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100草

前回のあらすじ「10層まで到達」

―翌日「イポメニの古代神殿・11層」―


「皆、準備いい? そうしたらしゅっぱ~つ!」


 ドルチェの言葉に『おおー!!』と、皆が掛け声を上げる。いよいよ、ドルチェとココリスにとっては魔の階である11層へと下りていく。階段を下りると、そこは上の階と変わらない迷宮が続いていた。


「11層から19層までは宝箱に偽装したミミック、イカに似たモンスターであるモントイカ、その他に水に関係するアビリティを持つゴブリンやオークが現れる。で、いいんだよな?」


「ええ。過水の状態異常はミミックが、ゴブリンは麻痺を起こすナイフ攻撃、モントイカは状態異常じゃないけど、墨を吐いて視界を塞いでくるから気を付けて頂戴」


「で、20層のボスはタコに似たモンスターでミョンダコ。こいつも墨を吐く攻撃をするから注意だね」


 ギルドで事前に得られた情報に齟齬が無いかを確認する。ダンジョン探索でいい所は、攻略済みなら事前にモンスターの情報を得られる事、各階層に出てくるモンスターも固定な事だ。そのため、予想外が起きることは早々起きることは無い。


 グリフォンがボス部屋を陣取る事で、ダンジョン内に異変が起きたという知らせも無いらしいので、今日の探索ではイレギュラーが起きることは無いだろうと願いたい。


「……いた。前方に魔物の群れ」


 ドルチェのその一言に、全員が警戒態勢を取る。少しずつ歩を進めると、向こうの角からゴブリン5匹が現れる。そのどれもが海賊を思わせるような服装をしており、サーベルかナイフのどちらかを必ず所持していた。


「ここに出てくるゴブリンやオークは水属性の魔法が効きづらく、水属性の魔法を使ってくるから注意してね」


「了解! 戦闘に入ります!」


 前にいたビスコッティとココリスがゴブリンの群れに突撃する。ゴブリンも武器を構えて襲いかかってくる。


「シールド・パニッシュ!」


 ビスコッティが前に構えていた盾を使って、ゴブリンを弾き飛ばす。弾き飛ばされたゴブリンは後続のゴブリンにぶつかり、動きを阻害する。


「槍刃一突!」


 ココリスは槍にオーラのような物を纏わせ、襲いかかるゴブリンに向けて強力な突きを放つ。その威力は凄まじく、ゴブリンの一部をえぐりつつ、その肉片を後ろへと吹き飛ばした。


「サンダー・ランス!」


 クロッカが雷の魔法を放って、ゴブリンを1匹倒す。


「……私の出番ない」


 ガレットはそう言って、武器を下ろす。動きを阻害されたゴブリン達もビスコッティとココリスが始末して戦闘が終了した。


「お疲れ」


「お疲れ様です。ウィードさん回収をお願いします」


「あいよ」


 俺は収納を使って、ゴブリンの死骸と所持していたアイテムを回収する。


「お、麻痺付きの武器があるぞ……全員が所持している訳じゃ無いんだな……」


 5匹中1匹が持っていた麻痺付きの武器。ゴブリンが武器に塗っているとかではなく、武器に付与された効果だった。


「見た目じゃ判断出来ないから、全員の武器が麻痺付きの気持ちで戦った方がいいけどね」


「5匹中1匹……以外にレア物?」


「ウィードの旦那が想像するよりも、レア物みたいだぜ。数回の探索で1本手に入るレベルらしいからな。それに鑑定系のアビリティが無いと、ただの武器と区別が付かないし、アイテムボックスとかを持っていないとかさ張るから置いていかれる場合もあるし……そのせいもあって、高価な品になってるらしい」


「これが……ねえ」


 麻痺が付いているナイフを取り出し眺める俺。小さく、持ち手が黒い布を巻いただけのお粗末なナイフ。これで戦うというのは少し難しいのでは?


「アマレッティ。これ使うか?」


「皆がいいなら欲しい。ウィードの旦那、それと似たナイフが他にもあるんじゃないかい?」


「うん? ちょっと待ってろ……これか」


 俺は形がそっくりなナイフをさらに5本取り出す。ただしこちらは持ち手が白い布である。


「6本セットのスローイングナイフか。5本はダミーで1本が本命って訳か」


「あ、投げる用か。そう言われれば、この小ささも納得だな……で、アマレッティにこれを渡してもいいか?」


 皆に訊くと、戦力の増加になるからと言うことで、盗賊のアビリティである投擲用の武器としてアマレッティが使用することになった。


「他にも、誰かが使えそうな武器を落とすかな?」


「無いわね。結局、使い慣れた武器が一番だもの。振ったら強力な魔法が放たれる魔剣や魔槍なら話が別だけど」


「武器の重さとか長さとかめちゃくちゃですもんね」


 ココリスの意見に同意するビスコッティ。まあ、アニメやゲームのように拾った武器で強くなるとかそんな美味しい話は無いか。


「うちも。まあ、これは投擲武器だから問題ないけどね」


「……無くさない」


「努力はする。何せ投擲武器なんてそんな物だし……なあ、ガレット。これを自動回収出来る何かいい魔法無い?」


「無い」


「だよな……まあ、あまり期待してなかったけど」


 ガレットの返答に特に気にすることなく、アマレッティは手に入れたスローイングナイフを太もものポシェットの中に入れる。


「……次、来るよ」


「……どんどん進まないと、モンスターのせいで足止めを食らいそうだな」


「ですね。とにかく気を付けながら、どんどん進んでいきましょう!」


 ビスコッティはそう言って、盾を前に構えながら前に進む。そして俺達もその後に続くのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―探索開始からしばらくして「イポメニの古代神殿・15層」―


「ウィードの旦那……水、水をくれ」


「分かった、分かった……そこを動くな。とりあえず、水を掛けて落としてやる」


「私も……」


「クロッカも動くな。まさか、天井に張り付いたまま上から奇襲してくるとはな……」


 後方からのモントイカの襲撃によって、顔を墨で真っ黒になった2人。ガレットは避ける暇も無かったので顔以外にも衣服が真っ黒である。


 俺は魔法で2人の顔に水を掛けて、墨を洗い落とす。顔の墨を洗い落としたところで、今度は他の箇所を洗い落としていく。


(あれ? これって、女の子に水鉄砲を掛けてイタズラするギャルゲーの主人公的なポジションでは?)


 俺は改めて、今の状態を確認する。顔が終わり、墨で汚れた衣服もキレイにしていく。そのお陰でガレットの衣服が体に張り付き、その肉体的な体と、身に付けている下着の形が露にする。


 対して、アマレッティの衣服はへそ出しの盗賊服であり、クロッカのようなドキドキ感は無い。しかし、既に見えているお腹辺りに流れていく水滴、無防備に身に付けている衣服の水気を切ろうとして、衣服を引っ張ることでそこから見える絶対領域……何て役得……っと、あまり無言だとドルチェに怪しまれるな。


「この墨って水で綺麗に洗い流せるんだな。服に付いたら落ちないと思っていたが……」


「確かにそうだね……おかげで買い替えしなくて済むけど」


「ドルチェ! 周囲にモンスターいるかしら!?」


「あ、ごめん! ちょっと待って……」


 ココリスに指摘されて慌ててナビゲーションで周囲を確認するドルチェ。2人の洗浄が終わったので、乾燥をガレットに任せ、俺もこちらの話に混じる。


「いない……ん? その角に何かあるよ」


 ドルチェに言われて、ビスコッティとココリスが武器を構えながら何があるのかを確認する。


「……アマレッティ。出番よ」


「うん? それって……」


 ガレットの風魔法で濡れた体と衣服を乾かしていたアマレッティがビスコッティとココリスがいる前の方へと移動する。その間、後ろが疎かになるので、そこをガレットとクロッカの2人が警戒する。


「……ああ。この宝箱はダメだね」


 俺がガレットとクロッカの方に注意を向けていると、確認を終えたのだろうアマレッティが発見された宝箱にダメ出しをして、すぐに破壊した方がいいという話をし始める。


「ミミックか。開けなければ襲ってこないのか?」


「ううん。油断していると後ろから襲ってくるの……まあ、私達は開けた所を襲われたけど……ね」


 暗い表情で、これまた暗い笑いをするドルチェ。トラウマを踏んでしまったか。


「マッド・プール」


 俺とドルチェがそんな話をしてる中、ココリスがその宝箱の周囲の地面をぬかるみにして、それを沈めてしまう。


「これでいいかしら」


 元の石の地面に戻った床を確認するココリス。ビスコッティとアマレッティも確認をして安全性を確保する。


「行くわよ!」


 ドルチェの号令の下、再びダンジョン探索を進める俺達。途中、階段で昼食を取りつつ、事前情報通りのモンスター達を蹴散らしながら、今日の目標である20層の中ボス部屋の前に到着するのであった。

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