閑話 牙を剥く
空を順調に飛行している機空戦艦、
少しの騒動から9時間が立ち、時刻は夜の10時を回る頃、それは起こった。
副砲の揺れ以外では揺れ一つ無かった機空戦艦の内部が大きく────揺れた。
静かな空に騒がしい警報が鳴り響く
場面は部屋が多すぎると、一部を返納し、女子同士だからと同室の部屋になることにした
エヴァとリェンファに移る。
『────────!!!!!! 警報警報、機空戦艦、艦長大空紬が報告、───■■』
騒がしく鳴り響く警報を受け、エヴァとリェンファは即座に部屋の扉を蹴破り、機空戦艦の広場へと走る。
「糞、夜ふかしとは、乙女に喧嘩うてるネ!」
「んだよっ、この揺れ、あのバカが要らん仕掛けでも遺してたかッ!?」
「あの塵ならありえるネ!!」
そう愚痴を溢しながら二人は凄まじい速度で走る、その後ろから黒いマントを被った小さな影が何十と追いかけるように疾走している。
その内の一番前を走っていた小さな黒いマントが叫ぶように、しかし冷静に大人を頼るように声をあげる。
「武術家リェンファ、戦士エヴァ・バートン、情報共有を求める。」
「No.1カ! 状況はわからんネ! だから集合できる広場へ行くヨ!」
「了解。」
走る事数秒で広場へ付いたリェンファやエヴァ達、そこには、リェンファ達と同じ考えなのか冒険者達が集まっていた。
「タイラン、」
リェンファはその冒険者達の姿を見て、状況を知ってる者は居ないと判断すると、情報収集に長けたスキルと技能を持つタイランを呼ぶ。
次の瞬間、リェンファの背後にひっそりと音も無く立つタイラン。
「状況を知りたいネ、推測でいいから聞かせるネ。」
「わ、わかったんだな、ま、まず、あの塵の仕業ではないんだな、」
「理由ハ?」
「戦艦内部の爆発での揺れじゃないんだな。」
そう言うタイランにエヴァはおもむろに顔をしかめた、
「てことは外かよ、あの結界を貫通した、または何枚かは破った、てことになるなァ。」
そう情報を手っ取り早く共有する為に思考を口に出すエヴァ。
「うん、その線が濃いようだ、」
「ディラン。」
エヴァの言葉に同意する言葉と共に、ディランが姿を現す。
「場内の見回りカ?」
「あぁ、ウィント達の手がまだ居るんじゃないかな、てな。しかし場内を見回ったけど、それっぽい動きを見せるヤツは居なかったよ。」
そう言うディランに、そうカ、と返すリェンファ、
そんな二人を見ていたエヴァがこんな時に考えることじゃないけど、このやり取りだけであのバカがどう思われてるかが何となく分かるなァ、と思った。
そんな事を思っていると場内に”声が響く”
『あーあー、テステス、聞こえてるかな? 艦長の紬だ、先ほどは報告が途絶えて悪かったね、現状の確認が取れたから報告するよ、』
仲間同士で話しをしていた皆が話を止め、紬の声に耳を傾ける。
『今回の揺れの原因は襲撃、それもモンスターのだ、しかも結界を何枚かぶち抜く力を持つ、ね。
回りくどいのはキライではないが緊急事態だ、端的に言うよ、
───劣飛竜種の襲撃だ、属性付のね。』
その報告でザワッと動揺が広がる。
劣等竜種とも呼ばれるワイバーン、
その姿は腕のない羽の生えたトカゲ、喉に魔力袋と呼ばれる袋を携え、その喉を経由した息は、戦車を溶解させる熱量を持つ一撃を放つ、
飛行速度はそれほどでは無い、しかしそれでも戦闘機よりも少し劣る、と言う程度だ、
しかしワイバーンの脅威はそんなところではない、ワイバーンは戦闘機よりも少し劣る程度の速度で飛行しながらも、ワイバーンは空を縦横無尽に飛び回る所にある、戦闘機の最高速度を維持しながら、直角に曲がるワイバーンの飛行技法、それは厄介なんて話ではない、それに加え劣等とは言えど竜種。
その体を守る細長い鱗は、生半可な魔力が籠った機関銃程度なら無傷でやり過ごす、そんなワイバーンが空を飛ぶ間ずーと付きまとうのだ、そして弱ったところに放たれる戦車を溶解させる息の一撃。
これがワイバーン、人類を空から追い出した要因の一端。
そんなモンスターが機空戦艦を襲っている、
───だが、それがどうした。
ザワッと沸いた場内の雰囲気が一瞬で和らいだ、何故か?
────我ら未知を切り開き探索し、金に変える冒険者ぞ、戦える場所がある、頼りになる仲間がいる。
なにを恐れる、
誰かが言う、
「おいおい、属性付だってよ、」
「ははは!レアモンだな!」
仲間内で沸く
「うっしゃ!空の旅で腕が錆を一丁落とすか!」
「わははっ!錆と一緒に命まで落とすなよ?」
クエストを一緒に受けた事がある知り合い同士が笑みを浮かべながら
「あんたが居るなら勝ったも同然だな、頼むぜ」
「まっかせろ!今回も期待してるぞ凄腕バファー!」
その姿をみたエヴァが笑みを溢す、言う
「ふはっ、全く冒険者ってヤツラは勇敢だねェ」
「ほんとだ、流石金になるって日夜モンスターとやりあう集団だ。」
『フハハハッ!! さすが艦長の戦艦に乗る野郎どもだ!!』
そうご機嫌な紬の声が響く、それに対し幾つかのブーイングが上がる、誰が野郎どもだー!女だっているんだぞー!と
『ンハハハッ! 気にするな勇敢な乗組員! そこまでの男気! 野郎どもと言っても過言ではない!!』
ぶっとばすぞ艦長!!!と女子達からの避難を気にせず笑う紬、
『では!みなにクエストを発注するとするか、
───機空戦艦、総督こと艦長、大空 紬がこの場にいる冒険者達にクエストを発注する!!』
『目標は劣飛竜種!!一頭の討伐!! 難易度A-級と仮定!!! さぁ!!!勇敢な冒険者諸君!!!
───我らが牙を魅せ付けてやれェ!!!!!』
「「「「「おおおおおおおおおお!!!!!! 臨時収入じゃああああ!!!!」」」」」
………ここまでくると閑話とは…? と疑問を持ってきた作者です。。。




