武術の方の姉弟子、一方変わらぬ者
白一色の広い、ただ広い部屋。
そこに一つの大きなベッド、そこで死んだように眠る、妖艶な美女リェンファと、大きなベッドの横際にある椅子に本を片手に座る純白の長髪を結った美女顔の男性、白夜が静かに読書へ没頭していた。
ページを捲る音だけが、その静かな部屋に鳴る。
死んだように眠っていたリェンファの目がパチリと開く、一、二、三と三秒間の間を置き、リェンファは口を開いた。
「……美女の寝顔、安くないヨ。 たとえ弟弟子だとしてもネ。」
「…っく…くくくっ、最初の一声は何かとおもえばっ、くくっ、はははっ! 源流の人はいつも唐突ですね、──香麗師範はお元気ですか?」
「憶えてる癖に、忘れポイ聞いたネ、しかし憶えてるところ見ると、あのクソババアは印象に残たと見ていいアルカ……あとクソババアはすこぶる元気ネ。」
「ははは、……習った武術は多いなれど、いきなり攻撃を仕掛けてくる方々はいても、子供相手に一切の加減なく殺しに掛かってきたのは香麗師範だけですからね、印象はバッチリ刻まれちゃいました。」
懐かしい思い出を懐かしみ、ははは、と柔らかく笑みを浮かべる白夜へ、リェンファは修行厳し過ぎて頭おかしくなってしまったのか、と憐れみと同類を見るような目を向ける。
「それで、どうです? もう少し、戦ますか?」
形のいい唇で薄く細く曲線を浮かべ、挑発気に先程とは別種の笑みを見せる白夜に、重症の体でいながら思わず武術家としての”狂気”が溢れだしそうになるリェンファ
幼少の頃からある、確かな”強者を蹂躙したい”という”狂気”が、武術家としての”自分より上と殺り合いたい”とゆう”狂気”が
死ぬ程辛い修行を持っても折れず曲がらなかった”狂気”が──
しかし、それをリェンファは無理矢理押さえ込み、言う。
この溢れんばかりの”全狂気”暴れさせても尚届かないと確信できる”本物の怪物”に
「全快したらナ、その薄気味悪い綺麗な笑み、今度は叩き潰してやるヨ、覚悟するネ!」
不敵ながら、何処か憎めない笑みを浮かべそう言うリェンファに、白夜は”思ってもなかった返答に”目をぱちくりさせ、次の瞬間にはその再戦の誘いに
「ええ、では”次”…ですね、楽しみにしてますよ姉弟子。」
と笑みを浮かべ答えた。
「あ、弟弟子」
「白夜か式理でいいですよ?」
「白夜にするネ、そんでモノは相談ネ、何処か家賃が安い物件知らんカ? あと殺し以外の仕事が欲しいネ。」
「ギルドで特別試験でも受けますか? 紹介状書きますよ? 合格すればBランクからの始まりです、結構稼げますし、物件とかも融通されますよ?」
「頼んでいいカ?」
「ええ、任せて下さい。」
”緊急治療病室”と書かれた看板が掲げられてる部屋から白夜が出てくる白夜に近付くのは”水色の髪を三つ編みにしたメガネを掛けたクールな雰囲気の女性”
「グラマスゥ……まぁーた、新しい女性ですか。」
異空間調査組合、創設取締役総会長専属秘書〈九京 氷花〉だ。
彼女は呆れと嫉妬が混じった表情で白夜をジト目で見る、しかし白夜はその反応に”ほっこりと、あ、独占欲感じてくれてるんだ”と言う感情が涌き出てくる。
俺の嫁さん達は全員超ハーレム築かせようとするからなぁ…と、思いながら白夜は氷花に”違う違う”と大げさに手を振り、違うと伝える。
「昔武術とかもろもろ修行?してた、って話したろ?」
「はい。」
「その時の一人の師匠関係者ってだけだよ、弟弟子って感じの関係。」
「へぇ~~?」
「なんだよ、信じてなさそうだな?」
「いえ? そう言ってて結局は私と尻をならべ──「あー!あーッ!」」
下ネタをクールな真顔で言い出した氷花を、顔真っ赤に叫び止める白夜。
「女性がそんなエ□小説に出てくる単語を言わないの!」
「普段はノリノリで言わせるクセに。」
「うっ。」
それに関してはぐうの音も出ない、と沈黙し目を逸らす
そんな白夜の様子に、十分なからかいを堪能出来き満足したのか氷花は、んで。と話題を変えて上げる事にしたようだ。
「あの女性、全身打撲内部出血破裂臓器機能低下の重症でしたけど、もう意識回復したんですか?」
「うん、回復したね、さすが”神武天上”と名高い師範の元で幼少から修行してるだけあるよ、まるで重症が日常かの如く回復してたよ
──治療設備が優れてるってのもあるけど、意識はどうにも、ならないこともないけど、あまりならないからね~、さすがの精神力、天晴れだね! てか女性のところにとんでもなく失礼なルビ振らなかった?」
ねぇ? ねえ? 聞いてますん…? と騒がしい白夜を放置し、氷花は納得する。
(なるほど、あの武道を極めた者が集うと言われる【天武会】の関係者でしたか、道理で……。)
あのね? その愛人候補扱いは姉弟子さんにも失礼になるんだよ? とうるさい白夜を放置(二度目)し、頷き、これからの予定をざっくり立てようと、──してやめた。
どうせ家の白夜の事だから、さりげなくギルドに勧誘するように誘導してるだろうから、特別試験の予定と、予算、日時と他の候補者の都合合わせ、を。
とまで考えたが、どうせ。
「いつ頃、試験をしますか?」
「ん、11日後だよ、その時には他の候補者の用事も終わって都合も付くからねー、予算はもう出しといたから準備も場所も移動手段も万全だぜ~」
「やはり私の仕事はゲームの周回なのですねェ……」
「まかせたぜ! 頼りにしてる!」
「嬉しいですけど素直に喜べない!!」
何ヵ月経とうとも、世界的大組織の会長秘書の仕事は、変わらない。
▼キャラクター▼
【九京 氷花】
【主な主役回:《智核)そんな装備で大丈夫か? 白夜)お?大丈夫だ問題ないっ!》にて。】
【人物:九京財閥の令嬢、家族構成は母と妹、父は幼い頃から顔も見ておらず何処とも知れない女と浮気し、それ以降関わりが一切無い。その為、白夜以外の男を人として見ていない、それどころか大企業の令嬢が故の人物関係で老若男女を信用、信頼していない。
その為か全て一人でなんでもこなしてしまう、それが出来てしまうだけのスペックがある。
小中高と名門女子高に通っていて、そこではお試しで生徒会長になったが、持ち前の表情の無さ、感情の上下の無さ、クールと言えば聞こえがいいが、全てに対し無関心だったが故に、部員は幽霊部員と化した、しかしそれでも氷花は一人で生徒会を回し、その(名門女子高始まって以来の完璧な生徒会”として名を馳せた、しかし、そこで氷花は悟った、「自分は人の上に立つべき人間ではない」と、だから【九京財閥】を継がず、人の上に立ち優しくも付いていきたいと思わせるカリスマを持つ妹に【九京財閥】を任せる事にした。
それと別に母や妹は嫌いではなく、他が全てゴミだと認識している分、愛情は家族にしか向いていなかった。
そして適当に大学で崇拝されながら過ごしていた時に、起きた”大厄災”そこで彼女は””絶対的な裏切るなんて選択する必要の無い程の力を持つ少年に会った””】




