128草
前回のあらすじ「清廉潔白?を継続中のヘルバさん」
―その日の午後「リゾート地ガルシア・高級リゾート地 小屋」―
「……あなた達、何してるの?」
その声で、床に仰向けに倒れていた俺の意識が少しずつ覚醒する。誰がやって来たのか確認するために首を動かして、声のした方へと顔を向ける。
「あ、ああ……ココリスか。気にしないで……喉乾いてたら、そこの机の上にある美味しいドリンクを飲んでいいからね……」
俺は机の上にある、ビーカーの中でゴボゴボと泡を立て、ケミカル色をした美味しい飲み物をココリスに勧める。
「いやよ。そうなった理由の原因はこれでしょう? 一体これ何なのよ?」
「美味しい美味しい飲み物だよ……『万能薬w』という名前だけど……」
「やっぱりこれが原因じゃないのよ。で、モカレート。この『万能薬w』って『万能薬www』と何が違うのかしら?」
俺だと『万能薬w』を勧められて話が進まないと判断したココリスが、今度は俺と同じように床に倒れているモカレートに『万能薬w』の事を尋ねる。
「そうですね……ぜひ、飲んでみて下さい……亡くなったはずの祖父と祖母に会えますよ……」
「い・や・よ!! あの世に逝く飲み物なんてただの毒じゃないのよ!」
「はは……そうですね。いや、ここまで不味い……いや、不快にさせる薬なんて初めてですよ……まさか、『www』の数が少ないと効果の優劣ではなく……飲んだ際の不快感の違いが変わるなんて……」
「私も驚いた……『www』でも不味すぎると思ってたのに、まさかそれ以上に不味いなんて……しかも……うっ!?」
すると、俺のお腹の辺りが張る感じがしたのでお腹に手を当てる。すると、途端に俺のお腹が膨らみ始める。着ていた衣服をずらし、俺の大きな胸より前に突き出るお腹。最後には着ていた衣服から露になってしまった。鏡で今の俺の姿を見たら妊娠している女の子に見えるのだろう。
「……身体に変化も起こすのかしら?」
「ランダムみたいだけどね……ほら」
俺は倒れた状態でモカレートに指差す。モカレートが自分の胸に手を当てており、その程良い大きさだった胸がみるみるうちに大きくなっていく。モカレートの魔女風ワンピースの胸の辺りから胸肉があふれ、その服をびりびりに破こうとしている。
「このままじゃ……いけませんね」
倒れていたモカレートが体を起こして急いで服を脱ぎ始める。ワンピースを脱ぎ、中に着ていたインナーを脱ぎ、そして必死に胸の膨脹を抑えていたブラジャーを外して、その2つの特大スイカが露になる。他の箇所には変化が起きていないので、特大のバストと揉みしだきたくなるお尻、そして、その2つと比較して圧倒的に細いウェスト……その奇妙なグラマラス姿に俺の心臓がドキドキと強く音を立てる。
「ランダムで体のどこかが膨らむのね」
「はい。さっきは顔がパンパンになりましたね……ヘルバなんて足がオークのようになってましたよ」
「そうそう……だから、モンスターとの戦闘中にこれを飲んだら、悲惨な事にしかならないんだよね。少量しか飲んでないから、しばらくすれば戻るけど……」
俺はそう言って、ゆっくり目を瞑る。少量のため、トイレに駆け込んで吐き続けるというのは無いのだが、とてつもなく気持ち悪いのは変わらない。『万能薬w』の毒気が抜けるまで、そっとしておいてほしい……。
「って事で、これで5回目……もう限界だから……休ませて……」
「分かったわ……晩御飯はいる?」
「その時にまでは……戻しておきます」
「分かったわ」
ココリスはそう言って小屋から出ていく。それを見送った俺とモカレートは、その場から一歩も動かずにゆっくり休む。大きなお腹を出しっぱなしだが……まあ、大丈夫だろう。
そこで、俺は先ほどまでの一連の実験の様子を思い返す。今回の実験は『万能薬www』の強化版と劣化版の作成である。木魔法に含まれる『調合』と『スキャン』の2つのアビリティを使用して、調べてみたが強化版の必要な素材が分からなかった。しかし、劣化版の必要な素材は出たので、その通りに調合してみて、適当な薬を飲んで状態異常になった状態で、『万能薬w』や『万能薬ww』を飲んで確かめていた……。
『万能薬ww』は『万能薬www』に魚の生臭さと強烈な酸味、そして激辛の3つを加えた物になっており、最初に口に含んだ時には、すぐさま俺は吐いてしまった。それを我慢して飲めば、そこからは『万能薬www』と同じ効果が見込める。
そして……問題なのは『万能薬w』である。『万能薬ww』に鼻に付く臭い、そしてタイヤ味が加わった物であり、もはや人が飲用してはいけない危険物になっている。さらに、飲んだ後には体の一部が酷く膨張するという変な副作用付きである。
そんな害悪な物質を検証のために5回ずつ……計10回飲んだのだ。もう身も心も限界である……。
「『万能薬w』と『万能薬ww』は販売不可……個人で使う場合は自己責任……で、レポート纏めていいかな?」
「はい……いいと思います」
近くにあったタオルで胸を隠しながら答えるモカレート。しかし色々隠せておらず、元男性からすれば『誘ってます?』と思いたくなる姿である。タオルから見える下乳……いいですな……。
「……気になります?」
「元男としてはぜひ触りたい。ただ襲う気力が無いけどね……あ、それと大きな胸になってみてどう?」
「これは羨ましくありませんね……」
そう言って、モカレートは壁にもたれて休み始める。モカレートの先ほどの発言……どうやら俺が凝視していたのがバレていたみたいだ。この調子だと、ココリスにも気づかれていたかもしれない……が、ココリスもあの胸に呆気に取られていたのだ。男女問わずに注視するのは仕方ないだろう。俺は心の中でそう言い訳をしながら床の上で休息するのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―その日の夜「リゾート地ガルシア・高級リゾート地 コテージのリビング」―
「今日の料理がとても美味しく感じるよ……」
「ええ……生きているって素晴らしいですね……」
「そんなに酷い目にあってたんですね……」
何かを悟りながら食事をする俺とモカレートの姿を見て、対面で食事をしていたビスコッティが困惑した顔でこちらを見ている。
「今までの中で一番の強敵でした」
「ビスコッティも試してみる? データ収集のためにも協力してくれるとありがたいな……」
「そんな、どす黒さ満載な笑顔で頼まれて、『やります!』って言う人いると思いますか?」
「後はここに高額な報酬を付け足せば……やる人はいると思うよ。金に困っている人の弱みに付け込んで……って、何で変な目で私を見るのかな?」
食事をしていた皆の手が止まっており、そして視線が全て俺の方を向いている。しかも、まるで危険な何かを見るような目で。
「ヘルバの旦那……まさか、前世でやってないよな?」
「ないよ。でも……そんな事をする奴らもいたのは事実かな……だからこそ」
「だから?」
「……何でもない」
俺はそう言って、今日の晩御飯に出されていたサラダに手を付ける。先ほどのふざけた姿から、いきなりしんみりとなった事で、何か変な地雷を踏んだと思った皆がそこで話を変える。俺もそれ以上、話すつもりは無いので、その次の話題を静かに訊くのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
―同時刻「???」アフロディーテ様視点―
「ふーーん……」
私はそこであの元男の今の様子を見るのを止める。元気で何より……しかし、少しばかり弊害が起きてしまったか。椅子の背もたれに体を預け、ここまでの彼女の生活を思い返す……前世の記憶は消してあげた方が、彼女のために良かったのだろうか? それとも、知識のある植物のままにした方が良かったのだろうか? いや、彼女があの地から連れ出された段階でその考えは破棄したはずである。それに本来はあそこで……。
「失礼します。アフロディーテ様? 何か難しい顔をされてますがどうかされましたか?」
すると、そこに彼女が使用しているフリーズスキャールヴのアナウンス担当している部下が書類を持って現れる。
「彼の様子を見ていたわ。いえ……彼女かしら」
「……アフロディーテ様。ご質問よろしいでしょうか?」
「何かしら?」
「何であの男をこの世界に転生させたんですか?」
「あら? あの男の事を調べたのね……悪い子」
『ふふ……』と笑う私を見て、少しだけ強張る部下。お仕置きされると思ったのだろうか? でも、この子はそのお仕置きすると『好き好き……もっと……!』って言ってるのだから、強張る必要な無いのだとは思うのだけど……。
私がそう思っていると、彼女が一度咳ばらいをしてから自分の意見を話していく。
「前世のあの男は平凡。特出した能力も無いあの男を選ぶなら、地球で多大なる功績を残した偉人と呼ばれるような人物をお呼びしたほうが……」
「当たり前よ? だって……彼女には『この世界を楽しんでもらう』のが目的なのだから。ドリアードという種族の繁殖や、文明や文化の発展はおまけ程度にやってもらえればいいだけよ」
「え?」
「あなたの知らない事があるってこと……そして、このことは彼女には話せない秘密……。だから、話しちゃダメよ?」
「話しません。後が怖そうですし……」
「……そう思ってるのかしら?」
私は椅子から立ち上がって、部下の前までやって来て……彼女の女性としての大切な場所に手を当てる。モデル体型である彼女の体が少しだけ震え、さらに息が早くなっていく。その姿に、私も少し興奮を覚える。今日はこの体をどんな風にしてあげようか……それとも、この綺麗な体のまま徹底的に啼かせるのもそそる物がある。私はその興奮した感情を発散させるかのように、今度は彼女の口に大人のキスをする。
「あ、あふりゅ……でぃさ…ま?」
キスしながら何かを訴える部下。キスを止めてその顔を確認すると、既に出来上がっていた。
「さて……今日のお仕事はここまで。たっぷり可愛がってあげる……!」
「はい……♪」
私は悩みの種である彼女の問題をほっぽりだして、一時の秘め事にのめり込むのであった。