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183草

前回のあらすじ「古典的な罠に引っ掛かった」

―ヘルバ達が落下した直後「廃屋敷・地下通路」ココリス視点―


「どうしよう……」


 さっきまで開いていた落とし穴の穴を見ながら、落ちていった3人を心配するルチェ。最後にヘルバが種を何とかと言っていたが……何かしらの脱出手段を持っているのかもしれない。


「この罠……スイッチが存在しないな」


 そう一言だけ言ってから、ノートンが落とし穴の罠を調べた結果を私達に話し始めた。


「この通路内にそれらしいスイッチは見当たらなかった。つまり……これを誰かが遠隔操作したか、もしくはある一定の条件を満たした時だけ開くか……」


「重量……って訳じゃないよね。その前に私達が通っているし……」


「大人の俺達と比べても明らかに軽いだろうしな……失礼だけど、ヘルバやシスティナのあの2人は通常でいいんだよな?」


 通常……ヘルバはドリアードであり、システィナの体の一部にテラム・メデューサが混じっている……そんな彼女達が予想以上に重かったりしないかと遠回しに訊いてるのだろう。男性として直接そのようなことを訊くのはどうかと考えた末の言い回しだと理解する。


「通常よ。だけど……1つだけ」


「何か?」


「あの2人だけど……モンスター判定されるかも」


「ああ……」


 私のその言葉にノートンが納得する。


「あ……そうか。ヘルバは怪しいけど……システィナの蛇達は間違いなくアウトだもんね。でも、モカレートのマンドレイク達が先に反応しそうだけど?」


「まあ、ドルチェの言う通りなのよね……」


「それなら……マンドレイク達は引っ掛からない可能性がありますね」


 すると、前を見張っていたモカレートがマンドレイク達が罠に引っ掛からない可能性を指摘する。マンドレイク達はモンスターではあるが、その体は植物である。もしこの罠が生物に反応するものだとしたら……マンドレイク達は引っ掛からない可能性がある。


「でも、システィナが脱出する際にここを通ったんだよね? でも、引っ掛からなかった……そうなると遠隔?」


「うーーん……」


 確たる理由が思い付かず、この落とし穴がどのような条件で開くのか悩む私達。


(……あ、もしもし? 聞こえてる?)


 すると、そこにヘルバの声が脳内に響く。それはドルチェとモカレートにも聞こえているようで、私達3人は互いに顔を見合わせる。


(大丈夫? そこから脱出できそうな何かがあるかしら?)


(あ、『念話』なら連絡できるかと思ったけど……上手くいったみたいだね。横穴を見つけたから、そこから出れそうなんだけど……)


(他に案は無いのかしら?)


(もれなく2人が巻き添えになるか、技の反動で串刺しになるか……それらの可能性があるから難しいかな)


(分かったわ。それじゃあ……後で合流しましょう)


(りょーかい。あ、後……システィナの蛇達開放したからよろしく)


 そう言って、ヘルバからの『念話』が切れる。その後、心配していた皆にヘルバ達の今の状況を伝えていく。


「3人で進むのって危険じゃないのか?」


「あ、いや……大丈夫だと思いますよ? 特にヘルバのアビリティは俺達が思ってるよりヤバそうですから……」


「そうなのか?」


「ええ……何かボソッと言ってたんですけど……神の名を持つアビリティとか何とか……」


 ノートンからその話を聞いたヘルマが私達を見るので、ゆっくりと首を縦に振って肯定する。「そうか……それなら大丈夫……か」とヘルマが呟いたところで、私達は再び通路内を進むのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―ほぼ同時刻「落とし穴から続く横道」―


「これでよし!」


「連絡取れましたか?」


「うん! 念話でこちらの状況を伝えられたから、これで上は大丈夫だと思う。」


「後は私達がここから無事に脱出して、皆と合流出来るかどうかですよね……?」


「そういうことだね……」


 俺はそう返事をしつつ『ジャイアント・キャットテイル』をどんどん下に投げ入れ、穂で下を埋め尽くしていく。


「これ……いくらでも生み出せるんですか?」


「どうだろう? 限界まで使ったことが無いから分からないかな……」


 ステータス画面を覗きながら『種子生成』と『植物操作』のアビリティを使用しているのだが、特にMPが減っている様子は無い。体力が続く限りは生み出せるということだろうか……?


「まあ、そのことは後でいいのではないでしょうか。今はここから脱出することだけ考えましょう」


「それもそうだね」


 ミラ様の言葉に、俺はこの件については後にして、とにかくここから出るためにひたすら『ジャイアント・キャットテイル』で下を埋めていく。それからものの数分で横穴のある高さに辿り着くことが出来た。


「意外と広いですね」


 横穴は俺達3人が横に並べるほどに広く、高さもそこそこ高さがある。ただし……真っ暗である。


「チョット待ってね……はい。これ」


 俺は『種子生成』でホタル草を生み出し、それを自分の髪に纏っていく。これは光源確保以外にも、俺が目立つようにして、敵の攻撃を俺に誘導させる意味もある。自身が危険な状況にはなるが、中身オッサンとしては美少女は守らなければならないのである。


「ヘルバさん。こんな状況で言うことじゃないとは分かってるんですが……素敵ですね」


「ありがとう。それで私が灯りの替わりになって進むから、離れないように気を付けてね」


 今一度、2人に離れないように注意してから、俺が先頭を切って真っ黒な通路内を進む。

 

「そういえば……何であの落とし穴の灯りは付いていたんですかね?」


「システィナさんの言う通り……言われてみればおかしな話ですね」


「落とし穴と連動してるんじゃないかな? で、落ちて来た奴らがしっかりと罠にかかったかどうか見やすくするために灯りがあったとか」


「見やすい……つまり、私達が落ちた所を見ていた人物がいると?」


「いや。あそこから脱出する際に見つけたんだけど……遠見の能力がある魔道具があったんだよね。だから、私達が無事だと知られてるし、恐らくだけど刺客が向けられてるとも思うよ」


 横穴へと入る前に、一度落とし穴を『スキャン』で確認してみたら発見した魔道具であるのだが、すでに蔦を使って回収済みである。後で売り捌いて俺のお小遣いとなってもらう予定である。


「それ……大丈夫ですか?」


「うーーん……分からない。どんな手段を使うのか分からないからさ」


 先ほどの落とし穴のように見落としが無いように『スキャン』で通路内をくまなく見ていくのだが、特にこれといった罠を見つけられていない。そうなってくると直接襲って来るとは思うのだが……。


「アオーーン!!」


「ひっ!?」


 何かしらの遠吠えが通路内に響き渡ると、それを聞いたシスティナから小さな悲鳴が上がる。俺も臨戦態勢に入り、杖を前に構える。そして少しずつ前へと進んでいくと、対面からゆっくりと床を這いずるような音が複数響いてくる。


「シャー……!!」


 システィナの頭にいる4頭の蛇が威嚇音を上げる。俺達は緊張させながら、対面から来る何かと距離を詰めていく……すると、突然あちらの這いずる音が聞こえなくなってしまった。待ち構えているのかと思いながら、さらに先を進む。が……耳を澄ませてみると、唸り声や獣のような独特の呼吸音さえも聞こえなくなってしまっている。俺はまさかと思い、一気に前へと進むと、狼の石像が道を塞ぐように立っているのを見つけてしまった。それも1体ではなく4体……おそらく、俺達を襲おうとしたのはこいつらだろう。


「これって……」


「システィナの蛇達がやっつけてくれたみたい」


「この子達の石化って、こんな暗闇でも届いちゃうんですね」


「そうみたい。この子達が視認すると発動するらしいけど……」


 前世の知識を持つ俺からして、蛇の視覚というものはあまり良くない。だが、この蛇達の様子からしても人と同等の視力を持っている可能性がある。しかし、今回は俺達でも視認が出来ない位に真っ暗な通路だった。それなのにこの蛇達の石化が発動したということは、この蛇達の視覚は俺達以上ということになる。もし、俺の考え通りなら、それは蛇の持つ熱を感じるピット器官が視覚とリンクしており、サーモグラフィ画像のように狼達が見えていたかもしれない。しかし……そうなるとニット帽で蛇達の視覚を封じるという手段は意味を成していない可能性が出てくる。


「……この子達、私達が思う以上に頭がいい子達かもしれないね」


 俺はそう言って、1匹の蛇を撫でると、他の蛇達も甘えるかのように手に近付いてくる。そいつらにもかまってあげていると、暗くて分かりづらかったがシスティナの顔が赤くなっていることに気付く。


「な、なんか頭を撫でられているようでして……」


「ああ。ごめんね……システィナからも蛇を褒めてくれないかな? 思った以上にこの子達頑張ってくれているみたいだから」


「そうなんですか?」


 俺の話を聞いて今度はシスティナが蛇達を撫で始めると、俺が撫でる時よりもより嬉しそうな様子で甘え始める。そんな蛇達の努力を労ったところで、俺達は石化した狼達をそのまま放置して、さらに通路奥へと向かって進んでいく。


「私の防御と蛇達の防御不可の状態異常攻撃、それと何かあってもミラ様の『祝福』による回復……思った以上に強力なパーティーかも」


「そうかもしれないですね……というより、私はいらないかもしれません」


 そう言って、ミラ様が自分が足手まといじゃないかと思い落ち込み始める。確かに、ここまでミラ様に目立った活躍は無い。しかし、それはここまで順調に進んでいるだけであり、この先のことを考えると彼女の協力は必須である。


「ミラ様の力は必要。あまりあって欲しくないけど……もしかしたら、私が2人離れて戦うことがあるかもしれないから、その時はシスティナのことをお願いしてもいい?」


「……分かりました」


 起きるであろう不足の事態に備えて、ミラ様にシスティナのことを頼んでおく。『祝福』のアビリティには一部の病気やはまり病などを治癒する『浄化』以外にも、自身の周囲の人物を守る神秘の結界である『守護方陣』などがある。『祝福』に属するアビリティを同時発動出来ないのがネックらしいが、範囲を狭めれば威力が上がり、威力は弱くなるが広範囲に展開出来たりとかなり使い勝手のいいアビリティだとは個人的には思っている。もし、俺が敵に向かうような場合なった時には、ミラ様に2人を守るサイズの『守護方陣』を展開してもらえば、俺は2人に気にすることなく戦うことが出来る。


「それじゃあ……進むよ」


 そして、俺達は再度通路の奥に向かって再出発するのであった。

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