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217草

前回のあらすじ「次の場所へ行くための準備中……」

―翌日の朝「王都・城門から少し離れた場所」―


「これより水源の調査へと向かう! 極秘任務のため少数による調査になり、諸君らに苦労を掛けるが……その分、高額報酬を約束する!」


「「「「おおーー!!」」」」


 冒険者ギルドのグランドマスターに次ぐ権力を持つサブマスターがそう言って、集まった冒険者達の士気を上げていく。俺達7人にプラスしてギルド職員も含めた12人、計19人による調査となった。ちなみにアレスター王が所有する騎士団はすでに水源と王都まで続く河川の調査に向かっている。


「それでは……」


 そしてサブマスターによって調査場所を区分けされる。俺達以外の冒険者達が分けられると、最後に俺達の番となり、水源である『ホルツ湖畔』とその周辺になった。


「……以上だ。質問が無ければ、各自職員1名を連れて出発してくれ」


 サブマスターがそう言うと、あるグループはすぐさま出発したり、また、あるグループはサブマスターと話をしたりとする。


「(嫌味とか言われるかと思った……)」


 俺達以外のグループは水源以外の河川の調査なので、中には「何でこいつらが!?」とか突っ掛かる輩も出ると思っていたのだが……。特にロリ巨乳美少女である俺は格好のネタだし……。


 そんな事を思いつつ、『フォービスケッツ』と俺達はギルド職員1名なのか怪しい女の子と一緒に王都をストラティオに乗って出発する。


「で……色々ツッコみたい事があるんだけど?」


「あ、気にしないで下さいね〜? 今回はそういう立場ってだけですから〜! 後、おじいちゃんは先に水源に向かってるので、気にせず行きましょう~!」


 ロドニー食堂の店主であるロドニーさんのお孫さんであるフレッサがニコニコと笑顔で、俺が質問するよりも早く返事をする。


「これ……いいの? 他のパーティーから苦情出ない?」


「大丈夫ですよ~? ヘルバさんの実力は冒険者ギルド界隈では噂になってますし、称号とはいえ『聖女』を持っているとなれば、むしろ私のような優秀な護衛を付けないといけないですから〜」


「あそこにいた全員、私が聖女だって知ってるってこと?」


「はい〜! あ、ちゃんと口が堅い方々ですし、誓約書も取ってあるので安心して下さいね〜!」


 そう言って、鼻歌を歌いながらストラティオを操作するフレッサ。その口調で話を聞いていると、その話が信用出来るか怪しいのだが、食堂で見た彼女の実力もそうだが、彼女の持つよく手入れされた道具……それらに付いている無数の傷や補修箇所を見れば、彼女が言った優秀や信用という発言が、ふざけた発言では無いことが分かる。


「ってことで、『フォービスケッツ』と『トリニティハーブ』の皆さん。精一杯勤めさせていただきますので、よろしくお願いしま〜す!」


 フレッサは先ほどから俺達の話を静かに聞いていた皆に、ついでと言わんばかりに自己紹介をも終わらせるのであった。


「よろしくお願いしますね! それで……ヘルバさん達のパーティー名がやっと決まったんですね」


「あ、私もそれ思ってた。いつ決めたの?」


 すると、俺達のパーティー名がいつの間にか決まっていた事に気付いた『フォービスケッツ』の面々から、いつ決まったのか、どうしてこの名前なのか問われたので順番に説明していく。


「昨日だよ? 私がそろそろ決めないかなって2人に相談して……」


「特にこだわりが無いから、ヘルバに決めてもらったの」


「悪くない名前だったから、そのまま決まった感じね。最近のクエストが薬や病気やらが関わる事が多いし、薬の素材であるハーブが名前に入っても不自然じゃないしね」


 ドルチェとココリスの2人がパーティー名に満足していて何よりである。なお、エルフとドリアードの混合パーティーなので、『新緑の〜』とか『若木の〜』のような木々に関係した名前にしたかったのだが、この2人がそこまで若いのかという疑問もあって、泣く泣く却下している。


「ヘルバ? 何か失礼なことを考えてないかな……?」


「いや、他のパーティー名も考えてたから、この名前で満足してもらって良かったと思ってただけだよ?」


 嘘は言っていない。歳についても、少なくとも100歳超えの2人を女の子や少女と扱うには難しいという当然の事を考えていただけである。


「それよりも……今回のクエストだけど、ロドニーさんはどうして先に行ったの? 私達と一緒でも問題無かったよね? 単独行動とかあまり良くないはずだし……」


「「先に現場に入って調べておいてやる!」って、まあ、若い女性に囲まれて移動するので、気を張っちゃって嫌だったんだと思いますよ〜?」


「確かに、そりゃ厳しいだろうね……」


 話を聞いていたアマレッテイが頷く。女性だらけのグループの中に1人だけ男というのは確かに居心地が悪そうである。というより、俺も自分という存在が曖昧で前世が男性だと思っていた時、同じような気持ちを抱いていた。


「うんうん。それに年齢にも差があるしね……」


 ドルチェのその言葉を聞いて、それは自分達の方が年配だからなのか、見た目や気持ちは自分達の方がより年下だからなのか、どっちなんだろうと頭の中で思案する。


「ねえ……ヘルバ? やっぱり失礼なことを考えていない?」


「だから気のせいだって」


 俺は真顔でドルチェたちが気にするようなことは考えていませんとアピールしながら答える。その後、到着するまで俺達はお喋りに華を咲かせるのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―およそ3時間後「ホルツ湖畔」―


 ストラティオに乗って途中で山道になる街道を進むこと王都からおよそ3時間。目的地であるホルツ湖畔にへと到着する。国の名前を冠していることもあって、今まで見た中でも一番の大きさであり、小さな島がいくつも確認できた。また、王都へと続く河川と繋がる場所には堰が設けられており、その近くには堰を管理する人達の宿舎が遠くに建っていた。


「到着で~す! お疲れ様でした~!!」


「着いたわね……ここに来るのも久しぶりかしら」


「そうですね……私達は2年ぶりですかね」


「私なんて1年ぶりですね~」


 着いてすぐに、俺以外の皆がここに来ることを懐かしむような話を始める。気になった俺は近くにいたガレットの服の袖を軽く引っ張り、こっそりと訊いてみる。


「(ここって冒険者は必ず来るような場所なの?)」


「(うん。ここ王都の冒険者の昇格試験で使用される場所。騎士団と連携して業務にあたれるか見る。期間は1月。寝泊まりをあの宿舎で行うから、ここにいる全員が宿舎内部も含めてこの辺りの地形には詳しい……)」


「(へえ……)」


 俺はその事実に思わず感嘆の声を漏らす。そういえば、俺って何だかんだでAランクになっていたが、普通なら少しずつこのような課題をクリアして上げていくもんだよなと思いながら、再び他の皆の話に耳を傾ける。


「ロドニーさんは宿舎かな?」


「どうでしょう~? とりあえず行ってみますか~?」


「もちろん。ここら辺で異変が無かったかここの管理者に訊かないと……」


 俺達は宿舎へと向かうと、その建物周辺に騎士団の人達がちらほら立っており、各々何かしらの仕事をしていた。


「冒険者の方々ですね!」


 すると、1人の騎士がやって来てこちらに声を掛けて来る。そして、乗って来たストラティオを休ませる小屋まで案内してくれた。


「ここの管理をしているので、ストラティオに乗る際には事前にお声をお掛け下さい。不在の場合は、管理部屋の連絡板に記載をお願いします」


「分かりました」


 俺達はストラティオを小屋で休ませて、寝泊まりする宿舎へとやって来る。2階建ての木造で出来ており、横幅が広く、奥行きも結構あり、かなり大きな館である。そして、大きな扉を開いて中に入ると、ホテルのようなエントランスに受付などを行うカウンターが設置されていた。


「お待ちしていました!」


 すると、カウンターの向こうから少し年老いた騎士の人がこちらへとやって来る。


「ここのリーダーを務めますカスタリネです。よろしくお願いいたします」


 そう言って、深々とお辞儀するカスタリネ。自分の立場を騎士団で使われる隊長ではなくリーダーという言い方に少しだけ違和感を感じる。


「さっそくですが、現状の報告を致しますのでこちらにどうぞ」


 カスタリネがそう言って、カウンター裏にある扉へと案内する。扉をくぐると大きな机に無数の資料に、ここ周辺の地図が置かれており、その近くにいた騎士団の方々は話し合うのを止めて、こちらに一度敬礼してから話し合いを再開する。


「こちらがこの湖畔周辺の地図です。今は騎士団と先に来ていただいたロドニー殿がここを調査中です」


 カスタリネがどこを調べているのか地図上に指を差すので、見て見ると、湖畔に向かって流れる河川だった。


「ここに何か異変が起きていないか調査中です。とは言っても、我々の中に高ランクの鑑定系アビリティを有している者がいないので、足で調べているだけですが……」


「水は採取してくるの?」


「もちろんです。それで今回、鑑定していただく冒険者の方は……」


「私。鑑定アビリティ持ちだよ」


「となると、あなたがヘルバ殿ですね。その歳で高ランク冒険者であり高ランクの鑑定系アビリティ有しているとは……噂通りの方ですね」


「それって……見た目の事?」


 俺はそう言って、胸を寄せるポーズを取る。すると、カスタリネ以外の騎士の奴らの目がこちらへと集まった。


「見た目以外にもですよ……。それと、仲間が大変失礼いたしました……」


 コホンと咳払いして、カスタリネが見ていた連中を注意する。


「1つ訊いていい?」


「どうぞ」


「騎士団なら、仲間じゃなくて部下じゃないの? さっきも隊長じゃなくてリーダーって言ってたけど……」


「ここの管理は王都の騎士団が当番制で行うのですが、騎士団の仕事としては大分仕様が違うので、ここの管理者長である人物をリーダーと呼び、部下は仲間と呼んで本業との区別をしているんです。このような緊急事態でなければ、ここの堰の管理や修復、もし我々の手に負えなければ職人の手配、後は冒険者の昇格試験の監督官などをやっているんですよ」


「なるほど……って、そこまで詳しく話さなくても……」


「実は冒険者ギルドからヘルバさんに昇格試験でやるような事をやって欲しいと頼まれていまして。冒険者を続けるなら、ここでの昇格試験の内容を知っておいた方がいいだろうって」


「え? まさか降格もあり?」


「あはは! それは無いのでご安心を。それでは話を戻しますね……」


 そう言って、カスタリネはそのまま俺達にして欲しい事を伝えていくのであった。

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