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18草

前回のあらすじ「誰こいつ!?(ある暗黒幻影獣の叫び)」

―「アルヒの洞窟・14階層 15階へ下りる階段近く」―


「先手必勝!!」


 ココリスが突撃する。しかしラーナ・ボンゴはヒラッと攻撃を避けて、そのまま攻撃されないように洞窟の上部まで浮いてこちらを覗いている。


「浮いているなんて厄介ね」


 ココリスが槍を構え直し、ラーナ・ボンゴに睨みつける。


「あれだと私の武器じゃ攻撃を当てられないですね……」


 ラテさんが困っている。ラテさんの武器はモーニングスターと爆弾だ。爆弾も当てようとすれば当てられるのだろうが……洞窟上部で爆発したら落石は免れないだろう。


(ウォーター・ホイール!!)


 俺は複数の水の回転刃を作り出して、ラーナ・ボンゴに攻撃を仕掛ける。


ボンッ!!!!

 

 すると、タイコを強く叩いてウォーター・ホイールが打ち消される。


「え?」


(衝撃波だ!気を付けろ!)


「タイコを叩いただけで!?」


(そこは魔法とかのご都合主義なんじゃないか!?)


「ごつごうしゅぎの意味が分からないけど……あれって音属性の魔法かしら」


 すると、ボンボンとタイコを叩いてまたモンスターを呼び出す。


「またモンスター!?」


 すると、曲調が変わり激しい物になる。


グギャアアアーーーー!!!!


 モンスター達が奇声を上げながら突撃してくる。


「これでも喰らえ!」


 ラテさんがモンスターの群れを吹き飛ばすために爆弾を投げるが、それを先頭にいたゴブリンが持っていた棍棒で華麗に打ち返してきた。


「嘘!?」


「ウィンド・バースト!!」


 そこにドルチェが風魔法で爆弾を再度弾き返し、そのタイミングで爆発してモンスターの群れを吹き飛ばした……はずだったのだが。


グギャアアアーーーー!!!!


 一部のモンスター達は吹き飛ばされずにそのままこちらへと突進を続けている。


「私より前に出ないで!マッドプール!」


 ココリスが地面に手を当てて魔法を発動させる。すると、目の前の地面がぬかるみになって、そのままモンスター達がハマっていく。


(ウォーター・ホイール!)


「ウィンド・カッター!」


 そこを今度は俺とココリスの魔法で一掃して、残った奴はラテさんがモーニングスターで潰していった。


「ギョオオ~~?」


 ラーナ・ボンゴが浮いている手でお面を搔き始める。どこから発しているか分からない声とその仕草を踏まえると予想外という意味だろう。


「音属性の魔法は今の強化が普通よ」


(味方のバフ、敵にはデバフを与える音楽を奏でる。ってか?)


「そうよ」


 ココリスはふざけた行動を取っているラーナ・ボンゴに目を向けたまま話し始める。


「音属性は攻撃魔法は無くて、今のように味方を強化したり、相手を弱体化させる魔法よ。モンスターが大量発生した時には頼もしい魔法なんだけど、単体では意味が無い……はずだったんだけどね……」


(ラーナ・ボンゴはタイコを叩けば、仲間を呼んで、魔法が飛んで来たら打ち消して……そんな音属性の魔法は初めてと?)


「ええ。その通りよ」


「まあ、音属性の魔法の使い手ってほとんどは酒場なんかで音楽を引いている人ばかりだもんね」


(要は癒し目的が多いと?)


「「そうそう!」」


 二人の返事が重なった。それほどに音属性の魔法は攻撃に向かない……いや、支援に特化した魔法ってことなのだろう。


「これが終わったら、キレイなバーで一杯やりたいわね」


「いいですね。私、いい店知ってますよ」


「あ。それじゃあお願いします!」


(お前ら能天気すぎるだろう……)


 呆れる俺を置いて話し始める3人。こんな訳分からない奴を相手にしてるのに、こんな話をしてる余裕は無いのでは?


 ボン♪ボ、ボン~♪


 アイツはアイツで和やかな音楽を奏でているし……うん?


(って!お前のデバフかいーー!?これでも喰らってろーー!!)


 俺は草の先端からファイヤー・ボールを作ってラーナ・ボンゴに投げつける。それはマントにぶつかって燃え始めるのだが、ラーナ・ボンゴはそれを浮いている両手で必死にコミカル風に叩いて消火しようとしている。


(アイツ側に向いてて助かったぜ……)


 もし、ドルチェの体とアイツが重なっていたら、ドルチェのベルトに括り付けられている俺は攻撃できずに、奇襲を受けてパーティーが全滅していたかもしれない。


「あ、戦闘中だった集中しないと……」


「ああ。そうだったわね」


「今、ウィードの攻撃で慌ててるから今の内だね」


(……)


 あれ?自分たちがピンチだったの気付いていない?もしかして、先ほどの会話に違和感を感じていないみたい……?


(恐ろしいな!!おい!!)


「うん?どうしたの?」


(アレの攻撃……というより音楽がエグいってこと!うっかりしてると洗脳されるぞ!?)


「え?洗脳……?」


(ドルチェ!前を見ろ!!見ないと死ぬぞ!?)


「う、うん?」


 ドルチェが納得していないようだが、とりあえずラーナ・ボンゴを見てくれた。


(攻撃しろ!音楽鳴らさせるな!アイツにタイコを叩かせるな!!)


「りょ、りょーかい!?ウィンド・アロー!!」


 火を消すことに慌てていたラーナ・ボンゴ。今度は飛んでくる風の矢でマントに穴が一つ空いた。


「ギョロロロローーーー!?」


(ラテさん!あいつに向けて爆弾投げて!俺の魔法で着火させるから!!)


「え?」


(ココリス!土属性の魔法で落ちてくる落石を防いで!)


「わ、分かったわ。ラテ!」


「は、はい!!」


 勢いよく爆弾のピンを引き抜くラテさん。


「いきますよーー!!」


 それ!と言って投げ出された爆弾達。


(ドルチェ!後ろに下がれ!ファイヤー・アロー!!)


 ドルチェのアロー系魔法を見て、それを真似した炎の矢を爆弾に向けて放つ。


「マッド・ウォール!」


 爆発する前に土の壁に隠れる俺達。その後、爆発が発生して土の壁の横を大小様々な石が通り過ぎていく。


「……治まったみたいですね」


 皆が土壁の横からラーナ・ボンゴがどうなったかを覗く。


(……どうだ?俺、見えないんだけど?)


 ドルチェのベルトに括り付けられている俺は土の壁に隠れて見えない。


「えーと……いないかな?」


(気を抜くな!アイツ浮いているから、どこかに避けているかもしれないからな?)


「ウィード?何か……積極的?」


(いや。マジであれはヤバイって!お前達、アレのヤバさに気付いていないからな?)


 ダラダラとアイツと戦うのは得策じゃない。高火力で一気に倒し切ってしまうのが良いと判断した俺。皆が素直に俺の指示を聞いてくれて助かった。


「いた!まだ生きてるわ!」


(ゴーゴーゴー!アイツに音を立たせるな!!)


 俺の言葉を聞いて皆が土の壁から出る。アイツは…………いた。タイコは全て破壊。マントと仮面もボロボロ……両手も焦げている。


「ギョオ!!!!」


 両手をグーにして怒りを表すラーナ・ボンゴ。こんな時でもコミカルな動きを止めない……というより、そういう風に見えるだけでアイツは本気なのだろう。


パチン!


 すると、ラーナ・ボンゴが指を弾く。


「何も……起きない?」


「いや!?」


 声のするほうを見ると、ラテさんが自分の体から何かを必死に落とす仕草を見せる。


「来ないで!こっちに来ないで!!!!」


「ど、どうしたのラテ?」


パチン!


 さらに、アイツが指を弾くのが見えた。


「って……何?周りが真っ暗に…………皆、大丈夫?」


「何を言ってるのココリス!?」


(ドルチェ!アイツの指パッチンで魔法が発動している!)


「それじゃあ……」


パチン!


 膝を折るドルチェ。まさか……。


「み、ミミックが……ミミックが……」


 体を震わせるドルチェ……。音を使った幻覚魔法ってところか?いや。指パッチンで発動するなんて便利だな!?


「ギョ!ギョ!ギョ!」


 俺に攻撃されないように、ドルチェの体を壁にするように地面に下りて来たラーナ・ボンゴ。


「ギョ!ギョ!ギョ!」


 その声がどんどん近づいてくる。


(おい!ドルチェ!目を覚ませ!)


 俺は念話で必死にドルチェが起きるように声を挙げるのだが……。


「ダメ……これは無理……」


 いや無理を言ってる場合じゃ……あれ?


「ギョ!!」


 するとアイツが近くから声を挙げる。恐らくドルチェに何らかしらの攻撃を仕掛けようとしてるのだろうが……。


「ウィンド・ブレード!!」


 ドルチェが持っていた杖の先端から風の刃が出現。一気に振り抜いてラーナ・ボンゴの手を二つとも切ってしまった。


「ギョ!?」


「ウィード!」


(おう!そのダサい仮面を割ってやる!ウォーター・ホイール!!)


 俺は最初に打ち消された魔法で再び攻撃。先ほどとは違ってタイコが無い今、この攻撃を止めることは出来ない。


「ギョッ……!!」


 仮面が真っ二つに割れる。そして、そのまま地面に落ちて……切られた両手共々、光の粒子となって消えていった。


「いや!こない……!?ってあれ?」


「明るくなった!皆、大丈夫!?」


「うん。終わったよ」


(ラストアタック……ご馳走様でした!)


「「え?」」


 幻覚によってラーナ・ボンゴの最後を見ることが出来ず戸惑っている二人。こいつの情報が少ない理由として最初は無差別破壊でいつの間にか倒されていた説を考えていたが、もしかしたら今回のように周りが幻覚であたふたしている間に、効かなかった味方が一人で倒してしまったとかもあるのかもしれない。


(で、どうしてアイツの指パッチン幻覚が効かなかったんだ?)


「この前の特訓で混乱の耐性を手に入れたの覚えている?」


(ああ。そういえばそうだったな)


「ウィードはどうして私が幻覚にかかっていないって分かったの?」


(これ無理。って俺の言葉に反応していたぞ?)


「あ、そうか」


(まあ……勝ったからどうでもいいけどな)


「へへ♪大勝利♪」


 ピースを見せて喜ぶドルチェ。戸惑っていた二人もドルチェのその様子を見て、ラーナ・ボンゴに勝ったことを喜び始めるのだった。

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