物やモンスターはどうしたんだ?辺りを見回しても、ここに来る奴が見当たらないんだが?)


「それはクラリルがいるからな。ここじゃなくて、少し外れた場所に普通の湖があってな。多くの奴等はそこで水分を取るんだよ」


(そうか……でも、それならこの魚って、何を食べて成長してるんだ?)


「うん?それは……元々、ここに住む魚じゃないのか?」


(この大きさの湖にフランキーさんより大きい魚の群れとなると……少し妙なんだよな……)


 シャチほどの魚の群れが住むには狭すぎる。ましてや、ここは山の頂上に近いために河川から魚が流れ込んでくるというのも無いだろう。まあ、魔法の不思議な力で成長していると言ってしまえばそこまでなのだが……。


「まあ、そんな難しい事はそんなのを調べている王都の学者にでも訊いてみるんだな……うん?」


 フランキーさんが何かに気付いて、先ほどから、ただ引っ張っていた糸の操作を止めたり引っ張ったりして複雑な操作をする。


(来たか!?)


「そのようね……」


 ココリスが近くの岩場に置いていた槍を手に取る。ドルチェもMPポーションを飲んで戦闘の準備に入る。


「いいか?来るぞ……」


「皆!準備はいいかしら?」


「うん」


(オッケー……じゃあ演奏を始めるぞ)


 俺は音魔法で鼓舞を発動させる。すると、周囲に音楽が鳴り始める。これは……俺が覚えているゲームの戦闘BGMだったか?そんな音楽が流れている。


「おおっ!力が漲る!!」


 フランキーさんはそう言いつつ、慎重に糸を引っ張り続けている。


「何かうずうずするね……」


「ええ」


 3人とも早く戦闘がしたくてたまらないような素振りを見せる。すると、湖から何かが現れる。


「見えたぞ!クラリルの背ビレだ!!」


 フランキーさんが糸を一気に引っ張る。それを追ってクラリルの背ビレがこちらへと向かってくる。


「気を付けなさい!一匹じゃないわ!」


 ココリスのその掛け声とほぼ同時に、背ビレが一気に5つも増える。計6匹がこちらへと近づいてくる。


「いきまーーす!えい!」


 ドルチェが湖に向かって状態異常を引き起こすポーションが入った瓶を投げる。それは割れて、湖の水と混ざり始める。


「グランド・クリエーション!」


 そこにココリスが土魔法を使って、湖の方向に向かって二つの簡単な波止場を作る。それはフランキーさんを挟むような形で設置されていた。


「ここに入ってきたら、私がさらに壁を作って、閉じ込めるわ!」


「了解だっ!!」


 ココリスが自分が作った波止場へと走り出す。そしてクラリルが肉の塊に釣られて、そのまま二つの波止場に挟まれた場所へと入ってくる。


「グランド・クリエーション!!」


 そして波止場の先端でココリスが再び魔法を発動させて、完全に波止場内に閉じ込めた。肝心のクラリルたちは肉の塊に夢中で我先にと食べようとして閉じ込められていることに気付いていない。


「よーーし!いくぞ!!」


 6匹の中で一番ほとりの近くにいたクラリルに狙い定めて突進するフランキーさん。そのうち、一匹が気付いてフランキーさんへと顔の向きを変えて陸地の方へとその口を大きく開けて喰らいつこうとしている。


「ダウン・バースト!」


 そのクラリルがフランキーさんに襲い掛かるかどうかのタイミングで、ドルチェが魔法を発動させて、そのワニような頭を陸地に縛り付ける。

 

「おらよっと!!」


 そのままフランキーさんはそいつに目掛けてジャンピングスマッシュを決めて、そのクラリルの頭と胴体を真っ二つにする。それに気付いた他のクラリル達が、倒れたクラリルの胴体を足場にしているフランキーさんに襲い掛かろうと突進する。


「真空突き!」


 波止場にいたココリスが槍を素早く突き出すと、先頭にいたクラリルの胴体が穿孔する。あれは槍を高速で前に突き出して、その衝撃波で敵を射抜くみたいなアビリティなのだろう。とりあえず先頭のクラリルが動きを一時的に止めたことで、後続のクラリルとぶつかりあって、一時的にクラリル達の動きが止まる。それだけではなく、ドルチェが始めに投げた状態異常のポーションも効き始めたのかその場で悶え始めた。


「よっと!」


 その間にフランキーさんが俺達の所まで戻って来た。俺はココリスがどこにいるか確認すると、ココリスもこちらに戻ってこようとしていた。


(それなら!!)


「ウィード?何をする気なの?」


(まあ、見てろって!喰らえ……ダイダルウェーブ!!)


 俺は波止場に囲まれた水を使って局所的な津波を起こす。その津波は波止場を乗り越えて向こう側へと流れていく。


「おお……!!水が無くなった!!」


「クラリルがじたばたしている!」


(これでクラリル共はまな板の上の鯉状態!後はトドメを差すだけ!!)


「なら私に任せなさい……」


 俺達の所に戻って来たココリスが槍を前に出して魔法を使う姿勢を取る。すると、黒い靄がクラリル達を包み込んでいく。


「奪い取れ……ソウルドレイン!!」


ギャオオーー!?


 悲鳴を上げるクラリル達。靄が晴れると、クラリル達は重なるように横たわっていた。その体はちょっとだけ霜が付いている。


「よっしゃー!大量だな!!はははーー!!」


 大喜びするフランキーさん。


「やったね!」


「ええ!」


(これならクラリルのフルコース料理が作れるな)


 予想以上の釣果に喜ぶ俺達。


ビリッ!!


 突如何かが破ける音が周囲に響く。その音のする方……ココリスを見る。そのココリスは既に自分の大きく膨らんだ二つの胸を隠している。元から大きかったのに、今の胸の大きさは片方でバスケットボール程はあるかもしれない。さっきの音は服が破けた音だったみたいだ。


「な……なにこれ?」


 唖然とするココリス。しかし変化はこれだけで済まなかったのだった。 

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