スーと!ギコギコする必要などありません!スーと!
巨角を荒ぶらせ、大地を踏み砕く巨足を鳴らし歩く、
その姿はサイと呼ばれる生物に似ているが、
纏う荒々しさと巨体がそれを否定する
ずん…、ずん…、と地震を思わす足踏み音が恐怖を引き立たす
そのモンスターの名は───
───▽大地を荒鳴らす獣▽
このダンジョン、
〈混血の根〉と呼ばれるダンジョンの215階層に生息する、ヌシと呼ばれる存在の近縁種だ。
それに軽い足取りで近付く一人の人間、……人間…?
その人間は揺れる大地をモノともせず、手に持った巨剣を一振り、
ズバン、水が弾ける音共に堕ちる獣の頭部
「どうです?凄い切れ味でしょう!」
嬉しそうに巨剣を売り込もうとする人間、白夜は笑みを浮かべ案内人、ガイナスへとそう言う
その様子をみていたガイナスはなんとも言えぬ表情を浮かべ口ごもる、
その口ごもる内容を代弁するかのように、引っ付いて来た少女達、サラ、ミヨ、キサラが口々に言う
「お兄さんの腕がぶれたと思ったら斬れてたから、その剣が切れ味良いのか、分かんないよ~?」
「鈍、それすら達人が振るえば名刀となる、」
「漸くするとボクの拳が強いのと、兄ちゃんの技量が凄いからどちらが凄いのか分からないとゆうことだよ!!」
ガイナスは初めてこの3人を連れてきてよかった、と思った。
そしてその3人の言葉を理解した白夜は「そっかー」と肩を落とし、持っていた巨剣をガイナスへと渡した
「はい」
「はい……?」
「はい。」
「……はい。」
白夜が指差す、もう一頭のベヘモートン
それの意味が理解出来ず、ガイナスは聞き返すが、ごり押し気味に渡された巨剣をもたされ、察した
ガイナスはここが死地か、と悟り、巨剣を構え
ベヘモートンへと走り出した
「ォォオオオオオオオオオッッ!!!!!」
凄まじい気迫と共に脅威共認識せず、慢心しているベヘモートンの首筋へと《戦技》を叩き込むガイナス
「《大剣撃》ゥウウウウウウッッ!!!!!」
蒼い魔力を残し、大地へと巨剣を埋め込むガイナス、その表情はポカン、としていた。
余りにも抵抗感が無かったからだ。
「へ……?」
堕ちる獣の頭部をポカンと眺め、ガイナスは考える、この獣の皮膚硬度の高さを
その獣、ベヘモートンの皮膚の硬さはこの周辺の獣達とは一線を外れると言われるほど、硬く柔軟、な筈だ。
ガイナスはそれを理解していた。
この里の誰よりも、と言っても過言では無い程には
それが一閃で片付いた。
その結果に無様な顔を晒すのにも無理はないだろう。
確かにあの救世主様がなんの理由も無く、あの怪物に突撃させるとは思ってはいなかったが、
今はあのムカつく程綺麗な顔でドヤ顔をし、何故か六人、白夜、智核、明華、サラ、ミヨ、キサラが親指を立て、ぐっとする顔面を殴りたい。
そう思ってしまったガイナスを責められないだろう。




