付け上がった者の辿る道筋
──大規模術式
千にも及ぶ術式を、一級から二級の術者が500人単位で構築する術式の事を、大規模術式と言います。
今回、白夜達が招待された理由は〔術式対局〕と呼ばれる、ようは実力比べの大会だ、
主催者側が用意する"大規模術式"[疑似異界]を、
戦場に使用して、一対一の単式戦や、ニ十対ニ十の戦争式戦と言った対戦がおこなわれる事を〔術式対局〕と呼ぶ。
白夜達が呼ばれた理由はその〔術式対局〕の観戦の為だ、毎年この時期おこなわれる〔術式対局〕、そこでは優秀な成績を残してスカウトされることもあれば、自分の家のアピールに利用されることもある。
今回は後者の理由だろう。
それに加えて神凪家は遠回しに白夜の嫁、奈月を求めてきた。
自分達神凪家と式理家の関係を盾に。
式理家と神凪家は五代前までは相当の仲だったと言う、式理は強い兵士を、神凪家は質の良い巫女を。
式理にとっても無くては困る存在であったのは確かだ、
だがそれは五代前の話だ。
元治の代では殆んど式理家にとって神凪家の価値が下がり、勝彦の代で神凪家の価値が無くなった。
それに加え式理に生まれた二人の天才に加え、養子に迎えられた天災、そして理操家に生まれた最高の巫女によって、神凪家は価値が無いものから、捨てても構わないもの変わった。
これがもしも神凪家に人格者が居れば少しは関係も変わっていたのだろう。
だが現状は神凪家としても価値が無く、人としてもどうでもいい人材ばかり。
知らないのは神凪だけ。
だが神凪は式理の情報など把握してると、言いたいのだろう、だが、それは大きな間違いだ。
神凪が、奈月と白夜の結婚を掴んだのは、ごく一部と言えど家族には知られる程度の情報、所詮そこから読めた程度の情報だ。
それで把握した気になり、付け上がり、自分達神凪は式理家に無くてはならない存在だと思い上がって、何時でも捨てても構わないと思われてるのも知らずに身の丈に合わない欲を出した。
それが自分達の最後の欲だと気付かずに。
●◆■▲▼
白夜達が大きな門の前に立つ、周りには膝を尽き王の御前を前にする民のように微動だにしない人の群れ。老若男女問わず
膝を尽く者達の顔は自分の全てを捧げた信者の様な顔をしている。
「…開かねぇ…」
その呟きに皆が一斉に立ち上がり門を開けようとするが、その前に白夜が門に歩く
普段では使わないだろう人を圧する様な口調の白夜
それだけキレてる証拠だろう、まぁそれでも無意識に範囲は相当抑えてる様だが、それも噴火寸前の火山にしか見えない。
「人んち呼びつけておいといて、何様のつもりだよ。」
奈月と手を繋いでいる手とは反対の手で、門に触れるいや触れようと手を伸ばす
それだけで門がひとりでに上から曲がると、
べきべき そんな音を奏でながら、平服するように木の板と成り果てる。
白夜はそんな門に気も止めずに、奈月の手をとり歩く。
その後ろをあらあらと付いて歩く香奈枝
「(こぇぇぇよ!?田之助!白夜が本気で怒ってるぅぅううう!!!助けて!!!えすおーえす!!)」
「(無茶言わないでくださいよ!!)」
「おじいちゃん?田之助?何してるの…?はやく行こ?」
「「はい!!!」」
2人には何時もと変わらない優しい声だが少し滲み出ている怒気が怖いと感じる2人であった…




