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199草

前回のあらすじ「ちなみにシスティナの石化能力はコントロールできるようになった模様」

―皇帝との謁見後「帝都・教会」―


「ミラ様?」


「ヘルバさん。来ていただきありがとうございます」


 そう言って、教会前の玄関で俺の来訪を歓迎するミラ様。本来、ここに所属している教会関係者が誰もおらず、ミラ様ただ一人だけというのはかなり不自然である。


「私はここで待機してますので」


 そして、馬車に乗って一緒にここまで来てくれた側近の人と教会の玄関前で別れ、今度はミラ様と一緒に教会内へと入っていく。正面から入り礼拝堂内をゆっくりと進む……まだ、日の高い時間帯なのだが、信者はともかく、教会に仕える神父やシスターもいない。聞こえるのは俺達の足音だけであり、まるで教会内に誰もいないようである。


「今回、アフロディーテ様と会うのは私達2人だけだそうです。それ以外の方は外されていますよ」


 すると、ミラ様が俺の考えを読んだのか、この教会内の人達がどうしたのか教えてくれた。何でも年末に催しがあるらしく、今日はその準備を1日掛けてやるとのことだった。


「ちなみにだけど……ここに所属するシスターが信用できないとかじゃないよね?」


「もちろん違いますよ。ただ……それだけ他の人には知られたくないような話をされるのかと」


「この前のやり方なら誰にも知られないと思うんだけどな……」


 俺の意識を別の場所に飛ばしたこの前の方法なら、誰かに話を聞かれる可能性はゼロのはずである。


「あ、意識が飛んで体が無防備状態になるからとかかな」


「なるほど……確かにウィードさんの時のあの姿はかなり危険に見えました。下手すると雑草として片付けられていたかもしれません。でも……それなら、ドルチェさん達もお呼びしていると思うのですが……」


「それも……そうだよね」


 教会の礼拝堂にある祭壇までやって来る。そして、ミラ様がその場で静かにお祈りを始めるので、それに倣って、俺も一緒にお祈りを始める。これで、あの空間にまた意識が飛ばされるんだろうな……。


「今のあなたにそんなことしたら死ぬわよ?」


 と、祭壇の方から声が聞こえたので、目を開けてそちらを見ると、祭壇に座り足をゆらゆらと揺らすアフロディーテ様がいた。


「え? ヘルバさんが2人!?」


 俺と髪の色と瞳の色が違うだけのアフロディーテ様の姿を見て、隣にいたミラ様が驚きの声を上げる。色違いの俺そっくりの女の子が目の前に現れば、このような反応になるのは当然だろう。


「違うよ。私がヘルバで、こっちがアフロディーテ様」


「こっちって失礼じゃないかしら?」


「そこは『淑女の嗜みwww』のせいだからね?」


「私のことを丁重に扱っているのなら、そんな風に軽口を叩けないと思うのだけど?」


「メスガキでもあるからしょうがないんじゃないですかねwww」


「主神に対して無礼ね……」


 俺の口調に呆れるアフロディーテ様。無礼というのは承知で、実は先ほどから嫌味を込めつつ話してたりする。俺が何なのか……この前の体調不良の時に何となくの予想は付いている。だからこそ、このくらいは許容して欲しいところである。


「……」


 ふと、そこでミラ様が黙ったまま固まっているのが見えたので、俺が名前を呼んでみると、変な驚きの声を上げて、色違いの俺がアフロディーテ様かと確認し始めた。そこでアフロディーテ様は少しだけ何かを考えてから指をパチンと鳴らした。


「きゃ!?」


 すると、ミラ様の体が急激に太り始め、着ていた修道服をびりびりに破り体中の脂肪が溢れていく。バランスボールのような立派なお腹、そのお腹に載っかかってる少し潰れているが立派な巨乳、お尻にも脂肪が付き、そのせいか元のウエストほどに太くなった太ももも相まってあって足が短くなったように錯覚する。


「ゔう……」


 荒い息をしつつ、その場に座り込むミラ様。そして太くなった腕をタプタプの脂肪で揺らして、これまた頬に付いた脂肪で目が細くなってしまった顔に触れようとするが、手が届かずにその場でじたばたし始める。すると、ミラ様が脂肪で胴体と一体化してしまった顔をこちらへと向けて、そんな体になってしまった不満を口にするかと思ったら、予想外のことを口にした。


「何でへるばざんは冷静なんですが~!!」


(何となく予想できた。そう思えば冷静でいられる)


「『念話』で答えないで下さいよ!?」


(だって、こんなに脂肪が付いたら会話しずらいんだもん)


 ミラ様にそう返事をする俺。さっきのアフロディーテ様の指パッチンで太らされたのはミラ様だけではなく、俺も同じように衣服を引きちぎりながら太ってしまった。ただし、ミラ様より胸がデカかったせいか、巨乳という単語では済まないほどの巨乳になってしまった。とりあえず、楽な姿勢を取ろうとすると腕が脂肪のせいで下に下ろせないことに気付く。また、その場で軽く体を動かすのだが、思うように動けずに俺もミラ様と同じように脂肪を揺らすだけだった。


「まあ、このくらいは余裕ね。そこの状態異常を無効にできるヘルバのアビリティを無視できる存在なんて、なかなかいないでしょ?」


 そう言って、動けない俺の3重腹を叩くアフロディーテ様。軽く叩いているはずなのに、全身の脂肪が揺れてしまう。俺はそれに恥ずしく思いつつも、顔には出さないようにしつつ話を続ける。


(それなら他の分かりやすい状態異常があると思うんだけど……?)


「そうでずよ! 何でごんな姿に!!」


 ミラ様が主神であり、自身の信仰の対象でもあるアフロディーテ様に猛抗議する。太った事で衣服がびりびりに破け散り、素っ裸の肥満体を晒すことになったのだからこの反応は当然である。


「趣味よ!」


(うん。知ってた……)


「私もそんな感じの話は聞いてまじだけど、ごごまでどは思ってませんよー!」


 聖なる礼拝堂内にミラ様の声が響く。かく言う俺もいつ誰が入って来るかもしれない状況でこんなことをするなんてと思っている。しかし、それを追求するのは余計面白がらせるだけだと思い、俺はそれを我慢して別の話題に変える。


(で……そろそろ本題に入ってもらえませんか?)


 俺達……特に俺が恥ずかしがる姿か慌てふためく姿を見たかったのだろうと判断した俺は恥ずかしい気持ちを抑え、平然とした様子をアフロディーテ様に見せつつ、本題に入ってもらうようにお願いする。それを見たアフロディーテ様はつまらない表情をしていた。


「釣れないわね……」


 そう言って、指をもう一度パチンと鳴らすアフロディーテ様。するとポン!という音と共に煙が俺達を覆い、いつの間にか太る前の状態に戻っていた。


「色々、複雑ですが……恥ずかしかったです」


「それが普通の意見だと思うよ……それで、人払いをしたのはこれを試すためですか?」


「それもあるわ。この世界を管理する主神が現世に顕現する……それがどれほど周囲に影響を及ぼすかって……思ったりしない?」


「まあ……周囲に多大な影響を及ぼすと思いますけど……もしかして、私達2人だけの理由って……」


「察しがいいわね。聖女であるミラ、それと……特別なあなたは問題無いけど。他の人が私とあったなら、その瞬間どうなってしまうのか……私でも予測できないから、特別なアビリティを持っているあなた達2人だけにしたわ」


「……こっちの聖女がいても良かったんじゃないの?」


「私の趣味を知ってる人物って意外と少ないのよね……ってことで、こっちの聖女達は知らないのよね」


「だからと言って、ミラ様を巻き込まないで下さいよ……」


「あはは! まあ……やり過ぎたかしらね。本当はあなただけを太らせるつもりだったのだけど、誤って巻き込んじゃった! ごめんね?」


 てへぺろと愛嬌を振りまくアフロディーテ様。その小悪魔的なポーズを見て、俺みたいな男なら許そうか迷ってしまうだろうが、ミラは品行方正な聖女の中の聖女……その姿を見て呆気に取られても、すぐさまその表情をきりっとさせ、怒りを露にする。


「アフロディーテ様……?」


「あ、はい……」


「主神とはいはいえ……ここまでの悪ふざけにその態度はどうなんですか……?」


「え……? あの私、神様……」


「神だからと言って関係ありません!!」


「ひぃ!?」


 ミラ様から感じるただならぬ気配に怯えるアフロディーテ様。その様子を見た俺は思わず、しっかり者の姉がいたずらっ子の妹を叱りつけているように見えてしまった。


「いいですか! 神様とはいえどもですね……!」


「あ、はい……!!」


「おお……」


 ミラ様の気迫に怯えるアフロディーテ様。アフロディーテ様があそこまで怯える姿を見れるとは。この様子だけ見ていると、ミラ様の方が神様に見えてしまう。


「ありがたや……」

 

 アフロディーテ様をお叱りするミラ様。2人がこっちに意識が向いていないのを確認しつつ、俺はミラ様に対して感謝を込めて手を合わせるのであった。


「すみませんでした……」


「ご自身の立場をお忘れなきように……それで、ヘルバさんに何かお伝えしたい事があるのでは?」


「あ、はい!」


 長い説教が終わり、最後に正座して謝っていたアフロディーテ様が起き上がって、俺の方へと振り向き一度咳払いしてから話を始める。


「それであなたを呼んだ理由……つまり本題だけど、こっちに来たティミッドを調べた結果について知らせたいことがあったからよ。それにあなたも私に尋ねたいことがあったでしょ?」


「……うん。それでどっちから話す?」


「あなたからでいいわ。あなたが転生したら草だった理由……その真実を知りたいのでしょ?」


 さっきのふざけた様子から一転、かなり真面目な表情になったアフロディーテ様。俺は覚悟を決め、俺自身の正体について訊くのであった。

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