202草
前回のあらすじ「ヘルバの正体判明!」
次週はお休みです! 次回は5/12になります!
―ヘルバと会った直後「神域」アフロディーテ視点―
「お帰りなさいませ」
「ただいま」
ヘルバとの再会を終えた私は、この世界における神の住処である神界に戻り、私は世界を監視するために用意した白を基調とした部屋の椅子に腰かけ、いくつも浮かんでいる水球の中で、今のヘルバが映し出される水球を私の前に寄せる。すると、ヘルバにフリーズスキャールヴさんと呼ばれている彼女が私の傍に近寄り、一緒に水球に映るヘルバを眺める。
「まさか……ヘルバさんがアフロディーテ様の一部を使って作られた存在だったとは思ってもいませんでした」
「それはそうよ。神々の間でも大騒ぎになった大事件……そして、密かに処理された件なのだから。この事を知ってる神は当事者の私以外に数名しか知らないわ」
「それ……私が知っちゃっていい内容なのですか?」
「知っててもらわないと、他の神が来訪した時に困るかもしれないわ。この件は他言無用、詮索もしない……いいわね?」
「は、はい!」
戸惑いつつもしっかりと返事をする彼女。私が創った人形のような存在のため、そのような事は出来ない仕組みになっているのだが……近頃の彼女の様子を見ていると若干怪しいところがある。やはり、私の体の一部を使って作られたヘルバのアビリティとして対応させていた影響が出てしまってるのかもしれない。何せ、私の下位互換のような存在なのだから……。
「まあ……悪いことばっかりじゃないし」
前神が犯した禁忌。数多くあり過ぎて、他の神からしても馬鹿としかいいようがない奴だった。だが……まさか、自身の仕事の効率化のために、各世界1神しか存在してはならない創造神を自身の手で生み出そうとするとは……しかも、自身の慰めのために、可愛い私に似せた創造神を創ろうだなんて、キショ過ぎて堪ったもんじゃない。さらにさらに、材料に私の髪だけではなく、体液の付いた布切れなんかも用意するという、現世で言うストーカーのような行為もしていて、何よりもだ! あのクズを捕らえる時に先輩神と一緒に来た時なんか、既に出来ていたヘルバの足を舐めていた時を見た時は……。
「アフロディーテ様……どうぞお茶です。こちらのお菓子もどうぞ」
「あ~……ありがとう」
私の機嫌がかなり悪くなっている様子を見て、彼女が気を利かせてくれてお菓子とお茶を用意してくれた。また、新しい料理を覚えたのか、今日のおやつはロールケーキとミントティーのようだ。
『フリーズスキャールヴ』というアビリティによってヘルバと繋がっている影響なのか、彼女の用意してくれる料理のレパートリーがかなり増えている。そして、以前ならこのように気遣いをすることが無かったのだが、最近ではメイドやバトラーのようなお世話をしてくれるし、あっち系の遊びをする時はその感情豊かな表情で私の嗜虐心を煽ってくれたりと……。
(全く……いい身分で創造神をさせてもらっているわ)
自信に仕える人形を生み出す場合、それに感情を持たせてはいけない。それは、創造神の力を私利私欲に使ってはいけないという理由で作られた決まりであり、もし、感情を持つヴァレットが欲しいのなら、下界の人間から見繕わなければならない。創造神として経験の浅い私にとって、それはまだ先の話だと思っていたが……しばらくは彼女がいれば問題無いだろう。
それに、この後の行方ではもう1人増える予定である。私がこの世界を管理する理由の1つとなっている彼女……異端な存在ではあるのだが、彼女は私を素材として作られている関係もあって、私だけ違法扱いにならずに仕えさせることが可能である。いや……仕えさせるのではなく、妹として扱うのも悪くないかも……。
「ふふ……♪」
「お気にめされましたか?」
「ええ……。この調子で励んでちょうだい。将来、私がもう1人増えるんだから」
「え? 増える……? どうしたらそうなるんですか?」
「そのうち分かるわ……さてと」
私は水球を元の位置へと戻し、席から立ち上がって彼女の両肩を掴む。
「あ、アフロディーテ……様?」
「あなたの料理が上手になったせいで、私、少しだけ太っちゃったのよね。お腹辺りがパツパツだし……ほら、お腹辺りが柔らかいでしょ?」
私は彼女の手を取り、私のお腹に触れさせる。すると、私の少し膨らんでしまったお腹が彼女の手を少しだけ飲み込んでしまう。
「ヘルバ達と会う際に、お腹に力を入れて誤魔化すのが大変だったのよね……次、会う時までには元の体型にしておかないと……ってことで運動しないと」
「そんなの自身のお力で変えられますよね!? そもそも……うぐっ!?」
文句を言う彼女の口を私の口で黙らせる。そこから、舌を絡め、彼女の抵抗する意思を失くさせる。口を離すと彼女の惚けた自然な顔を見る事が出来る。ヘルバがここにいたなら、どのような反応をするだろうか? 魂は私に関する物は何一つ使われていないのだが、どこか私と似ているところがある。例えば、敵とみなした相手を煽ったりするあの姿とか、男ではなく女性が好きな点とか……。
「ふふっ……楽しく3人で運動できたら面白そうね」
「か、かんふぇんして……くだしゃい……」
「ダ~メ。さあ……楽しみましょう?」
私は彼女を連れて部屋を後にする。ここ最近、忙しく仕事をこなしたのだ。少しばかり楽しんでも文句は言われないはずである
「さて……何して遊ぼうかしら?」
「ヒィーー!!」
彼女の悲鳴が神域に木霊する。しかし、ここにいるのは私達だけ……誰かが助けに来ることは無い。そもそも、今の彼女の表情を見たら、本気で嫌がっているとは誰も思わないだろう。
それから数時間後、彼女が淫らな顔でベットの上に寝転がることになったのは言うまでもない。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―翌日「レッシュ帝国・城下町」―
教会でのアフロディーテ様との拝謁した翌日、俺は城下町へと出て、久しぶりにゆっくりとした時間を過ごしている。誰かと一緒ではなく1人での時間……やっぱりいい物である。前世でも……。
「って……これ私の前世じゃないや」
全てを知った後、俺の持つこれらの記憶は前世の記憶ではなく他者の知識である事を理解した。そして、前神によって作られた存在だという事も……。
「前神……ロリコンだったのか」
アフロディーテ様の体の一部を使って作られた俺。あのアフロディーテ様の様子からして、ストーカー染みた行為でそれらを手に入れたのだろう。そして、出来た俺を性処理の玩具として弄ぶつもりだった……。
「弄んだ後じゃないよね……?」
他者の豊富な知識のおかげで色々知ってしまっている俺。だから、そういう知識も経験も男女両方で当然あったりする。それらの知識を思い返すと……。ふと、俺は足が気になって、何故か太ももへと手を伸ばす。
「……もしかして、足を舐められたりとか?」
前神がどんな容姿なのかは知らないが、恐らく嫌悪感マックスの精神的に受け付けない奴だというのは分かる。そんな奴に舐められたと想像すると……。
「止めよう。これ以上は私の心に良くない……せっかくのお出掛けなんだから楽しまなきゃ」
俺はこの件に関して考えるのを止め、改めて今日の予定を考える。とりあえず薬作りに使えそうな素材を見たり、今の俺なら着たい女性の衣服もハッキリしてるから、そんな服を探すのもいいかもしれない。後は、美味しいものでも……。
「あれ? ヘルバさん……お一人ですか?」
「ん? システィナ……何でここに?」
俺が今日の予定を考えていると、ニット帽で頭の蛇を隠した普段着のシスティナが近付いて来る。
「お城での仕事を何しようか考えているんですが……城内だと落ち着かなくて、こうやって外に出て考えているんです」
「そうか……相談なら乗るけど?」
「ありがとうございます。けど……いいんですか? 何か用事があるんじゃ……」
「ただ街ブラするだけだからいいよ。特に1人で行動したいとかじゃないし……」
「そうですか? じゃあ……お言葉に甘えて」
そう言って、システィナが俺の横を歩き始める。とりあえず、互いの行きたい場所を出し合うと、システィナがそれならという事で道案内を買って出てくれたので、彼女の案内で城下町を進んでいく。
「迷いなく歩いているけど……来たことあるの?」
「無いんですけど……周りの人達の話とかを聞いていると、こっちに人気のお洋服屋さんがあるそうで、その近くに雑貨屋もあるみたいです」
「周りの……人?」
俺はシスティナの言葉に首を傾げる。確かに、歩いている人はいるのだが、その声がはっきり聞こえるかと言われたら……全然、聞こえない。
「システィナの耳には、ここにいる人達の声が聞こえるの?」
「はい。こうひゃって……しひゃで音を感じれひゃうんですよね」
システィナが舌を出しながら、あっちこっち見渡してから舌を戻した。何か面白い話でも訊けたのかと尋ねようとしたら、何か聞いちゃいけないような話でも聞いたのか、困惑した表情を浮かべている。
「そこ……今、修羅場ですね。あの女の人が二股掛けてまして……一方の男が武器を手に襲い掛かろうとしてます……」
「……テトラ・ポイズン・ショット」
俺はすぐさまシスティナが教えてくれた男に毒・麻痺・睡眠の効果のある毒液を飛ばし、すぐさま男を無力化する。そして、残った男女をどうしようかと思っていると、どこからか現れた憲兵に倒れた男共々連れて行かれた。
「……あれ? 私はいいのかな」
「この俺が何があったかを見てたからな。問題無い」
そこにマールン皇子がシャオル姫を連れてやって来た。その後ろにはメイドのカンナさんと護衛であるモールドもいる。
「……お買い物?」
「シャオルがヘルバと遊びたいらしいからな。すまないが付き合ってくれないか?」
何をしているのかと訊いた俺にマールン皇子がそう答える。その後ろにいるカンナさんとモールドが少しばかりにやついた笑顔をしているので、シャオル姫が遊びたいだけという理由だけじゃなさそうである。
「うーーん……システィナは大丈夫?」
「え? あ、はい……ところで、こちらは……?」
「あ、知らなかったんだ……この方達は……」
俺が4人の自己紹介をすると、システィナの顔がどんどん青ざめていき、最終的には深々と頭を下げてマールン皇子達にお詫びをするのであった。




