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106草

前回のあらすじ「24時間戦うことになったウィード」

―その日の夜「リゾート地ガルシア・高級リゾート地」―


「えーーと……よし。まずは完成だな」


 コテージに帰ってから、ひたすら薬の作成をしていた俺は、減水薬に変異のアビリティを使うことで過水薬を作ることに成功。さらに、変異のアビリティを使わずに素材から作る事にも成功した。


「飲めば飲むほど体内に水を蓄積するか。これはガレットが喜ぶな」


 睡眠欲を満たすためなら、どんな方法も試すガレット。なかなかちょうどいい大きさにならなかったために、こっちに来て一度も過水の状態異常のまま眠った事が無かった。恐らく、出来たことを知ったら『飲む』と言うだろうな。


「呼んだ?」


 ふと声のする方へと意識を向けると、お風呂上りのガレットが立っていた。そのお腹は過水の状態異常のせいで膨らんだままであり、着ているタンクトップのような服を前に引っ張っている。


「いや。過水薬が出来たところで……」


「飲む」


「思ってたけど……早えよ!! そもそも、これは減水薬の効果を確認するために作ったんだからな!? お前の睡眠欲を満たす物じゃないからな!?」


「出来たばっかり……つまり、効果を試すためにも実験体がいる」


「それは……そうだが……」


 出来た薬にはちゃんと過水薬と表示されているのだ。実験する必要は無いのだが……かと言って、その目で一度は確認した方が……。けど、それって何かアフロディーテ様の言い訳云々とかに関わってきそうだし……。


「じゃあ……あーーん」


 口を大きく開くガレット。その口に過水薬を突っ込めということだろうか……。


「……分かった」


 俺は蔦を伸ばして、その先端をガレットの口まで持っていき、そこから過水薬を流し込む。


「うん……」


 すると、ガレットが蔦に手を伸ばし位置を調整、さらに蔦の先端を加えてしまった。


「うぐ……ん……」


 なまめかしく俺の蔦をくわえながら、過水薬を飲むガレット。他の誰よりも幼い姿であるガレット。本来なら性欲を掻き立てられる見た目じゃないのだが、このような驚きの行動をされると、草とはいえドキドキさせられる。


「う……ん……」


 すると、お腹だけ膨らんでいた体がさらに膨らんでいく。縦に広がっていたのが、ウエスト辺りを中心に横へとも広がっていく。手足もすこしずつ膨らんでいきぷにぷにとした物になっていく。顔も若干さらに丸くなった気がする。


「うん……」


 口を外そうとするので、そこで過水薬を出すのを止める。先ほどよりもさらに大きくなった体を確かめるガレット。背中が膨らみ始める前に止めた事で、見た目はぽっちゃりと肥満体の境目位の普通にあり得そうな体型になっている。ただし肥満化と違って胸のボリュームは全く増加しておらず綺麗な曲線を描いている。その見た目は赤ちゃんの体型のまま、体が大きくなったかのようだ。


「うん……これは確かにいい」


 その場でジャンプすれば、ぽよぽよと擬音が聞こえそうなくらいに体が揺れるガレット。本人も大満足の仕上がりのようだ。


「何か……より幼さに磨きがかかってねえか?」


 そこにアマレッティもスポーツブラのような上着というラフな格好で現れる。ただし、こちらのお腹はスッキリしている。


「もう寝たんじゃなかったのか?」


「喉が渇いて何か水を飲みに来たんだ。けど……」


「これを飲む気は無いと言いたいんだよな?」


「いや……うちも飲んでみようかなって……」


「お前ら……自分で鍛えた体が無残にもぽよぽよ体型になっても平気なのか?」


「前にも言ったけど……元に戻れるから特に気にしていないんだよな。それに疲れた体を休めるのにウィードの旦那の薬って効果バツグンだしね」


「そ、そうか……」


 それは熟睡している証拠なのだろうが……あまり良くない気がする……。特に性癖方面で……。


「これが終わったら、ボディケアに使える薬を作るか……」


 今後の薬の開発方針を決めつつ、俺は蔦を前に出す。


「飲むなら、この蔦から出すからそれを飲んでくれ」


「瓶じゃないのかい?」


「皮化薬と同じで飲む量が関係するんだ。瓶1杯だと食い過ぎてお腹が少し前に出るぐらいだな」


 過水の状態異常は飲む量で変わる。摂取量が多ければ多いほど大きくなり、その分、体内の水が抜ける時間も長くなるという物である。妊婦になるぐらいの量だと戻るのに2ヶ月ほど掛かるので、球体状に真ん丸になってしまった場合、元の体に戻るために数年単位掛かってしまう。


「それってかなりの量になるってことだよな……うちに飲ませてもいいんかい?」


「安心しろ。意外にリーズナブルでな。人を球体にする位の量なら10分で作れるようになったしな」


「物騒な話だね……うちを真ん丸にするつもりなのかい?」


「うーーん……やろうと思えば出来るが?」


「冗談だ! それより……」


 そう言って、蔦を口にしたアマレッティが、指で蔦を突っつく。


「……ストップする時も蔦を叩いてくれよ?」


 そう言って、俺はアマレッティに薬を飲ませて、その体をポヨポヨ体型にするのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―翌朝―


「さてと……」


 俺は夜なべして作った中和薬を確認する。思ってた以上の物が出来てしまい……少々戸惑うところがあるのだが……。


「ウィードおはよう」


「おう。おはよう」


 起きて来たパジャマ姿のドルチェがプランターで薬の作成に集中していた俺に朝の挨拶をしてくる。まだ眠いらしく、欠伸をしながら目を擦っている。


「どう? 作成は順調?」


「順調だ。順調すぎてヤバいのが出来た」


「順調すぎてヤバいって……何が出来たの?」


「中和薬だ」


「過水の中和薬って……やったじゃない! これでグリフォンに対抗できるね! でも……何がヤバいの?」


「ああ、中和薬は出来た……状態異常と判断される物なら何でも中和してしまう薬がな」


「……え?」


 万能薬を参考に、様々な成分を組み合わせて作ったこの中和薬。そのためか、状態異常なら何でも中和できるというやり過ぎ感が満載な薬になってしまった。


「これを飲んでも状態異常が解除される訳じゃないから、これから作る予防薬と同じようなもんだな」


「いや……それって何気に凄い薬なんじゃない? つまり毒が蔓延するダンジョンとかもそれで何とか出来ちゃうって事でしょ?」


「そんなダンジョンがあればだな……って、まさかあるのか?」


「あるよ。この国で最大級の山であるクィット火山のダンジョン……有毒なガスが噴出していて、今も

攻略したパーティーがいない超難関のダンジョンなんだ」


「ほう……そうしたら、攻略を目指しているパーティーに高く売れそうだな……」


「……草だから表情なんて分からないけど、今のウィード絶対に悪い顔しているよね?」


「分かるか? こんな美味しい話を逃す訳にはいかないからな。こんなヘンテコな体である以上、金は何かと入用だ。ラメルさんや冒険者ギルドを介して薬を売ってるけど……将来的には、商業ギルドや薬師ギルドとかに入って、より多くの収入を得たいところだな」


「ウィードって堅実的だよね」


「中身はおっさんだからな……夢見る少年とはいかねえんだよ」


 俺がもう少し若い状態でこちらに転生していたら……こんな金策を考えず、なりふり構わずに、あっちこっちのダンジョンに挑戦していたかもしれない。まあ……草の体じゃなければの話だが。


「おはよ……」


「うっす!」


「あ、おはよ……う!?」


 俺とドルチェが話をしていると、そこにガレットとアマレッティの2人が大きくなった体を揺らしながらリビングにやって来た。


「おう! おはよう! それで……そんな体で本当にぐっすり眠れたのか?」


「眠れた。このタプタプボディ冷たいから、この暑さなら快適」


「うちもだ。一応、部屋を涼しくする魔道具が置かれているけど、それよりこっちの方が涼しいよ」


「全身、ウォーターベッドのような物なのか……? そうしたら、過水薬って夏の快適グッズとして売れるかも……」


「2人とも……そんな体を男性に見せて恥ずかしくないの?」


「大丈夫。ドルチェのような胸は無いから」


「同じく。ドルチェ先輩の場合は胸がぺったんこになるから気になるかもしれないけど……うちらってそもそも胸が小さい者同士……気にするところなんて無いのさ」


 ガレットとアマレッティの2人が揃って同じような事を言って、そのまま顔を洗いに行ってしまう。


「昨日も同じことを言ってたな……ドルチェ。どうだ飲んでみるか?」


「結構です!」


 すると、怒ったドルチェも顔を洗いに洗面所へと行ってしまった。


「冗談のつもりだったが……やっぱりドルチェにこういう類の冗談はダメか」


 俺は少しだけ反省をしつつ、気分転換のため、薬の作成を一旦止めて、アビリティで収納している品々の整理を始めるのであった。

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