最古の怪物
一人の幼女が綺麗な銀髪を揺らし、長い長い廊下を鼻歌を奏で歩く
その後ろを一人の青年が小走りで追いかける
だがいつまでたっても追い付けない
「~♪~♪ー~♪」
「お待ち下さい!!王位!!」
青年がこのままでは追い付けまいと声を張り上げ
幼女を呼び止める
王位と呼ばれた幼女はそれを聞き鬱陶しそうに振り向く
そこで初めて幼女の顔が見える
綺麗な銀髪を足首まで伸ばし、
髪には三つの天を向く十字を飾った半円の王冠をアクセサリーの様に身に付け、
瞳は左を白眼、右を宇宙を思わせる黒
そして特徴的なのは、左目を起点に浮かぶ顔の左部分を独占する逆十字
「……?おやおや?第4位殿じゃないか?なんだい?儂になにかごようかい?」
振り向いたのと同時に幼女の右目が瞳の色を変える宇宙を思わせる黒から左と同じ白眼へと
「…!?い、いえご報告が……!」
第4位と呼ばれた青年は片膝を地面に着き今しがた来た知らせを報告する
「ヘェ…?成田信三が何者かの手により死亡か?で?」
「へ…?いや彼は私達にとって同胞と呼べるもので……彼が居なきゃ…私達は気術協会とのやり取りが出来なくなってしまわれる…」
「ん?いや大丈夫だね、成田信三とは取引できるよ?問題ない」
自分達にとって重要人物の死が、で?の一言すまされ言葉を失っていた青年は次に告げられた言葉に更に唖然とする
「そ!それは!どういう事で…しょう彼は我らの預けた法式では…死亡と…」
「だから言葉のままだよ、わからないかなぁ」
再度問われうざったそうな顔になる幼女
「中身が誰だろうとそれの表面は成田信三だからそのまま取引すれば良いんだよ?あの子は後始末も完璧だからねぇ」
「そ!?「ねぇ?」はっはい!」
再度言葉の意味を聞こうと声を出そうとしたとこを
遮られる
「うちらの目標は何だっけ?」
「は?…そ、それは少しでも魔の真理に近付く事でございます!」
「そうだっけ?そうだね、最近皆違うことしてるからさ、忘れてたよ…ね?」
向けられた笑顔を青年は顔を上げ見ることを叶わなかった
恐ろしかった…年相応に感じられる笑顔からは歪な気配が辺りを圧迫し長い長い廊下が気薄に成り果てていく
「」
「ひひ?じょうだんだよ?」
「あぁ!そうそうさっきの報告だけどわかったよ?でも大丈夫…普通に電話してみなきっと綺麗な成田信三が出てくれるよ」
幼女はそう告げるとまた長い長い廊下を歩きだす
ここはある国の冬山
魔法協会総本部。
循環の魔回廊
そこを歩く者は幼女の姿をした最も魔を纏う怪物
世界が代表する最古の怪物と言われている
「あ、ま良いんだけどね何処と戦争しようが、儂達の可愛い可愛い弟子に手をださなきゃ。今回はあの獣が出張ったから見逃してあげる、はぁあの糞爺はちゃんと塵掃除してるのかね?…してなそう今度見に行くかね―――ヒヒヒ」




