表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/208

9草

前回のあらすじ「買い出し中」

―夕方「城壁都市バリスリー・花の宿プリムラ」―


 あの後、明日の仕事の為の買い出しを終えた俺達は二人が下宿している「花の宿 プリムラ」にやってきた。花の宿の名前に相応しく、玄関先には花壇があり、中に入ると、色とりどりの花が出迎えてくれた。


「へえ~~……喋る草……ね~~」


(はい。よろしくお願いします)


 そして、俺が今、喋っている女性がこの店の店主リリーさん。ケモ耳がついているので獣人。年齢はまだ若そうだ……そして、一番のポイントは……胸がデケーー!!このドルチェとココリスの二人もそれなりにデカいと思うけど、それ以上にデカい!絶対この人、牛の獣人だろ!!見えている耳と尻尾がそれっぽいし!


「どうかしたのかしら~~?」


(いえいえ……獣人と話すなんて、何せ初めてだったもので)


 俺が失礼な事を考えていない事をアピールするために、実に真面目な回答をする。


「うふふ~~私もお話しできる草に会うのは初めてよ~~」


「それで、この草さん……ウィードも泊まるけど……」


「ウィードって名前なのね~~。カッコよくていい名前ね~~。それでそうね~~……泊まるのはオッケーよ~~?ただ……ご飯もいらない。ベットもいらないというより使えない……宿として何も提供できない以上、お代は取れないわね~~」


 ゆったりと話すリリーさん。なるほど。宿屋として俺に提供できるサービスが無いのにお金を取るというのは失礼という事か。


(なら。飯としてここのお花を育てるのに使っている肥料とかを分けてくれないか?)


「うーん~~……いいわよ~~そうしたら~~」


 リリーさんがそう言って、俺の為に肥料を持ってくるためだろう。バックヤードへと入っていってしまった。しかし……ふ、ふふふ!!これでやっと昨日からの宿願を果たすことが出来る!!二人には俺の思惑がバレないようにしないと……。


(どんな部屋なんだ?)


「普通……って分からないか。1つの部屋に二つのベットにテーブルとイス。シャワー室とトイレもあるわよ」


(ツインルームってことか)


「そうそう。普通に理解出来てもらって良かったわ」


(この言語理解のスキルの性能が良くて助かるぜ)


 前世の言語が利用できるなんて物凄く便利だ。おかげで一から言語を覚えるという事をしなくていいのだから。


「お待たせ~~!!」


 すると、リリーさんが肥料とスコップを持って戻って来た。


「それじゃあ……少し早いけど今日は休みましょうか」


「そうだね……夕方なのに疲れちゃった」


(しょうがないんじゃないか?精神的な疲れって結構抜けにくいしな)


「そうね……夕食を取って、お風呂に入ったら早めに寝るとするわ」


(それがいいぞ)


「と、いうことでリリーさんお願いしますね!」


 すると、ドルチェが布袋ごとリリーさんに俺を渡す。


(あれ?一緒じゃないの?)


「……見え見えよ?リリーさんと話す感じ、草なのに男としては現役みたいね?」


「あらあら~~。そんないやらしい目で見ちゃダメよ?」


(あ、はい。すいませんでした)


 バレてたーーーー!!!!童貞歴、歳の数の俺の浅はかな考えがここで潰えるとは……いや、バレていたと考えたら、すごく恥ずかしくなってきたーー!!!!


「ははは……しっかり休んでね?」


(おう……あ、そうだ。リリーさん)


「あら?何かしら?」


(肥料多めにくれないか?頼まれた薬を作らないと……)


「ラメルさんに頼まれていたお薬を作るの?」


(ああ)


 ラメルさんに増産を頼まれたので、夜中の間に作っておく。俺は睡眠が必要ないので一晩中起きていられる。というより、草として生まれ変わってこの方、眠ったことが無い。人だったら発狂ものだろうがその感じは今の所は無い。話を戻すが、つまり夜中はカロンの森で一人でいた時と一緒で暇なのだ。それなら何かやっていた方が気が紛れる。


「何を頼まれたの?」


(……言っていいのかな?)


「何よ?言いづらいの?」


 男性としては、この内容は実に言いづらい。


「えーと……男性のあそこが元気になる……お薬?」


 俺がそんな事を思ってたら、ドルチェがほぼ包み隠さずに言ってしまった。


「…………!!!!????」


「そんなのが作れるの~~?」


(ラメルさんのところで作った薬を売ったら、その中に紛れ込んでたんだよな……)


 様々なお薬を作った中に一つだけ紛れ込んでいた精力剤。調合のアビリティで確認すると確かに俺が作っていた。どれだけの効果があるのかは知らないが、二人のケガを治した際に使ったポーション、そして今日のラメルさんが飲んだ肥満薬の効果の具合を考えると……。


(オールナイトでにゃんにゃんだな……)


「何を作ってるのよ!!」


 顔を真っ赤かにしてココリスが文句を垂れる。確かにセクハラ発言だけど、そこまで変な事は言ってないと思うんだが……うぶな子なんだな。


(いや~~……ラメルさんが俺の作った不要な薬が全て娼館なら売れるっていってさ……)


「へ?娼館?」


(あれ?言ってなかったけ?変わったお薬を全て娼館で捌くって……)


ふしゅう~~~~!!!!


「うわ!ココリス!!」


 頭から湯気を出して、ココリスが倒れてしまった。


(って!!これで倒れるのかーー!?)


「この子……超が付くほどのうぶなのよ~~」


 リリーさんが倒れたココリスを介抱しながら、俺の問いに答えてくれた。


「うん。だからこそ私も話題には出さなかったし……」


(……いや。これ……マズくね?)


「「それは同感(ね~~)」」


 その後、リリーさんによってココリスは自分の部屋に運び込まれ、今日と言う一日が終わるのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

―翌日「城壁都市バリスリー・東の森」―


 翌日、俺たちは冒険者ギルドでクエスト受注して、この東の森へとやってきた。ちなみに、ラテさんと冒険者ギルド内で偶然あったのだが、俺に殺意の籠った視線を送ってきました。俺、いつか彼女に除草されるかもしれない。


「さてと!仕事をするわよ!!」


(じゃあ、俺はお薬を……)


「あなたも手伝いなさい!!」


(ジョークだ)


 昨日の件を軽く掘り起こす。せめて、このくらいは慣れてもらわないと大変に困る。なにせ今日もまたこのクエストの帰りにラメルさんのお店へよって、この怪しいお薬を納品するのだから。


「はあ~……全くあなたがこんなセクハラ野郎だったなんて」


(ゴメンゴメン!でも、これ位は慣れてもらわないと……)


「だよね……」


「ルチェもそんな事を言うの!?」


「だって……(書けない内容なのでご想像にお任せします♪)とかで倒れたら大変だもの」


(それは生々しすぎるわ!!もっとオブラートに包んで!!)


 ドルチェの思いがけない発言に思いっきりツッコむ!お淑やかそうな見た目とは裏腹にとんでもない爆弾発言をしてるぞ!!


ふしゅう~~~~!!!!


(気付け薬!!)


 これから仕事なのに倒れられたら困る。昨日の一件を見て、こんな薬があったほうがいいだろうと思い、作った気付け薬をココリスにかけて倒れるのを防止する。


「くにゅう~~……気絶してもたたき起こされるなんて……」


 真っ赤な顔を隠しながら話すココリス。


「まさか、あれだけでそうなるなんて……」


(いや!?男の俺でも引くからな!!)


「え?そうなの!?」


(全く……)


 本人はその気が無かったみたいだが……かなり生々しかったぞ。思わず草になって無いはずなのに俺のあそこが……って、こんなくだらない事をしてる場合じゃなかった。


(で、薬草集めでいいんだよな?)


「え……?あ、そ、そうよ!!早速、探しにいきましょう!」


「おーー!!」


 俺たちは、そんなくだらないやり取りを止めて、今日の仕事の再確認をする。


「今日はポーションになる薬草の採取。そしてモンスターが現れたら適度に撃退よ」


 冒険者ギルドではその人の素養でA~Fランクに分けられる。そして受注できる仕事も同じランクで分けられていて同ランク程度までクエストとして受けられる。つまり、この二人はBランクまでの仕事を受けることができ、今回のFランクである薬草採取も一応受けることが出来る。しかし、それだと高ランク冒険者が低ランクのクエストばっかり受けるという問題が起きてしまうので、ギルドは降格制度を設けて、規定以下になった冒険者は自動的にランクが下がるようにして、楽させないような仕組みが出来ている。


 逆に、そのような簡単な仕事を受けるのをダメにすればいいんじゃないかと思ったが、今回のドルチェ達みたいに、新しい武器の性能の確認とか、大ケガからの復帰後とか、高ランクになるとそのような事が多々あるので、危険度の低い仕事で体を慣らすことがいつでもできるように、そのような決まりは設けていないとのことだった。


「今回はチームワークとかの確認もあるから、疲れないよう程度で頑張りましょう!」


「分かったよ」


(りょーかい!)


「それで、私が前衛、二人は後衛。モンスターとの戦闘は私達がメインにやるから、ウィードは補助をよろしくね」


(ああ。でも、俺も試させてくれよ。使ってみたい魔法が幾つかあるからさ)


「分かったわよ。それじゃあ始めるわよ!」


 ココリスの号令で、俺たちは森の中へと入っていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ