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12草

前回のあらすじ「特訓!」

―翌朝「アルヒの洞窟」―


 俺達は朝早く宿を出て、バリスリーから徒歩で1時間程度の所にあるアルヒの洞窟前にやって来た。洞窟の入り口周りには出店があり、武器や防具、携帯食料にポーション関係とこれから冒険する人用に商いをしている人達もいる。


(賑わってるな)


「バリスリーから一番近いダンジョンだからね。それとここの洞窟は初心者にも優しいダンジョンなの」


(優しい?)


「全15層から成るダンジョンなんだけど、出て来るのはゴブリンやウルフにラージバットぐらいで強敵となるモンスターはいないの。それにどのモンスターも弱いからよっぽど立ち回りが下手じゃなければ死ぬことは無いわ」


(そうなのか……でも、ここ賑わい過ぎてないか?ここまで賑わってると中のモンスターを狩り尽くされていないのか?)


「それがダンジョンの不思議なところなんだよね?」


「そうね」


(どういうこと?)


「一定の間隔でモンスターが沸いてくるのよ。だから、ルチェのように周囲を調べられるアビリティを持っている人からすると突然、現れたって感じらしいわ。しかも面白いことに、それを実際に目撃した人はいないそうよ」


(へえー……じゃあ、対峙しないとどんどん増えるのか?)


「そうもならないわ。何故か常に一定の数を維持しようとし続けるの。それとダンジョンボスも変わっていてね。ボスってダンジョンの一番奥にいて部屋になっているの。そしてボスが倒されると魔法陣が現れて、それを使ってダンジョンから出るんだけど、すぐに復活して次の冒険者と戦闘をするの」


(どこのゲームだよ……)


 本当にゲームだ。ダンジョンのモンスターもボスも常に現れ続けるなんて、ダンジョンに意思があったとして、何の得があるのだろうか……全く持って分からない。


「後は……中に入って実際に見てもらった方がいいわね」


 ココリスがそう言って、前に指を差す方向にはアルヒの洞窟の入り口が見える。洞窟は特に人の手は加わっておらず、岩肌がそのままになっていた。しかし、その前には小さな小屋と見張りで鎧を着た男性2人がいる。


「ここで受付するの。こうしないと、何かあった際に対応できないからね」


(至れり尽くせりだな……儲けはギルドか?)


「ええ。そうよ」


 ここまでするってことは、それだけの儲けがあるのだろう。この世界でモンスターから取れる魔石や素材がどれほど重宝される物かが良く分かる。すると入り口前の小屋に到着して、そこでギルド証と保証金を支払って中へと入っていく……あ。こっちを驚いた目で職員の人が見てる。俺はライター程度の火を出して、俺が従魔というのをアピールする。


「……草……草って火を出せるんだっけ?」


「一応、耐火性ありよ」


「……それって本当に草ですか?」


「草なのよ……うん」


 そこは草だ!とハッキリ言って欲しいのだが……。とりあえず、そんなやり取りをしつつ、アルヒの洞窟へと入った。


(天然の洞窟って感じだな……この松明ってギルドが設置してるのか?)


 ふと、壁面に等間隔に置いてある松明が目に入る。ゲームなら新設設計で常時付きっぱなしだが、ここはリアルなのだ。そんな常時付いているはずが無い。


「これはダンジョンが照らしてるの。ようは、ダンジョンの特性かな」


(本当に至れり尽くせりだな……どうなってるのこれ?)


「はっきりとした事は分かっていないのだけど……ある説だとダンジョンは生き物と考えている学者もいるそうよ。ダンジョンはお宝とモンスターを使って人を呼び寄せ、その呼び寄せた者を餌としている説。そう考えれば同じようなダンジョンはあっても、全く同じダンジョンが無いのは、ダンジョンごとの性格が関係するからと説明付けされるからね」


「他にも力場が集中している場所だからとか、神様の気まぐれとか……ただ、そのどれもが決定的な証拠が無いみたいなんだけどね」


(うーーん。そう考えると不思議な場所だな。ダンジョンって)


「ふふ。そうね……っとお喋りはここまでにしましょうか」


 ココリスが話を制止させる。目の前には5匹のゴブリンの集団が今にも襲い掛かろうとしている。


「それじゃあ……行くわよ!!」


(おーーう!)


 そして、俺達はダンジョンの中へと潜っていくのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―3時間後「アルヒの洞窟」11階層―


「……辺りに敵はいなそうね。ここで一回休みましょう」


 ココリスとドルチェの二人が適当な石の上に座る。俺も魔力回復のために地面に置いてもらう。


(おう!?)


 あの感覚が久しぶりにくる。ステータス画面を見ると、あのLvが上がっていた。そう言えば薬草採取の時は一度も地面に置かれなかったからな……もしかして、置かれていたらLvが上がったのだろうか?


「どうしたの?変な声を出てたけど?」


(ああ。俺のステータスに変な項目があってな……倒したモンスターの数がカウントされる項目があるんだ)


「カウントするだけ?」


(そうなんだよな……謎の項目で何に使用できるのか不明なんだよな……まあ、それはいいとして、ここまで順調なのか?)


 イマイチ分からないステータスはほっといて、あれからダンジョンに入って3時間程、経過している。


「連携を確認しながら来てるから……うん。順調だと思うよ。むしろ解体する必要が無いから早いかも」


「そうね。それでどうかしら?初めてのダンジョンは?」


(さいっこう!!こんな体験が出来るとは……長生きしてみるもんだ)


 ダンジョンでの戦闘は森や草原などの戦闘と違って、注意する所がいくつかある。

 

 1つは地属性の魔法はあまり使用しない事、地形に影響を与えやすい地属性魔法を使うと、崩落などの原因になるからだ。他の魔法に関しては、とりあえず問題は無いが周囲に他のパーティがいないかとか確認が必要になる。

 

 2つ目は戦う場所である。このダンジョンは基本的に一本道であり、多少、横に逸れる道があってもすぐに行き止まりが視認できるような作りになっている。さらに場所によっては広い空間だったり、他の所より細い道があったりして、もし大勢を相手にするなら細い道に誘導して常に1,2体と戦闘する状況を作ったり、広間だったら魔法で一網打尽という手があったりと教えてもらった。


 ちなみに戦闘の詳細は省く。ここのモンスターはカロンの森でレベル上げしていた俺や、そもそも高ランクの冒険者である二人にとってはかなり弱いモンスターため、ドラマ的要素も無く、RPGで見られるような単調なレベリングになってしまった。


「あなた……私達より年下でしょ?転生前を入れても」


(人間としては長生きだからな?)


 そこは長寿であるエルフとは比較してもらっては困る。


「今は草でしょ?」


(そこをツッコむなよ……それで、この先はどうなっているんだ?)


「同じよ。後4階下りたらボス部屋があって、それを討伐すれば終了。ここは宝物とかも無いから、ひたすら進んでモンスターを倒す。シンプルで単純なダンジョンよ」


(そうか。そういえば、倒したボスも俺が収納すればいいのか?)


「そうだね。それにかなり高額で買い取ってくれるかも。全身なんて珍しい……というより運ぶ人はいなかったかな……」


(……そういえば)


「うん?」


(ここのボスって……どんな奴なんだ?俺知らされていないんだけど?) 


「……ううん?」


 ドルチェが俺の言葉を聞いて返答に詰まった。


(……ココリス?)


「……えーと」


 ココリスにも訊いてみると、あれ?言わなかったっけ?というような感じだ。


(おいーー!伝えてくれよ!俺にも心の準備ってものがあるんだからな!!)


「ごめんごめん!それで今になっちゃうけど、ボスの説明するわね!」


(おう!それでボスはどんな奴なんだ?)


「ここのボスはオーガよ。私達の倍くらいの大きさで素早くて力強いから接近戦で相手するのは止めといた方がいいわ。それだから私が奴の攻撃を引き受けるから、ウィードとルチェの二人が仕留めてちょうだい」


(分かった。火と水のどちらでもいいのか?)


「ええ。問題無いわよ。」


 オーガか……つまり鬼だよな?漫画やゲームだと中級や上級クラスのモンスター扱いで、初級のダンジョンに出るようなイメージが無いのだが……前世の事を思い返していると、ふと気になる事があったので訊いてみる。


(なあ、鬼に炒った豆を投げるって有効なのか?)


「え!?有効……目潰しにはなるんじゃないかしら?そもそも投げるなら石の方がまだマシよ?」


(そうか……前世では炒った豆が有効という逸話があったんだけど……)


「そもそも何で豆が有効なのかが知りたいわ」


(ああ……オーガやゴブリンのような者を魔物ってあっちでは呼んだりするんだが、で、魔物を消滅させる…魔を滅する……魔滅(まめつ)……で、豆って感じだな。ようは縁起担ぎだ。で、豆を炒る理由は……撃ち取るって意味の射るからかけているんだ)


「ああ!何となく分かったかも!赤子に銀のスプーン的なノリなんだね!」


 あれ?そんなことわざ……あっちの世界にもあった気が……?あれ?その赤子は毒を盛られる予定でもあるのかな?とそんな他愛ない話をしながら、ゆったりと休憩を取るのだった。



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― 新着の感想 ―
【赤子に銀のスプーン】どこかで見聞きしたな……と、調べちゃいました。 西洋のことわざ『銀のスプーンをくわえて生まれた赤子は幸せになれる』からなんですね。 誕生祝いで銀のスプーンを御守りとして贈る貴族の…
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