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123草

前回のあらすじ「実はココリスはムッツリ」

―「リゾート地ガルシア・南の路地」―


「ココリスに代わったね」


「うん」


 男達の後を付けて数分後、最初のモカレート達が横道へと逸れた。代わって、今度はココリスが男達のすぐ後ろを歩き始める。


「気付いていない……よね」


「恐らくはね。そんな素振りを見せていないし……でも、その気構えでいた方がいいかも」


 相手はボルトロス神聖国の上級兵である。それだけの実力も持ち合わせている可能性がある。それでいて、デレルシア神の名の元に何をしても許されるという頭に草の生えた連中……。


「面倒ごとになる前に、さっさと捕まえたい……」


「ヘルバの気持ちは分かるよ。でも……ここで騒ぎを起こしたら、無関係な市民に被害が及ぶかもしれないから、ここは抑えて」


「分かってる」


 ドルチェの言葉に、追跡中の男共の横を通り過ぎる親子に目が行く。間違った行動をすれば、この親子のように普通の生活を送っている人達の人生を狂わせてしまう……自分達とは全く縁の無い人達だが、そんなことはしたくない。


「町からは出ないよね?」


「うーーん……恐らくはね。今ってお昼頃でしょう? 今、この町を出発したとしても、次の町に付く前に夜になっちゃうから、それは無いかな。それに……今はビスコッティ達が町の外で怪しいのが無いのかを調べているから、仮に野宿しているとしたらその痕跡が見つかっちゃうかもね」


「そうなると……面倒だね」


 あの男達が野宿していたら、どれだけ楽だっただろう。外だったら周囲の人達の事を考えずに、全力で魔法をぶっ放せるのに……。そう思いながら、男達の後を付いていく……が、すぐに男達はある建物の中に入ってしまった。


「意外に早く終わりましたね」


 後ろから声を掛けられたので振り向くと、モカレートとマンドレイク達が……。


「……確かにこれはバレないね」


 後ろにいたのは、獣化薬を飲んで、耳と尻尾の形からして恐らく馬の獣人となったモカレートと、フードを被った子供……ではなく、フードの中にいるのはマンドレイク達で、肩車なんかしてどうにか高さを稼いでいるのだろう。


「変装しましたけど……意味が無かったですね」


「しょうがないよ。どれだけ移動するか分からなかったし……」


「……」


 ドルチェとモカレートの2人が話をしている中、俺はモカレートの変化した姿に釘付けになる。馬の獣人となった事で、元々お尻が大きかったのに、さらなるボリュームが増え、さらに太ももも太くなっている。そのある程度引き締まったお尻と太ももに、ムチムチとしたお肉……枕にしたらほど良い低反発でぐっすり眠れるだろう。それと……変化する前と同じ魔女を思わせるワンピースのような服装なのだが、おかげで、その辺りの箇所が引っ張られており、いつ破けるのかと期待してしまう。


「ヘルバ。この後だけど……」


「う、うん。まずはあの建物が何なのかを調べるんだよね? その後は待機?」


「そうですね」


「調べる必要は無いわよ。ただの宿屋だったから」


 すると、ココリスが俺達の横を通り過ぎながら、今の建物が何だったのかを教えてくれる。そのまま、俺達から離れていくココリス。その姿を見て、俺とドルチェはモカレート達と別れ、横道などを使って遠回りしつつ、ココリスとモカレート達に再度合流する。その頃にはモカレートの獣化も治っていた。


「(衣服が破れて、下着が見えれば良かったのに……)」


「何か言ったヘルバ?」


「何でもないよ。それで、あの建物って宿屋でいいんだよね?」


「ええ。確認したけど、一般の旅人達が使う普通の宿屋だったわ」


「それは残念。仮屋で悪いお仲間で一杯の建物だったら、問答無用で建物ごと吹き飛ばせるのに……」


「そこには同意ね。で、どうしようかしら……」


 そこで皆して考える。まずは男達が宿から出てこないかを見張る人、男達の今までの行動を洗う人などの役割分担、それとどのタイミングで男達を捕えるか……。


「とりあえずビスコッティ達を呼ばないと……」


「そうしたら……私はあいつらを見張ってようかな。フリーズスキャールヴで察知できるし、ヴァ―ラスキャールヴのおかげで夏の真昼間でも快適空間で見張れるし……襲われたら、眠らせるし」


「それは……確かにいいとは思うんだけど……護衛対象なのよね」


「流石に1人はね……もう1人、一緒に見張り回った方がいいね」


「なら、私……というより私達も見張りに回りますね。この町の地理とかまだ詳しくないですから。ヘルバもいいですかね?」


「もちろん」


「なら……決まりね」


 現段階で一番怪しい彼らを見張るため、俺とモカレートにマンドレイク達がこのまま見張りを続け、ドルチェとココリスはビスコッティ達に応援を求めるために、この場を離れていった。その後、少しだけ移動して、その宿屋の玄関が見張れる場所からこっそり見張りを開始する。


「マーちゃんとんーちゃん、それとドーちゃんは裏口を見張ってくださいね」


 モカレートから指示を貰った3人が敬礼して、裏口を見張るために移動する。


「んーちゃん……大丈夫なの?」


「大丈夫ですよ……いざとなればマーちゃんが叩き起こして、仕事をさせますから」


「あ、はい。そんな感じなのね……」


 もう、んーちゃんがさぼる前提での配置だったことに苦笑する俺。後は、男達が何の行動もせずに、応援が先に来ることを願うばかりである。


「とりあえず……怪しい行動をするまでは捕えないだよね」


「ですね。怪しいといえば怪しいんですが……今の段階では、何も悪いことはしていないですからね」


「推定有罪は流石にね……」


 そんな事がまかり通ってしまうなら、俺はこの国から逃げるだろう。前世も顔と頭のせいで、電車にいた女性から……。


「ヘルバさん? 何か……落ち込んでませんか?」


「気にしないで……結局、この世って見た目が全てなんだなって、再度痛感しただけだから……」


「今の話の流れから、どうしてそうなるんですか!?」


 とてもビックリした表情でツッコミを入れるモカレート。モカレートの言う通りで、単に俺が勝手に傷付いただけなので、このツッコミは当然だろう。


「それより……モカレートに訊きたいことがあったんだけど」


「さっきの発言の真意が凄く気になるんですけど……」


「気にしない気にしない……それで、モンスターを呼ぶ方法って知ってる?」


「知ってるかと言われれば……ありますね。ヴェントゥス・グリフォン自体を呼ぶ方法は知らないですけど」


「それでいいよ。で、例えばどんな方法?」


「1つはシンプルに餌です。対象のモンスターの餌となる物……時には魔石を一ヶ所に集めて誘き寄せる方法ですね。これが一番簡単な方法です。その次にアビリティの使用……いくつかのアビリティには自分の周りにモンスターを集めるというアビリティがあるそうですよ」


「それ……かなり危険だよね」


 自分の周りにモンスターを集める……扱いを間違えれば、自分が集めたモンスターの餌となるだろう。それ以外にも……これを危険なアビリティだと周囲に言われて、差別の対象になるかもしれない。そう考えると、かなりデメリットのあるアビリティだろう。


「ですね。一部偏見もあるアビリティですが……それでも、重宝されているアビリティですよ。モンスターの大移動であるスタンピードでは特に真価を発揮して、ストラティオに騎乗した状態でアビリティを発動させて、一部のモンスター達の進行を変えることで、モンスター達の戦力を大幅に下げられますから」


「戦闘が嫌な人からしたら、ただの呪いだよ。それで、一定のモンスターだけを呼べるアビリティってある?」


「分かりません。あったとしたら……ヘルバさんが持ってるアビリティ位のレア物ですね。そして次が最後なんですけど……魔道具です」


「まあ……分かっていたけどね。そうなると……餌と魔道具なら即座に捕まえにいけるけど、アビリティだと……出遅れそうだね」


「そうですね……まあ、今はあの男達が宿屋から出てこないか見張りましょう」


「うん。それと……えい」


 ヴァ―ラスキャールヴを使用して、俺達の周囲の環境を最適な物にする。


「熱くなくていいですね……」


「だよね……本当に手に入って良かったよ」


 モカレートがハンカチで汗を拭う中、俺は収納からタオルを取り出して、物陰に隠れてから、服をずらして自身の胸の谷間に溜まった汗を拭いていく。


「大変ですね」


「男の頃は夢だったけど……自身がこうなると、迷惑極まりない物だね。何事もほどほどが一番だよ。あ、これ……脱水状態にならないようにね」


 俺は収納から、水筒を取り出してモカレートに渡す。


「ありがとうございます」


「アンパンと牛乳……流石にないか」


「どうかされました?」


「ううん」


 張り込みの定番であるそれらが欲しいと思ったその2つ。アンパンはこの世界には、まだ無いからしょうがないし、こんな暑い日では牛乳はあっという間に悪くなりそうである。


「アンパン……作ろうかな」


 アンパンという甘味を思い出した俺。少女の姿となった今、この体が求めているのもあって、展示会の準備の合間にでも作ろうかと思うのであった。

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