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112草

前回のあらすじ「親方! 草からロリ巨乳っ娘が!!」

―ウィードが起きてから2時間後「リゾート地ガルシア・メインストリート」―


「ん……」


「どうしたのウィード?」


「慣れない衣服を着てるから落ち着かないだけ。特に下着が……」


「ああ……男性は必要無いもんね」


「上もだけど下も同じ。男性用の下着とは違うんだよね。こう……フィット感というか、何というか」


 初めて着る女性用の下着。子供の頃に来たことのあるブリーフとはまた違った感触に戸惑う。さらに、季節に合わせた衣服という事で、今は白のワンピースを着ている。髪も編み込んでもらっており、服屋にあった鏡で自分の姿を見たが……俺の好みどストライクな完璧な美少女だった。


「ズボンじゃないから下がスース―するし、胸の圧迫感とか……男として、何か一線を越えた気がしちゃうんだよね」


「……やっぱり男性に?」


「ううん。それは諦めてる。美の女神だから……恐らく美しくない男性にはしたくないじゃないかな……」


 美少年ならワンチャンあるかもしれないが、俺と話している時に繁殖とかの話をしているのだ。つまり……。


「『子供を産んで、もっとドリアードを増やしてね♪』って、呟いてると思う……きっと」


「……何か大変だねウィード」


「うん……元、男性に孕めって言ってるようなもんだからね……」


「つまり……(ご想像にお任せします)や(放送コードに引っ掛かりました)とかを体験するってことだね!」


「人通りのあるとこで言わないの!」


 俺は編んでいない髪を、自分の意思で纏めて、それでドルチェの頭を引っ叩く。これはドリアードの種族の特製の1つで、髪を蔦のように操る事が出来る。また、伸縮自在なので今の肩に掛かるロングヘアーよりも長く出来るし、ショートヘアーにすることも出来る。


「ゴメンゴメン……つい」


「全く……で、何で手をつないでるの?」


「ほら、迷子にならないように……ね」


「中身は大人だからね!?」


 外を移動中、ずっと手をつないで離さないドルチェ。完全に子供扱いである……まあ、見た目は高学年の小学生ぐらいだから仕方ないけど……。


「じゃあ……手を離した方がいい?」


「……さっきまではね。あんな奴らに目を付けられそうだから今は止めとく」


 そう言って、俺達の事をエロい目で見てくる男共に注意を向ける。今、さっき通り過ぎた男達は話題にはするが、絡んでくることは無さそうだ。


「姉妹かい? どうだい何か買っていくかい! 安くしとくよ!」


「ねえ! これから俺達と遊びに行かない?」


 2人で歩いていると、様々な男共が近寄って来る。声を掛けてくるなら、胸ではなく顔に視線を向けてもらいたいところである。


「へへ……譲ちゃん! 俺達がいい事を……!!」


「スリープ・パフューム」


 話の通じ無さそうな男共が近寄って来たので、さっさと眠らせて、その場を素通りする。


「はは……最強の護衛だね」


「ふふん! 私のありがたみを感じたでしょ?」


「そこは変わらないんだね……」


「性格は変わってないからね」


 そんな話をしながら、俺達は皆が待つ冒険者ギルドに向かうのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「リゾート地ガルシア・冒険者ギルド 執務室」―


「きゃー!! かわいいーー!!」


「うわっ!」


 ギルド職員に案内され、ギルドマスターの執務室に案内された俺とドルチェ。部屋に入るといなや、クロッカがものすごい勢いで俺に抱き着いてきた。


「可愛い……このままぎゅーーっとしていたい!」


「離して……ここにいる皆が困ってるよ」


 離れるように説得する俺。最終的にはアマレッティがやって来て、無理やりひっぺがえしてくれた。


「お前さん……間違いなくウィードなんだな」


「そうだよ……こんな姿になっちゃったけど」


 気まずくなって、前髪をいじりながらフェインの質問に返事をする俺。まさか、草からこんな美少女が生まれるなんて誰が思うだろうか。


「はははは! 男って聞いてたが……野郎が黙っていない程の美少女だな!」


「さっき、それ狙いの男性に絡まれたよ……ウィードが眠らせたけど」


「それは大変だったな……まあ、立派な物を持ってるもんな」


「セクハラだよ。まあ……私も男だったから気持ちは分かるけどね。それで、報告は?」


「これからだ。お茶と菓子があるから、それをつまみながらでもゆっくりしてくれ……特にウィード。お前さんは慣れない体なんだろう? 何かあればすぐ言うように」


「完全に子供扱いな気がするんだけど……まあ、そうする」


 俺はそう言って、空いているソファーに座る。ふかふかのいいソファーの感触を肌で感じつつ、置かれているクッキーを頬張る。


「うん♪」


「お。気に入ったか?」


「う、うん……だけど、これはこれで心配かな。以前よりお菓子が美味しく感じているみたいだし」


 前の俺はそこまで甘味は好きでは無かった。さっきも、色々あって朝ごはんを食べていなかったから、それを満たすため……そう思っていた。


「この調子だと……辛い物とか苦い物とかがダメになってるかも……本当に色々試していかないと……」


 ブラックコーヒーとか激辛麺とか好きなんだけどな……好物が食べれなくなるのは、非常に残念な気がする。


「はい。あ~ん」


「……えい」


 考え耽っていると、クロッカがお菓子を食べさせようとする。俺は髪を纏めて、クロッカの頭を叩いて軽いツッコミを入れておく。そして俺は自分で食べたいお菓子を手に取るのであった。


 その後、ヴェントゥス・グリフォンの討伐の報告会が始まる。この報告会は報酬の分配のためという理由と、また同じモンスターが出た時の対処法として利用されていくそうだ。


「お前さんの火魔法……どうなってるんだ?」


「イグニス・ドラゴンを討伐したら貰えた。他にもラーナからは音魔法、アクアからは……あれ? 何も貰っていないかも」


「そもそも、水魔法を覚えてたからじゃないかしら? 貰えたアビリティって、未収得の物ばっかりだったし」


「それもそうか……皆は何かもらえた?」


「俺はあったぞ。真空斬りという魔法攻撃を切断する剣技だな」


「私も同じですね」


 ベルウルフとビスコッティ以外にも、今回の討伐に関わった全員が何かしらのアビリティを貰っていた。互いのアビリティの特徴を話している中、俺は何を貰ったのか確認するため、ステータス画面を開く。確か空間生成のアビリティが手に入ると聞いていたが……どこにも無いな?


「あ、オーディンのアビリティがレベルアップしてる……さっき見てたのに気が付かなかったな」


 レベルが全く上がる気配が無かったオーディン。その項目を確認するとフリーズスキャールヴ以外に、もう1つ新しいアビリティ名が載っていた。


「ヴァ―ラスキャールヴか……なるほどね」


 オーディンの住む宮殿名であるヴァ―ラスキャールヴ。効果を確認すると空間生成と似たアビリティだという事が分かった。


「どんなアビリティを覚えたの?」


「ヴェントゥス・グリフォンが使用していた空間生成と同じ物。私の周囲の空間を様々な状態異常を引き起こす空間に出来るようになったよ……他にも」


 試しにヴァ―ラスキャールヴを使って、少し暑いと思っていた温度を下げる。


「常に自分の最適空間を作れる……ふふふ」


 いいアビリティを手に入れられて喜ぶ俺。笑い方に凄い違和感があるのだが……まあ、しょうがない。


「さらに便利になったわね。あなたって」


「……この嬢ちゃん。俺達のパーティーに」


「「「「ダメです!」」」」


「だよな……」


 ベルウルフが俺を自分のパーティーに引き抜こうとするが、それを皆が止める。俺の意見を誰も訊かないのはどうかと思うのだが……まあ、そもそも男だらけのパーティーに入るつもりは無い。


「うむ……訊きたいことはその位か。また何かあったら個々で尋ねると思うがよろしく頼む」


 フェインはそう言ってから、席から立ち上がりその場でお辞儀をする。


「皆のおかげで街が救われた。ギルドマスターとしてお礼を言いたい……ありがとう」


 フェインが笑顔でお礼を述べる。その笑顔はとても晴れやかな物だった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―「リゾート地ガルシア・酒屋」―


「「「「かんぱーい!」」」」


 色々な手続きが終わり、フェインが用意してくれた酒屋で牙狼団も含めた全員で打ち上げを行う事になった。皆、美味しそうに酒を飲み始める。


「ぷっはあー! 依頼も終わって、しかもタダ酒を飲める……最高だな!」


「リーダー……もう少し静かに飲んだらどうだい?」


「はははは! そんな事を気にする連中じゃないだろうって!」


 うるさく飲む姿を仲間に窘められるが、そんな事を気にしないで酒を飲んでいくベルウルフ。確かに俺達のメンバーは誰も気にせず飲み食いをしている。


「……うん。美味しい」


 トマトベースのソースを絡めたようなパスタを食べる俺。何かを食べるという当たり前の事が出来るようになり、内心大喜びしながら食べ続ける。


「確かにここの料理は絶品ですね……って、ウィードさん? それお酒じゃ!?」


「え?」


 ビスコッティが俺の飲んでいる飲み物を見て驚いた表情を見せる。


「飲んじゃダメだっけ?」


「あんた……1歳半ぐらいでしょ?」


「私、ドリアード……だから大丈夫」


 そう言って、お酒を飲む俺。甘味が美味しく感じていたので、苦味がダメになっているかと思っていたが……お酒が大丈夫なら問題無いはずだろう。


「そんな理由で飲ませられません!」


 ドルチェがそう言って、俺の酒を奪ってしまう。


「いやいや!? 私って大人……いや、体は子供なのかな? それに酔ってないよ?」


「この国の法律だと15歳からじゃないとダメよ。だから……後14年はダメよ?」


「そんな長い禁酒……待てないんだけど?」


「子供はこれにしておきなさい」


 そう言って、渡されたオレンジジュース……仕方なく、俺はそれを飲んで今回の祝勝会を楽しむのであった。

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