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16草

前回のあらすじ「再度、初心者向けダンジョンへ」

―その日の夜「アルヒの洞窟・11階層 セーフエリア」―


「うーん……それは本当ですかウィード?」


(ああ。間違いない……ここのモンスター増えてるぞ)


 あの後、13階から14階へと下りる階段の前まで調べて、今日の調査を終了した。今、ドルチェ達は設置したテントで休んでいて、俺は見張り役のラテさんと焚火を囲んだ状態で話をしている。


(今、収納内をステータス画面で確認してるんだけど……前回より3倍近くはあるな)


 収納はステータス画面で確認すると、ゲームみたいに同類の物は個数が表示される。お陰で前回と比べて比較するという事が出来たりする。


(アビリティの体内時間で前回と比較してもこれは多すぎるな)


「なるほど……モンスターの出現率が上がる……そんな話は私は聞いたことが無いですね……チョット、ギルドマスターに確認します」


 ラテさんが持っていた鞄から水晶みたいな物を取り出して、近くの岩壁の近くにある岩の上にそれを置く。すると、映写機のように岩壁に投影を始める。


(通信機か?)


「ええ。ギルドで管理されている遠隔通話が出来るささやきの水晶です。これ一つで遊んで暮らせる程の物ですよ」


(あっちだと、通信機の値段……例えるならラテさんの1ヶ月のお給料で買えるぞ)


「え?安すぎませんか?」


(まあ、そんな世界だからな……って、ギリムが映ったぞ)


 さっきまで砂嵐みたいな映像が映っていたが、はっきりとギリムを映し出した。


「もしもし……」


「もしもし、聞こえてますよラテ。それで調査の方はどうですか?」


 もしもし。って言うんだなと思いつつ、黙って二人の会話を聴く。


「はい。今、ウィードと話し合った結果、モンスターの個体数が増えてるのではないかという疑惑が出ました。それ以外は変わり無しかと」


「なるほど……実はこちらも同様の報告を鉄馬の轍から聞いてます。それでもう一グループの報告なんですが……」


「何か?」


「変化無しとのことです」


「変化無し?本当ですか?」


「ええ。ギルド職員も確認していて間違いないようです」


(うーん……となると、下に潜るほどに増加してるってことか?)


「もしかしたら……」


「ラテ。ウィードは何を言ってますか?」


「下に潜るほど増加してると」


 俺の意見をラテさんが替わりに代弁する。念話では会話に参加はできないようだ。


「なるほど……その可能性はありますね。でも、それだと下に原因が……?それがギガント・オーガの出現の理由……?」


 何か考え始めるギリム。この様子だと何も知らないのか……?


「ギルドマスターも分かりませんか?」


「……まさか」


「心当たりがあるんですね?それで?」


 ラテさんが若干前のめりになってギリムに訊く。


「……ラーナです」


「らーな?」


(……まさか、イグニスと同様の危険なモンスターである音属性のラーナか?)


「え?イグニスと同類?」


「ウィードには前に話してましたね。そのラーナです。正式名称はラーナ・ボンゴと呼ばれるモンスターです」


 ボンゴ?……今の今までお馴染みのモンスター名だったから予想が出来たのだが、これは分からない。


「それはどんなモンスターなんですか?」


「実は……詳しくは分からないんです。ただ、見えず、タイコの音だけ鳴らすモンスターだと……あ」


「何か?」


「両手が浮いていたとかも……」


 アウト!!何かそんなボスキャラが64にいたような気がするぞ!?いいのか!?そんな奴が出て来ていいのか!?


「それが原因と?」


「あくまで仮説ですね。ただ、モンスターの増加数の原因として、自分が聞いたことのある理由としてはこれです」


「それってほぼ決まりじゃないですか?」


「かもしれません」


 今回の原因はラーナ・ボンゴというモンスターであり、そいつの特徴はタイコの音と見える両手。


(強いのかな?)


「分かりません。一応、討伐された記録はあるそうなんですが……どうして倒したかは本人も分からないという報告でした」


 それって、闇雲に攻撃して弱点である目を潰したとかそういうオチだろうか?確かあのゲームならそれで倒せた気が……。


「とりあえず、鉄馬の轍にも伝えておきます。ラテはドルチェとココリスさんに伝えておいて下さい」


「はい」


「それでは、周囲に気を付けながら休息をしっかり取るように」


 ギリムはそう言って通信を切る。少しだけ静寂が訪れる……。


(音か……とりあえず、何が来てもいいように色々な薬を用意するか……)


「大群をけしかけるかもしれないので、回復薬も多めにお願いします」


(分かった……すまないがこれを俺の周囲に撒いてくれ)


 俺は収納からリリーさんからもらっていた肥料袋を取り出す。


(大量に作るには栄養がいるんでな)


「分かりました。彼女達を死なせないようにもしっかりやらないと」


(だな)


 ラテさんが俺の周囲に肥料を撒いていく。ラテさんは俺を危険視しているが、こういうところでは互いに協力的だ。まあ、お互いに疲れない程度の距離感で付き合えればいいかなと思う。


(……それとそろそろ時間だから。次のココリスと交代だな)


 俺の体内時間もあるが、近くに砂時計も置いてあってそれでも時間を確かめている。


「ですね。それでは私もしっかり休みますか……それと」


(うん?)


「ココリスさんに変な事……特に太らせるとかさせたら……!!」


(いや!?俺もあれについては注意してるからな!?というかココリスに少し恥じらいというのを教えてやってくれよ!!)


「彼女は冒険者としてそういう事には慣れてますから……私が言っても効果が無いんです!」


(って言っても……うん?ちょっと待て?)


「何ですか?」


(慣れてるってどういうことだ?状態異常にそんなのがあるのか?)


「ダンジョンによってはありますよ。少し偏ったダンジョンですが」


(変態ダンジョンか……)


「その認識であってますよ……とりあえず変な事をしないように……」


 俺にプレッシャーをかけつつテントに入っていくラテさん。今日は色々なダンジョンの情報を聞いたが、そんなのもあるのか……。そんな事を考えているとテントからココリスが出て来た。


「見張りご苦労様……ふぁ……」


 欠伸をしつつ、焚火の近くにやってくる。


「それで、私を太らせるとか何の話をしてるのよ?」


 あれ?聞いていたのか?それって起きていたことなるのだが……ゆっくり休めたのかちょっと心配だ。


(いや、お前は少し恥じらいを持て。とラテさんと意見があったところだ)


「何よそれ?」


(気にするな……それより、ここで起きている原因に繋がる情報をギリムが教えてくれたんだが、ラテさんから聞いたか?)


「ええ。ラーナ・ボンゴっていうモンスターが暴れているかもって」


(そうみたいだ。そして得られた情報も少ない)


「どんな戦闘方法か気になるわね」


 あのゲームなら手を飛ばして、主人公を叩いたり、掴んだり、体当たりしたり……。


(そんな攻撃をしないことを祈るか……)


「どうしたの?」


(いや。何でもない)


 その後ココリス、そして次に起きてきたドルチェの危険度が高まるであろう明日の探索の為に俺は、大量のポーション、それと新たな怪しい薬を大量に生産するのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―翌日「アルヒの洞窟 14階層」―


「ここから先にもしかしたらラーナがいるかもしれないのか……」


 ドルチェが杖を構えながら通路の先を見つめている。ここまでラーナ・ボンゴに似たそれらしいモンスターの姿は無かった。


「まあ、可能性の一つらしいからあまり気にし過ぎてもダメかもね」


「そうだね……私のナビゲーションを使ってみてもいいけど……」


「意味は無いわね。ルチェのそれでモンスターの詳しい種類とかは分からないでしょ?」


(……ふっふふ)


「潰します」


(いや!?笑っただけで抹殺しようとしないでよラテさん!?)


「変な笑いをしてる時点で怪しい」


(いや!?見えない相手が出て来るって聞いたから、調合のアビリティで新しい薬を作ったんだよ!!)


「どんな薬なの?」


(ふっふふ!聞いて驚け!!第六感薬(シックスセンス)だ!!)


「シックス……」


「センス?」


「何それ?」


 皆が聞いたことの無い、その言葉に疑問を浮かべているようだ。


(シックスセンスというのは直感って言われる物だ。例えばこの男、何か怪しい……。とか、この家……何かいる……。みたいに簡単に言えば感だな)


「感って……」


「ウィード?それでその薬の効果は何なの?シックスセンスの説明されても想像がつかないんだけど……?」


(そうだな。詳しく説明すると看破や鑑定の効果を上げる薬と思ってくれるといい)


「そうか!それを飲んで私がナビゲーションを使えばより詳しい情報を得られるかもしれないってことか」


(そうそう。これも一応、薬の強さごとに用意していて……ほい両手を前に出して)


 俺は収納からドルチェの両手に紫色の液体が特徴的な第六感薬を取り出す。


「これにも強さの段階を付けたの?」


(え?もちろん?もし……)


「もし?」


(もし、処理しきれないほどの情報が一気に頭に入ったら、廃人になる恐れがあるからな)


「……燃やしましょう」


 ラテさんが鞄からライターのようなものを取り出して火をつける。


(だ・か・ら!!強弱で5段階を用意したんだよ!!そうならないようにな!!)


 俺は必死に弁明をする。今までの俺が作った薬の効力から考えれば、このような事は予想できた。だから、事前にこのように薬の強さを5段階に分けたのだ。


(それだから、一番弱い物で少量を口に含んで使ってみてくれ)


「うん」


 そして、ドルチェは用意した薬を少しだけ含んだ後、ナビゲーションを使用するのだった。

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