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24草

前回のあらすじ「移動手段開拓中……」 

―翌日の早朝「城壁都市バリスリーから少し離れた草原」―


「ここまでくりゃ、目立たないだろう」


「そうですね」


 飛行訓練の翌日。俺達はフランキーさんと一緒にバリスリーから少し離れた草原地帯にいる。ここなら変身しても問題は無いだろう。


(じゃあ、渡すぞ)


 俺は鳥獣変身薬を収納から取り出すと、各々が少しずつそれを飲んでいき、昨日と同じように腕と足だけが鳥の物に変化していく。


「あれ?昨日とは違う?」


 自分の変わってしまった腕と足を見ながら、戸惑うドルチェ。その羽は自身の髪と同じでピンク色。フラミンゴか?でも、アレって元々は白だった気がするけど……気にしたら負けなのだろうか?


「私は……グレーね」


 ココリスはグレー……鳩とか?そこまで詳しくないから適当なのだが……。そういえばフランキーさんは?


「俺は黒だな」


 黒い羽を羽ばたかせるフランキーさん。これはカラスだろうか?そもそも、これらの鳥がこの世界に住んでいるのかが怪しいのだが……。むしろ変身する動物って地球のカテゴリーなのか?


(これは検証する必要があるな……)


「うん?何か言ったウィード?」


(いや。独り言だ気にしないでくれ……それよりも早く行くぞ。あまりダラダラしてると今日中に帰って来れないぞ)


「そうね。フランキーさんもいいですか?」


「もちろんだ!リリーに美味しいクラリル料理を振舞ってやらないとな!」


 やる気満々のフランキーさん。皆の準備が出来た所でミスック湖へと飛び立つ。


「うわ~……森を上から見下ろすなんて初めて!」


「こんな体験、そうそう無いものよね……」


(バンジージャンプで体験した事はあるが……それとは別だな)


 いつものようにドルチェの腰のベルトに括り付けられている俺。昨日の飛ぶ練習ではずっと見ていただけなので、実際に飛ぶのはこれが初めてである。


「これなら大分、早い時間でミスック湖に到着するな」


 本来のミスック湖までの道中は山2つ越えていかないといけないのと、その道が舗装されていないために進むに苦労するのだが、今回はひたすら真っすぐ進むだけである。どちらが早いかなど想像しただけで理解できるだろう。


(そういえば、空を飛んで攻撃するモンスターとかいるのか?いるのなら俺が対処するんだが)


「この辺りにはいないわね。いたとしても……大人しいモンスターだから、こちらから手を出さなければスルー出来るわ。それより気にするのは時間よ。この高さから落ちたら大ケガじゃ済まないわよ?」


(分かってる。効果が切れる5分前には伝えるから安心しろ)


 ここからミスック湖まで飛んで行った場合、どれだけ時間が掛かるのかは誰も知らない。場合によっては途中で休憩する必要もあるので、そこの判断を間違えないように気を付けなければ。


「おおーー!?」


 すると、後ろからフランキーさんの驚いた声がする。するとフランキーさんが、ドルチェとココリスの間を猛スピードで抜いていった。


「どうしたんですかフランキーさん!?いきなり猛スピードを出して!?」


「いや~……」


 先ほどの猛スピードからスピードを落として俺達の横に並らんで飛ぶ始めるフランキーさん。その表情は驚いたままだった。


「獲物を狩る際の飛び方をマネをしたら、予想以上のスピードが出てな……それに驚いただけだ」


「何だ……驚かさないで下さいよ」


「いや~。すまんすまん。昨日は目立たないように訓練してたからな、どれだけスピードが出るか気になってな!」


 笑いながら答えるフランキーさん。念のために周囲を確認しているが、こちらを襲おうとしているモンスターは確認できない。


「ちなみに……どうやったのかしら?」


「こんな感じだよ。見てろよ……」


 フランキーさんから高速飛翔の仕方を教わる二人。その間も、こちらを襲うとするモンスターが現れる事は無かったのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―およそ一時間後「ミスック湖・ほとりの近く」―


「あっという間だったね……」


「ああ。俺も若い頃は大分時間を掛けてここまで来たことがあったが……ここまで短縮するとはな」


 ミスック湖に向けて進む俺達。あの後、効果が切れる直前まで飛び続けた俺達はミスック湖の近くの高原に着陸。そこで薬の効果が切れるまで、持ってきた軽食などで休憩をしていた。


「うーーんーー!!空気が美味しいね♪」


(そうだな……)


 深呼吸しながら背伸びをするドルチェ。確かに草の俺でも空気が澄み切ってるのが分かる。おかげで葉の部分がつやつやになってるのだから。


(それで、このまま湖に着いたらどうやって魚を捕まえるんだ?釣り道具が見当たらないんだが?)


「うん?釣り竿なんて役に立たないわよ?」


(へ?)


 魚を捕まえるのに釣り竿が役に立たない……?ああ。もしかして。


(網を投げ入れて捕まえるのか!そうだよな。釣り竿なんかでやってたら時間が掛かって……)


「そんなの魔法で切られちゃうよ?」


(……はい?)


 あれ?俺がおかしいのか?魚を捕えに来たんだよな?


「もしかして……ウィード。お前さん市場に売っている小さな魚とかをイメージしてるのか?」


(違うのか!?)


 湖に生息する魚っていう位だから、大きくてもアマゾンの大ナマズとかその位をイメージしてたんだけど……。


「そういえば……私達が話してた内容って美味しい魚としか言ってなかったわね……」


(すまない!説明プリーズ!!)


「それじゃあ……目的地に着くまで話してあげるわ」


 俺は目的地であるミスック湖に着くまでに3人からクラリルの詳細を聴く。まずクラリルはこのミスック湖にしかいない大型水棲モンスターであり、体内には魔石を持っている為、3種類の水属性の魔法を普通に使ってくる。1つはウォーター・ボール。水の弾を作って飛ばす魔法で相手を弾き飛ばす事が出来る。2つはウォーター・ショット。これは圧縮した水を水鉄砲のように飛ばす。体を貫くとかは無いが、当たり所が悪いと死んでしまうぐらいの威力を持っているらしい。そして3つ目がウォーター・カッター。水を刃状に飛ばしてくる魔法で、これのせいで網とかは使用してもすぐに切られてしまう。もちろんだが当たればウォーター・ショットと同じく死ぬことがあるので注意だ。


(何か俺の使う水魔法と同じだな)


「そうね。でも、あなたの方が()()()()強いと思うわよ」


(魔法では……ね。それでどんな姿なんだ?)


「捌きがいのある大きな魚だよ。具体的には……」


 3人の説明を聴いて要約すると、大きさは海に生息するシャチ位の大きさで、ワニのような口と牙を持っている……ってことは、アリゲーターガーみたいな見た目を持つ巨大魚って所だろうか。


「それと湖に近寄る生物なら、いきなり水中から現れて捕食するらしいから気を付けないといけないわ」


(何かワニような奴だな)


「ワニね……多分、アイツならその体を噛み砕くと思うわよ?」


(マジか……)


 俺のイメージしたクラリルは静かな湖を優雅に泳いでいる姿だったのだが……その幻想は見事に砕け散った。


「という訳で、のどかな釣りじゃなくて、モンスター討伐だから気を付けなさい」


(はーーい!分かりました先生!)


「何が先生よ……」


「あ、見て見て!着いたよ!」


 ドルチェがそう言って指差す方向には大きな湖があった。少し高い所から見たその湖の広さは旅行で行った秋田県の田沢湖ぐらいだろうか。


「さてと……ウィード。お前さんに預けていた俺の荷物を出してくれるか?」


(ああ。あの鞄だな……ほらよっと!)


 収納からフランキーさんの鞄を取り出す。フランキーさんは鞄の口を開けてゴソゴソと何か準備をしている。


「私達の武器を出してもらっていいかしら」


(えーと……ほらよ)


「すまんウィード。何か作業台になるような物は無いか?」


(うーーん……この前の遠征時に使った机で良ければあるぞ。材質は金属だ)


「助かる。それを出してくれ」


(りょーかい)


「ウィード。状態異常のポーション貰っていいかな?効果の薄い物がいいんだけど……」


(食べるんだよな?状態異常のポーションとか使って大丈夫か?)


「効果の薄い物なら問題無いぞ。自身の魔石のせいで捌いている間に解毒されてるしな」


(へえー……そうなのか。そうしたら盗賊とか対人用に作った捕縛用の薬を渡すよ。後遺症の残らない安全な薬だからちょうどいいだろう)


「そうしたらここじゃなくてもう少し湖に近寄った場所にそれらは置きましょう。ここはあくまで簡易作業場だけ」


「だな。近すぎると仲間のクラリルが攻撃してあぶねぇしな」


(こいつ集団で行動するのかよ……)


「そうよ。でも、今回捕まえるのは一匹で十分だから他のクラリルは無視しましょう」


「そうだな。まあ、俺としては他にも捕まえらえるなら捕まえたい所だがな」


「欲張っちゃダメですよ?」


「分かってるって。ただ、今回はウィードがいるからな。こいつの収納なら多く捕まえても腐らずに済むしな……それで、俺の準備は済んだんだがそっちはどうだ?」


 フランキーさんが作業台に置かれた包丁を拭きながら訊いてくる。


「オッケーよ」


「私も大丈夫です!ウィードは?」


(大丈夫だ。さっき休んだ際に土を入れ替えてもらったしな)


「よし!それじゃあやるぞ!」


「「おおー!!」」


(やってやるぜ!)


 フランキーさんの掛け声に答える俺達。こうして俺達のクラリル捕獲作戦が始まるのだった。

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