道中
▽理操田之助▽
今夢のような光景が目の前に広がっている。
難しいとすら思っていた光景が目の前に。
私の自慢の孫娘と、小さい頃から見ている孫の様な存在が腕を組み歩いている。
「うぅ…」
目元を抑え涙を堪える田之助に、前を歩いていた元治が呆れた様に言う
「おんし本当たまに涙脆くなるのぅ?」
「あらあら、いいじゃない?たまには。」
難しいと思った元凶がなんか言ってるが無視だぞ田之助…。
はぁ…これで旅行とか買い物ならよかったのですが…
田之助や元治達の前を歩く、
白夜と奈月、優しく奈月を支え歩く白夜だが目付きは鋭く。
瞳は赤黒く染まっていた、まるで赤い夜の様に。
▽◇▽◇▽
田之助は一通の手紙を眉間に皺を寄せ握り潰していた。
「落ち着け田之助…怒りは分かるがな…」
「っ…すみません。」
「よいよい神凪家で言ってくるもんだとおもっとったがまさか手紙で言ってくるとわのぅ?」
「あの家はこちらが自分達を絶対に必要としてると思っているふしがありますから。」
粒のようになった紙をポンと投げながら遊ぶ元治
「それで?奈月嬢をあいつらの当主の婚約者に付けろと?しかもこの言い分じゃ、白夜と結婚してんのも知っとるじゃろ。」
「確か、あの家には"流れ読み"が居ましたね。」
「どーぅせ、ごく一部に知らせた結婚を読んだんじゃろ。──
───ああ、むかつくのぉ 潰すか アレ」
元治の纏う気配が激変する
元治の体から溢れる気が無数の頭蓋骨に変貌する
亡者が嗤い
周囲の景色が堕ち
森羅万象が膝を尽く
──ぽん
いつの間にか元治の後ろに寄り添う加菜恵が元治の肩に手を置き元治の耳元で何かを呟く。
それだけで今にも全てを押し消そうと蠢く気が収まる。
「…そうだなすまんのぅ?加菜恵」
「そこはありがとうでしょ?貴方」
「ふはっ、そうじゃなありがとうな?」
「はい、どういたしまして。」
そのやり取りを後ろから眺める田之助
「ふむ、田之助ちっと予定へんこうじゃ、白夜にこの事伝えてまいれ」
それを聞き田之助は"にっこり"と微笑む。
それに元治もにっこりと微笑む、と
あれ?こんなこと前にもあったのぅ?と思いながらも、元治は田之助の返事を待つ
だが
「い・や⭐」
にっこりと言葉の後に星が付くような声で断る田之助、
それを見て加菜恵は思う"確かに私もやだな"と。
「命令じゃぞ!?」
「いやですよ!?私も白夜様の怒気に晒されてくありません!!」
元治の狂気に晒されても汗一つ搔かなかった田之助が冷や汗を搔きながら吠える
「儂もじゃよ!?ぜってーこぇぇもん!!」
──元治様が!お願いしますよ!!一生のお願いですから!!
──い・や・じ・ゃ・!!儂も一生のお願い使うからッ!!
数時間後、頭に三段アイスを作った2人が白夜の元に行くのを確認されている。
▽◇▽◇▽
人々が赤く惚けた顔で膝を尽く、
まるで王の御前を前にするように。
溶けて
溶けて
溶け堕ちる
意志が
思考が
感情が
人間性と尊厳が
堕ちる
膝をつき
頭を垂れる
赤い
紅い
朱い
あかい
夜に魅いられぬように




