フレイムドラゴン戦 下
「ダメだッ!貫通しなかったッ!!次ィ!!」
「分かってるッ!!」
フレイムドラゴンが目をやられた事により怒り狂い。暴れると同時にかすかに残った理性が狙撃ポイントの方角に腕を振り下ろさせる。
──ゴンッッッ!!
山が五分に裂け溶け尽きる
(やっっばッ!?高逃げ切れたかっ!?)
「《空割》ィィィ!!!!」
フレイムドラゴンが腕を振り下ろしたのと少しズレ本家の空割は空を割るとされてる薙刀術の秘奥が炸裂する。
空割がフレイムドラゴンの足の鱗から首筋まで斬撃が走り抜ける。
だが空割はフレイムドラゴンをよろめかせるだけで鱗一つ傷ついてはいない。
「マジかよッ!?!?」
うざったい
そう言いたげに唸ると羽を動かし中に浮く
と同時に武蔵の術が完成する
「《鳴雷空落》ァアア!!!」
昇る落雷が龍を模し、ドラゴンを喰らおうと迫り喰う
鳴雷空落を眼中に捉えながらも驚異にはならないと無視するフレイムドラゴン、それよりも自分の目をやった塵を見つける方が先だ。
だが無視したソレが20倍ならどうだろうか?
フレイムドラゴンがよろめき立ち飛び上がった場所を中心として巨大な術が複数重なりあって浮かび上がる
「「「《気総・束》」」」
巨大な術が砕け散るのと同時に武蔵が放った鳴雷空落がフレイムドラゴンを覆い隠す
──ボッッッッッ!!!
フレイムドラゴンを包み雷が上に登り続ける
その雷に近く影
「頼んだぜッッ影ッッ!!」
「まかせろやッッッッ!!!」
陰道影。
気術協会全体から見ても珍しい影使い、彼の得意な術は"影術全般"や、気や物理を影に押さえ込み叩くことで反射に近い状態を造り出せる"反術・影"と言われる術だ。
反術・影は気術を反射する術を元に強化した術だ。
影で覆い包んだ攻撃的な術を、影を触媒とした反術で攻撃的な術を内部で反射させ続け解き放つ
フレイムドラゴンを包む雷龍が影に覆われる
その影を、影を纏った影が持つ大剣で下に向け叩き割る
──ゴンッッッッッ!!!!!!
堕ちた雷が大地を砕き破りクレーターを生成する
流れた雷は周囲の木や川を打ち上げ土を中に巻き上げる
「…………どうだ…新一……?」
新一の顔を見ずに問いかける武蔵
その問いに新一は答えずにいられた、何故なら戦いが始まってからずっと発動し続けた鑑定が一切見えなくなったからだ
「…ッ逃げろッッッッ!!??皆ッッッ!!!!」
クレーターが赤くなりだす
──ゴッッッッ
赤く燃え盛る炎が大地を森を焼き払う
◇■△▼○
▼17時58分
いてぇ!!!身体がッ
「ヅァッ」
「武蔵!!!まだ起きちゃダメだよっ!」
「実っ?可憐はッッ!?」
「きゃ!動いちゃダメッッ!!」
「そんなことはどうでもいいッッ!!可憐はッ!?」
「もうッ!!説明するからッッ!!立つなッッッッ!!」
いつも温厚な実に怒鳴られビクつく身体それと同時に少し冷静になった
「っ…すま…ない」
「いいよっ、状況だけど…控えめにいって絶望的」
「っ」
「でも皆は影くん意外は無事だよ!影くんと武蔵が皆を守ってくれたからね」
そうだ…あの時咄嗟に新一を後ろに投げ飛ばし、《集中点》と炎熱無効系統の結界とか重ね掛けしまくった気がする…
「そ…うか…」
なるほどそれで…
実は目に涙を貯め言う
「でも…でもそのせいでっっ武蔵手足がッッ」
「いいんだよっ…それより状況は…?」
「それよりっ…て…もうッ………」
それから実はその後の事を話してくれた
「皆はあの後、武蔵と影を連れてあらかじめ作っておいた救護キャンプに数人が係りきりで治療、可憐ちゃんは今も…それで他の皆は一撃離脱を繰り返してる注意は散漫してるよ…」
「そうか…」
「でも…新一くんが言うには体力は鳴雷空落の時に削った以降は1割も削れてないみたい…」
「っ…やべぇな…今何時だ…?」
「18時6分だよ…」
涙が溢れそうになる。
あれだけ白夜様に期待してもらい。
常に付きっきりで教えてもらい。
その様がこれかよっ…
調子に乗っていた…
自分達は数々の化物を退治した…
決して今まで退治した者達が弱かった訳ではなかった筈だ…
ゲームみたいだと…調子にのった…
普段より断然に強くなった一人でも勝てるとすら思った
あのドラゴンの大群から逃げ切れたから?違うだろあれは白夜様が弱い個体を連れてきてくれただけだ、それを弱い個体を見て余裕だと思ってしまった
皆の推薦のおかげで指揮をとれて…
皆の…
クソっっ
二回目の時も何処かで油断してた…
あの時あぁすればっ
頭の中にもしもが流れてくる
「もうっ、もうッッ」
実に抱き抱えられる
「み、実…?」
実は俺を抱き抱えるとキャンプの外に歩きだす
「武蔵のせいじゃないから…」
外に出ると皆がそれぞれの武器を使い一撃離脱を繰り返す様子が見れる
「私達だって余裕だと思った…」
皆が諦めの顔で攻撃を繰り返す
「ムリゲーなんて口では言っても作戦が決まれば案外あっさりやれるんじゃないかと思った…」
「二人に任せれば…なんて」
「自分達では考えないで…作戦なんて失敗が付き物なのに…」
「きっと…影くんと武蔵が庇ってくれなきゃ…私達あそこで死んでた…」
「可憐ちゃんも武蔵も居なきゃ、、、何も決められなくて皆攻撃し続けることしか出来なかった…」
「そ、そんな事…な…」
「ごめんね…武蔵…可憐ちゃん…皆で…自分達じゃ考えても無駄なんて思わないで、皆で考えれば良かった…次はっっ」
「あやまるな…まだ終わってない…!!」
灰になった肩までの腕をフレイムドラゴンに向ける武蔵
「――うむ!武蔵の言う通りまだ終わってないぞっ!実っ!」
武蔵と実が声のした方向に向くと不敵な笑顔の可憐
その姿は異様であった
赤く燃えるような髪は所々灰色が混じり
朱かった瞳は白く白目の部位は紅く変貌し
首から上がるように真っ赤な紋様が浮き上がり
歪な大剣を携えるガードが握れる位に片方が伸び剣身が異様に紅く巨大である
大剣を下段で引きずるように持ち
大剣を握る左右の手は腕までひび割れひび割れから覗く内面から炎が吹き出している
「可憐……それ…は…?」
「これか…?うむ白夜様に習った禁術急のをちょいと重ね掛けてな…?まっ、長くはこの状態は持つまい話したい事はいっぱいあるが……」
可憐の視線はフレイムドラゴンに向く
「──少しあの蜥蜴ぶった斬ってくる」
「ちょ……!!」
──ゴガンッッッッ!!!
地面を陥没させ飛び立つ炎の玉
炎の玉がフレイムドラゴンの近くに着くと小型の太陽を思わせる光を放つ
次の瞬間
大気を大地を天を焼き斬る一撃が放たれた
残ったのはあらかじめ伝えられ避難した隊員達だけであった
「極熱地獄を10秒で発動できる可憐ちゃんが発動に7時間かかるわけだね……」
「まさか…フレイムドラゴンを炎で焼くためだけにこんな術発動したのか…?」
「可憐ちゃん見た目どおり負けず嫌いだから……」
▲フレイムドラゴンの討伐 18時27分【完了】




