レベリング
余が手をかざせば、それだけで、目の前の五百を越える魔獣が目に見えぬ理によって押し潰される。
それを何十と続け、月は余を照らすように頭上に登る時となった。
「ふむ、この余が修行など、と思うたが…、」
~~~♪~♪ーー♪
この世のモノとは思えない絶世の美音が、鳴り響く、それに群がるように魔獣が姿を”また”現す。
「こうも効率が良いと、遊戯好きの余をとしては文句が言えんな…。」
現れた魔獣へ、手をかざし、押し潰すガブリエラがそう独り言を呟き、笑い、チラリと後ろへ視線を向ける
そこには皆の姿を視線に納められる場所に座り、口笛を奏でる白夜の姿。
「ふっ、汝にとっては余達すら、庇護する対象ってことか……。
舐めるなよ。と言ってやりたいのはやまやまだが──」
そう言葉を一旦切ると、ガブリエラは眼帯をしていない方の魔眼を発動させる。
ガブリエラがもつ魔眼、『解命の魔眼』、その効果はその人物の持つ命に関わるモノを解明し見ることができる
見え方は寿命、元気、生命力、魔力・気、エネルギー、様々なモノが薄く靄のように見え、どう流れ動くのかをも見ることができる
だが、その魔眼には白夜の命が映らない。
たしかに魔力を持っているのに、使っているのに、見えない、流れすら見えない。
それを再確認し、少しガブリエラは笑うと、今度は真下へと視線を向ける。
そこには、いっそ暴力なまでの赤黒い命の奔流を放つ者が一つ。
それから逃れようとする大きな命が3つ。
「──今の余らでは、三つのヤツを一つ受け持つので精一杯だろう……」
プライドからか、口には出さないが、赤黒い方には絶対に勝てないそう確信してしまっている。
まだ操りきれていないスキルを発動しても。
「世界は広い…、今は汝に庇護されてやろうではないか。」
そうガブリエラは言葉を口にし、目の前の群れを壊滅させる。
怒り、無力感、安心感を感じる自分にイヤになりながらも
体が軽い、何時も以上に、腕に力が入る。
一振で50は死骸を晒す
二振りで100
両斧を叩き衝けば、大地ごと群れを抉る。
笑いが止まらない、振る、壊す、砕く、蹴る、割る、断つ。
鬼の名をもつその者は笑う。
ただ純粋に、命を秤に賭けたやりとりを楽しみ笑い狂う。
「ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!!」
蹴散らす、殴る、投げ、割る。
「ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!」
突き進む、渾身の一撃で両断する。
「ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!」
大地を揺らし走り、魔力を込めた拳で大地を粉砕する。
夜の光に照らされ、赤く染まる漢は笑い笑い
また、戦場を闊歩する。
彼は童鬼、名に、鬼をもつ者だ。
その赤い姿、鬼の名に恥じず。
「頭楽しんでんなぁ」
「若干ドン引きされねぇか心配に成る程な」
「あ、笑い過ぎてむせてる。」
「「「ま、頭が楽しそうでなによりだ。」」」
「よし、俺らも頭の邪魔しねぇようにやるぞぉ!!!」
「「「おおおおおおおおおおおおお!!!」」」




