表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/208

25草

前回のあらすじ「無事に目的地に到着」

―「ミスック湖・ほとりの近く」―


「よし!準備も終わったし、さっそく捕まえようか!」


「そうね……」


「俺っちも手伝うぞ!見てるだけっていうのもつまらねえからな!」


 フランキーさんが俺に預けていた武器である戦斧を持って素振りをしている。フランキーさんも昔は冒険者家業をしていたらしく、時折だが食材調達を目的とした狩猟もしているそうだ。


(何かフランキーさんの素振りを見ているとそのままクラリルの首を一刀両断しそうだな)


「出来ればいいが……難しいだろうな。少しでも動きを止められたら出来るかもしれんが……」


(まあ、今回は魔法を使える俺達がいるから出来そうではあるがな)


「そうね……ただ、今回気を付けないといけないのは火属性の魔法は使わない事、これを使うと可食部の味が極端に下がるからダメ。それで、水属性はクラリル自身が使用することもあって効果は薄いからそれもダメね」


(そんな事を言ったら毒魔法もダメだよな……俺の毒って皆に渡した薬以上の効果はでちゃうしな……)


「そうね……となると、あれ?」


(……俺ってただの荷物係?)


 収納があるから倒したクラリルを入れるだけの簡単なお仕事になってしまうのか俺!?


「じゃあ音魔法で後方支援かな?」


(それか……でも、まだ練習中だしな)


「音魔法ってのは鼓舞ってのがあってな。これを使うといつも以上の力を出したりすることも出来るからそれでもいいぞ?」


(まあ、それなら……)


「それじゃあ私は、風属性魔法で……」


「私は槍と土属性魔法で……」


「俺は斧だな!」


(……なあ?光と闇属性は?使わないのか?)


「「……」」


 突如、黙ってしまう二人。あれ?聞いちゃダメだったのか?というより、この二人がその属性魔法を使った所を見たことが無い。


「使い勝手の悪い属性だからな……」


 フランキーさんが腕を組み、うんうんと頷いている。


(使い勝手が悪い?名前だけを聞いたら強そうな魔法何だけど……)


 中二病的な考えなら、闇の炎に……とか、聖なる光が……!とか他の属性とは突出した属性な気がするんだけど……。


「いや……弱いんだが?」


(はいぃ?)


 どこぞのドラマの刑事ばり返事をしてしまう俺。え?弱い?


「えーと……試しに私が使うね。ライト」


 ドルチェが試しに光属性の魔法であるライトを使うと、丸い球体を生み出し、それが周囲を照らす……まあ、日中だから明るいんだけど


(まあ、基本だよな……)


 そしてドルチェが術を解除する。


(それで他の魔法は?)


「……以上です」


(え?)


「私も使うわよ?ブラインド!」


 ココリスが術を唱えた瞬間、俺の周囲が暗くなる。


(目隠しか……いい魔法じゃないか?)


「そうね……ただ、それだけなのよ」


 ココリスが魔法を解除したのだろう。俺の周囲の闇が消えた。


(まさか……)


「光と……」


「闇は……」


「「これだけしか無いんだよね(のよね)」」


(な、な……何だって~~!!!!)


 まさか……そんな……よくゲームや漫画で見るような光属性魔法と闇属性が見れないと!?


「俺もそれしか聞いたことが無いな……」


(そんな……聖者破光!とか闇ノ終焉とかそんな魔法は見れないのか!?)

 

 俺は昔やったゲームの魔法名を叫ぶ。アンデットに対して大ダメージを与える聖者破光、そして周囲を闇の力で破壊し尽くす闇ノ終焉。そんな魔法達がみれると思ったのに……!!


「それってあなたの世界の想像上の物語の魔法でしょ?使えないと思うわよ?」


「光もただ照らすだけだしね……」


(……いや。創る)


「「え?」」


(いや!出来るはずだ!!せめてプリズムレーザーみたいな光魔法とか!相手の生命力を奪い取るソウルドレインとか!!)


「れーざー?」


「ソウルドレイン……って、生命力を吸収するなんてゴースト系じゃないんだから……」


(後者は疑似的な物だから本当に生命力を奪いとるわけじゃないからな?それとプリズムレーザーってのはアレだ!虫眼鏡で光を集めると紙が燃えるだろう?)


「ああ!それなら分かる!」


(だから、無数の光の向きを一ヶ所に集めれば……!)


「……無数の光を一ヶ所に……周囲の魔力を集めるのと同じ感じかな……?」


(どちらかというと常に流れる川の水を堰を使って狭める感じだ。こう太陽の光を目標に向けて向きを変えつつな)


「常に流れる水……つまり、光も同じってこと?」


(そうだ。光もあの太陽から熱として流れてるんだ。それを魔法で糸状の細さに……)


「球体を作るのと同じ感じ……それを集まるのではなくて一方方向に……」


 ドルチェがブツブツと言いながら、近くにあった大きな岩に杖を向ける。


「プリズムレーザー……」


「……」


「……」


(……何も起きないな)


 岩には何も起きていない気がする。


「うわ~~!恥ずかしいだけじゃないの~~!ウィード!!」


(いや。待て。そんな簡単に使えたら苦労しないだろうって!それに成功するとかも……うん?)


「話を逸らさないで!」


(いや……うわ!!草が!!)


「草はあなたでしょ!?」


(違う違う!!さっきのレーザーで火事が!!)


「「「うん?」」」


 俺の指摘を受けて、皆が先ほどレーザーを放った方向へと振り向く。すると岩の後ろが盛大に燃えている。


(ココリス!近くまで寄ってくれ!俺が水属性魔法で消す!)


「う、うん!!」


 俺はココリスに頼んで火事の現場近くまで近づいてもらう。大きな岩の後ろは草が茂っていてそこが出火していた。


(ウォーター・ボール!五連打ァ!!)


 俺はすぐに大き目のウォーターボールを連弾で撃ち出す。出火してすぐに消火作業をしたために、火をすぐに消すことが出来た。ちなみに、五連打ァ!は……ノリである。


「何が起きたんだ?アレがレーザーなのか?」


 後ろからココリスとフランキーさんが近寄ってくる。


「でも……岩に向けて撃ってたわよ?ね、ルチェ?」


「う、うん……」


(その岩を見てくれ。もしかしたらレーザーが貫いたかもしれない)


「そんな凄い威力なの?」


(鉄板を加工するのに使うぐらいの技術だしな。その威力はヤバいと思うぞ)


 俺達は的に使った岩を念入りに調べる。すると、小さな穴を発見。それは岩を貫いていた。


「……これ。ヤバくないか?」


「ちょっと予想外だったかも」


(それより俺のチョットのアドバイスでそれを再現するドルチェの才能が怖い……恐ろしい子!)


「何を言ってるのよあなたは……それで?これは成功なのかしら?」


(だな。レーザーは狙いを付けるために見えるのもあれば、熱量のある不可視の光線として使う事も出来る。ただ、威力や調整が必要だな。むしろ狙いを付けるための光線は別の魔法名がいいな)


「なるほど……で、私はどうなの?」


 期待を込めた目でこちらをみるココリス。まあ、役に立たないと言われた属性魔法が使えるようになるのは嬉しいだろう……ただ。


(うーーん。思いつかない)


「え?」


(光は科学とか学べば分かる内容なんだが……闇ってなると少し難しくなる)


「でも、ソウルドレインとか言ってたわよね?」


(ああ……これってもしかしたらだぞ?そこは念頭に置いて聴いてくれよ?)


「ええ」


(闇っていうのはつまり光が入って来ない状態だ。それはつまり何かが光を吸収するか、もしくはそれを弾いていることになるんだ)


「なるほど」


(で、ここからがその魔法にこの知識が使えないかって話になるんだが……光が無い。つまりそこに太陽からの熱の恩恵を受けられなくなる。そして前世の俺が住んでいた星の場合、太陽が無かったら―200度。ようは宿にある食料保管庫以上、そこら辺の雪山以上に寒くなる)


 何とも幼稚な例えだが、俺が見たり聞いたりした中で液体窒素的な物は聞いたことが無いのと、温度を表す指標が無かったのでこう伝えるしか無かった。


「つまり……相手を凍死させられる?」


(徐々にだがな。下手すると数日単位かもしれない)


「……」


 先ほどの期待を込めた目が、一瞬にして冷めた目になる。美女から向けられるこの目……悪くないかもしれない……。いや俺は決してドМじゃない。と、とりあえず……。


(そんな目で見るなよ。それで魔法の力でその数日を早く出来ないかなと思ってな)


「なるほど……ようは闇にそれらを吸収すればいいのね」


(うーーん。そうだな恐らくそれであってるはず……かな?)


「オッケー……ようはココリスが使うライトみたいに球体……もしくは箱みたいな物を闇で作って……」


(なら、的はこれだな)


 俺は水の入ったコップを取り出す。ココリスはそれを少し離れた場所に置き、槍を両手で掴み前に構える。


「奪い取れ……ソウルドレイン!」


 魔法を唱えた。が、何も起きなかった!見た目はキレイな正方形の闇が覆っているだけで先ほどと全然変わっていないのだ。


「変わってないな」


「ですね?」


「これで解除したら水が凍結しているはずだけど……」


 ココリスが闇を解除すると、コップに入っていた水は……。ココリスが近寄り、そのコップを逆さにするが何も落ちて来ない。そして皆が見える位置にコップを持って来ると、その中の液体は凍っていた。


「成功だね!」


「ええ!」


 手を取り合って喜ぶ二人。俺はというと……。


(奪った熱量……どこに行ったんだ?)


 あの近くにいたら、周囲に逃げていく熱を感じ取れたのだろうか?もし、そうじゃなかったら、魔法の効果で打ち消されたのだろうか?そもそもあの黒い靄みたいな物は?しかも闇属性って何かイメージ的にデメリット効果があったりしそうなんだよな……。


「どうしたのウィード?」


(気にするな。それよりもさっさとクラリルを捕まえるぞ)


「ええ!」


「よし!やってやるんだから!」


 こうしてクラリルの捕獲前に二人の魔法がパワーアップするのだった。ただしこれだけは伝えないといけない事がある。


(ドルチェ。プリズムレーザーは熱を使った攻撃、つまり火属性と同じ状態になるから使用禁止だぞ?)


「ええっ!?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ