152草
前回のあらすじ「ちなみに、発表会が終わるまで悪質貴族がずっと来ていた模様」
―発表会のあった日の夜「王都ボーデン・お城の近くにある建物の一室」―
「あ、あ……」
「ほら……ここ。感じるでしょ……?」
「う、うん……」
ドルチェに触れられた箇所が少しだけ熱くなり湿り気を帯びる。そんな長い間され続けていないのに、ここまでになるなんて思ってもいなかった。
「そうしたら! 今度はここ!」
「ん!? あ、そこは……!」
「気持ちいいでしょ?」
「あ、ダメ!」
俺の女の子になって初めての感覚。前世の男の時でも同じ刺激があったが、それよりも鋭く、俺の頭が快楽一色に染められてしまいそうで、僅かに残る理性が警鐘を鳴らし続けている。だから、ここで一旦休憩を……。
「ダメダメ! ほら……」
「あ、あ……! ダメ! お願い! これ以上は……!!」
俺は止めて欲しいと強く懇願する。しかし……振り向いた際に見えたドルチェの顔は妖艶な笑みをしており、瞳の中にピンク色のハートが見えた気がした。これは……そうだ。俺の反応を見て楽しくなってしまった……だから、もっと俺が乱れる姿を見たいという……。
「必殺の5連コンボいくよ!!」
「やめ……ひゃうん!?」
ドルチェが指先に力を加えた瞬間、俺の意識が一気に飛びそうになる。何とか持ちこたえたが、もはや口からの漏れる喘ぎ声は止まらない。
「ひゃ……やめ、おねが……ん!! ダメ……死んじゃう……!」
「あはは!! ヘルバかわいい……ねえ、もっとその顔を見せて!」
ドルチェの勢いが止まらない。そのまま両手で俺の腰を力強く掴み……。
「あ、あ……ああ!!」
目には涙が浮かび、口からは涎が垂れる。気持ち良すぎて何をされているのかが分からなくなってしまう。このままだと……。
「これで……最後!!」
「ああ~~!!!!」
怒涛の快楽によって、俺の頭がついに悲鳴を上げた。もう何も考えられない。このまま、この快楽に溺れて……。
「……はい。終わり! どうだったかな……私のマッサージは!」
「ドルチェ……やり過ぎ。ヘルバ、大丈夫……じゃないわね」
「あ……ひゃ……」
俺はまともに返事をせずに、そのまま意識を失ってしまった。そのまま朝まで……とはいかず、意識を失ってしまった俺を心配した皆に数分で起こされてしまった。『フォービスケッツ』の4人は先ほどまでいなかったはずだが……気絶している間に部屋に来てくれたようだ。
「大丈夫ですか……部屋に来たら、ベットで横たわっているヘルバさんを囲んで2人が大慌てしていたので、何事かと思ったんですが……というより……」
ビスコッティが何か口にしようとするのだが、言い淀んで何も言わない。クロッカとアマレッティも同じような状況であり、その頬が若干赤くなっていた。
「服が乱れて、あへった表情だったけど、ドルチェとやったの?」
ガレットのその一言で、ぼんやりとした意識のまま、着ている衣服を見ると、キャミソールの紐がずれており肩が丸出し、ショートパンツも少しだけ脱げて中のショーツが少し見えてしまっている。
「だから! 私はマッサージしただけだよ!」
「如何わしいマッサージ……ですよね?」
「違うから! ただ肩を揉んだり、腰を揉んだり……」
「ヘルバの大きな胸、そして慎ましいお尻に柔らかそうな太もも……そこも揉みしだいたんですよね! だから、あんな大きな喘ぎ声も……!」
「クロッカ!? 違う! 本当違うから! 確かに触ったよ? でも、そんないやらしいものじゃなくて……ねえ、ヘルバ?」
「私……(あんな凄いマッサージが)初めてだった」
あの凄いマッサージに、俺はそう言うしか無かった。この体がまさかここまで敏感になっていたとは……。あの乱れっぷりを思い出すと恥ずかしくて堪らない。両手で頬に触れると、少し熱を持っている感じがする。
「や、やっぱり……ヤったんですね!? まだ、年端のいかないヘルバを!? 私にはアレだけ注意してるのに!」
「クロッカ違うから! 本当にヤってないから!! 今のヘルバの言葉には語弊があるから!」
「(汗で)汚れちゃった……」
「ヘルバ!?」
「ドルチェさん!?」
この後すぐに、ココリスが俺の頬を軽く叩いて、完全に起こすことに成功。そこから俺がちゃんと説明した事で、この件は収まったのであった。
「全く……ドルチェもこれに懲りたら、ちゃんと止めてあげなさいよ?」
「いや~……あんなに気持ちよさそうにしてたから……つい」
「気持ち良かったけど……それで脳が焼き切れそうになって、死ぬかと思ったけど?」
俺はドルチェを睨んだまま、ココリスが用意してくれたお茶を飲みつつ答える。気持ち良かったのは認めるが、危うく腹上死になりそうであった。そんな恥ずかしい死に方は御免である。
どうしてこうなったかと言うと、チョットしたハプニングがあったが、無事に発表会が終わり自室へと帰って来た俺は、服装も堅苦しいドレス姿からキャミソールとショートパンツに着替え、そのままふかふかのベットにダイブして日中の精神的な疲れを癒していた。すると少しの間、寝落ちしていたらしく、気が付いた時にはドルチェが俺の足をマッサージしていた。『起こしちゃってゴメンね。疲れていたみたいだからさ……』と言われ、別に不快では無かったのでそのまま続けてもらったのだが……ドルチェが俺の反応を見るうちにタガが外れてしまったとういうのが経緯である。
「あはは……それより発表会はどうだった? 私達、他の件で行けなかったからさ……」
「大きな問題は無かったかな……」
「大きな……ってことは、何か小さなトラブルはあったんですか?」
「それはアスラ様が対処してくれたんだけど……」
俺は発表会でアスラ様が対処してくれた貴族の事、そしてその後に、その貴族に似た性格の連中も来た事も……。
「はあ~……やっぱり反対派が来てたわね……。まあ、流石にそこで騒ぎを起こすことはしなかったようだけど」
「もしかして、アレはそのための騒ぎだったのかな……」
「アレって……何かあったの?」
「王城内の空き部屋でボヤ騒ぎがあったのよ。誰がやったのか調査が入ったんだけど……犯人はまだ捕まっていないわ」
その話に、俺と『フォービスケッツ』の面々は驚いた。そのような事件があれば、兵の増加や移動制限など色々騒がしくなっていたはずである。それなのに、そのような騒ぎが一切見られなかったのだ。だからこそ俺達5人は驚いている。
「建国祭の期間中にそんな事が起きたなんて、王家の権威に関わる話……そう簡単に大騒ぎしないわ」
「でも……それが、今回の件とどう関わるの?」
「あなたの味方が来れないようにした……そう捉えることも出来るのよ。ただの事故の可能性もあるかもしれないけど……」
「私が見ようか? 『フリーズスキャールヴ』と『スキャン』で色々分かるかも……」
「いいえ。むしろ、その空き部屋には来ないで。あなたがそこに来たことで『証拠隠滅しに来たぞ!』とか言わかねないわ」
「それもそうか……ちなみにその部屋どこ? 私がそこを偶然にも通る可能性とかあるのなら知っておきたいんだけど……」
「来賓客が宿泊しているフロアよ。だから、誰かに誘われてそこに行くような事があれば断るように……いいわね?」
「分かった……けど」
そんな所に行く予定は今の所は無い。が、レッシュ帝国の皇帝一行からお誘いが来る可能性は全くのゼロでは無い。そもそも、今回の発表会では他国のお偉いさんとも顔を合わせたりしている。そんな人から『来い』と言われたら、特別な立場ではない俺が断るのは難しいかもしれない。
「他国のお偉いさんからの誘いがあった時『アレスター王に一度話を通して欲しい』って言っていいかな? 立場上、私って断れるような立場じゃないから……」
「それなら私から話をしておくよ。まあ……明日は大丈夫だと思うけど」
その言葉にクロッカとアマレッティの2人が体を強張らせる。明日は俺の自由時間という名の『王子様達の子守り』である。王子様達を連れて歩くとなると……気軽には過ごせないだろう。一方で、俺とクロッカ、アマレッテイの3人が護衛となっているが、そんな危険な事をあの王様がするとは思えない。だから、遠くから王家直属の部隊が見守っているはず……それは即ち、俺の護衛にも繋がっている。
「そうだね」
俺自身の身の安全のためにも、明日の子守りはアリなのかもしれない。
「さて、遅刻したらいけないから……寝る準備しないと……」
「え? ヘルバ……そのまま寝るつもりなの?」
「な訳ない。誰のせいで汗を掻いたと思ってるの?」
俺がそう言うと、ドルチェは俺から目線を外した。とりあえず、シャワーを浴びて身体をスッキリさせてから床に就きたい。
「あ、それなら大浴場はどうですか? 私達、そこへ行く途中で寄ったところなんですよ」
「いいわね。私達もまだだったし……」
「私はパス。皆だけで……」
『ガシッ!』と擬音が聞こえるくらいに強く掴まれる両腕。掴んだ相手はクロッカとアマレッティの2人だった。
「ドルチェさんがやった今、私がヤっても問題無いですよね……?」
「旦那もそろそろ女の付き合いに慣れないとね……?」
「私、中身は中年男性だからね!? そんな奴に裸を見られても……そもそもクロッカ。私、18禁になるような事はされてないからね!?」
「旦那……ジュウハッキンって意味が分かんないからな? それでクロッカ……私も混ぜろよ?」
「2人とも!?」
2人に引きずられ、そのまま部屋の外へと連れ去られていく。他の4人に助けを求めるが、4人共渋い表情を浮かべる。
「ヘルバ……そろそろ慣れるべきよ。冒険者を続けるなら……尚更ね」
ココリスはそう言って部屋の扉を開ける。そして、そのまま俺は部屋から大浴場へと連行されるのであった。
その後、初めての女風呂だが……皆の裸を直視しないようにとか、クロッカとアマレッテイにあっちこっち揉まれたりとかされて、ハーレム天国を味わう事は出来なかったのであった。