月砕き
我等が愛すグランドマスターは、控え目に言って
怪物だ、それも世界を容易く滅ぼすことも、そして救うことも出来る怪物だ。
いい意味で人の枠に納まらないお方だ。
大厄災、あの事件を以降に一月と時間を掛けずに、一大組織を作り上げ
守るために力を手に入れ、その普通からはあまりにも掛け離れた力を持つゆえに、迫害されそうになっていた者達を拾いあげ
そして社会の歯車を建て直した救世主
それが我等がグランドマスター、狂っていて、全生命最強で、可愛くも怖い、そして愛すべきお方
そんなお方が、期待をしてくれている。
この化物を自分達、人だけで殺せと、打倒して見せろと。
▽△▽△▽
自分の身体が破壊され、燃やされる。
こんなゴミに御方の眷属の自分が、だ。
完璧たれ、常に欠けるなと創られた自分が。
この下等生物、ゴミ、道具、畜生風情が。
月を偽る者のオリジナルの記憶から、沸き上がる怒り
それは月を赤く染めた。
潰せ、ゴミのように、捻り、遊び、叩きつけ、希望を奪え、絶望を与えよ
そう思うが故に、そうあれと。
───赤い満月は醜悪な口を開ける
ノイズのように走る有る筈の無い欲望を添えて
───喰って喰って喰って喰って喰って喰って喰らい尽くせ、平らげろ、貪れ、素としろ、そして暴れ喰らえ
──── ゲラ■■ミジ■□□□■■■■!!!!!!!!!!!
魔力を、精神を惑わし狂わす神気が雨のごとく降り注ぐ
そして、大地が捻れ、地場が崩れ、生命生存領域が引っくり返り、水が炎となる
───筈だった。
別次元のエネルギーが凍結する、怒りが、条理が
そして白銀の髪が静かに揺れる、その他を凍結て
「噂に聞き及んだ、神気、神が扱う超常のエネルギーですわね、 ……ですが安心致しましたわ、どうやらわたくしのスキルも神の名を冠するだけあって、干渉は出来るようですわね」
なら、と白銀の髪の女性は言葉を続ける
「魔力操作もろくに出来ない化物に、このわたくしが負ける理由がありませんわ。 ……それにあなた、優位性を一個お捨てになりましたわね…?」
実体化し、凍結した偽の満月へ静かに告げる、静一
「当たるのなら、あなたを壊すことなど赤子を捻るくらい容易いのですわ、そうですわよね、おバカ?」
動かない、魂で思考が出来ても、動けない、偽の満月
そしてそれに跳躍、で近付く黒い腕の女性
その女性は嫌そうに顔を歪めながら、怒鳴り返事を返す
「こんな時までおバカ認定かよ!クソがッ!! …まぁでもあの氷結女が言った通り、実体化したなら壊すことなんて楽な仕事だわなァ!!」
口を大きく広げ、凍結状態からピクリとも動かせない偽の満月
「これで殺せねぇとしても、てめぇらみたいな弱点丸出しのヤツはその象徴を失っちまえば…!!」
拳を引き、告げる紅
「力の大部分が消えんだろォ!!そう言ってました!!グラマスが!!」
下の方から、しまらねぇ…、しまりませんね、あのおバカにしめは不可能ですのね…、などの声が。
だが幸い…?紅の耳には届かなかった。
「ブッ死ねェ!!!
───爆拳《月砕キ》ィ!!!!!!!!!!」
紅の黒腕が、偽の満月に触れるのと同時に
空に爆撃の衝撃波が走る
そして爆撃を押しきるように、拳を振り抜いた紅の姿と三日月が、空を飾った。




