閑話 交流 2
眠気を抑え、方頬を付きながら、ガブリエラは童鬼や愛華を見据え、何時間前から胸の中で渦巻く疑問を共有しようと口を開く。
「おんしらはどう見る?」
そのガブリエラの疑問文に、童鬼、愛華は"なにを?"とは聞かない。
自分達も、抱いていた共通の疑問だったからだ。
「ま、十中八九、ただのBランクではないだろうよ。ありゃあ、俺が一度相対したSランクに位置するモンスターと比較できるくらいヤバいな。」
「童鬼さんの、戦歴からして、レベル三桁のワイバーンでしたっけ…?」
「ああ、あのクソツヨ空飛び蜥蜴っ、次会ったら単独で討ってやるぅ!」
「確か、熊公は……ああ、《雷鳴装》との共闘での討伐だっか。」
「ああ」
「で? どっちが強いのだ?相対した者としての感覚として。」
ニヤっ、と眠たげながらもそう笑うガブリエラに、童鬼は頭を捻りながら暫くして口を開く。
「あの蜥蜴は、確かに強かった、Sランクのアイツが居たにも関わらず、此方は死者こそいなかったが……1000を越すパーティーが半壊する程には…な。」
「やっぱり、そちらも激戦だったのですね……。」
「ああ、だが、ああッ!なんて言えばいいかなぁ!?そう! あの蜥蜴には、全力の一撃さえ、一撃さえ…入れれば殺せる!……って感覚があったんだ。」
拳を握り、力説する童鬼、そこから少し気が沈み拳を開き、童鬼はそこから”だがっ”と言葉を続ける。
「坊主を殺せる、そう感じる事がなかった、一切だ…。昔からこうゆう家業をやらせて貰ってる俺の本能が言ってる。───ありゃ生粋の化物だ。」
「そこまでですか……。」
「ああ、余も同感だな、おんしらは気が付いているかは知らんが、あの男の娘は、このダンジョンで魔力を殆ど使っていない。」
そのガブリエラの言葉に目を見開き驚愕する愛華
「うぇ!?ですけど!ハクヤくん斬撃飛ばしてたよ!?あれって【刀術Lv6】の武技《飛閃》ですよね!?」
武技の使用には、必ず”魔力”やそれに属する”エネルギー”が必要となる。
それに対する矛盾があるのでは、と愛華は”ありえない”
と反論、いや疑問を上げる。
「違うぞ、余も目を疑ったがな……、あれはただの技量のみで放った一撃だ。あの男の娘が使った魔力と言えば、この拠点に張った結界、そしてアイテムボックスを開け閉じするさいの魔力、最後にあの大掃滅の一撃だけだな。」
「そんな…ばかなこと……ありますか…?」
「あるんだろうよ。」
童鬼が腕を組み、断言する。
「俺が見たSランクのアイツも、魔力を使わない槍の一突きで、飛ぶ突きを放っていたからな、もっとも──」
「──あの坊主の斬撃の方がヤバいがな、アイツの魔力が込もっていない、飛ぶ突きは牽制の域をでなかった。」
童鬼は昼のモンスター掃滅時に、目に映った光景を思い出し、だが。と言葉を続ける童鬼
「あの坊主の一撃、…んゃ、一振は、確実に俺達が戦った蜥蜴を堕とすだろうよ。」
「ふーむ、ギルドの隠し札、と考えるのが妥当か。」
「あー、その推測でいくと、このクエスト相当難易度高いですよね……」
その愛華の若干うんざりとしたような、言葉に、逆に2人は壮絶な笑みを浮かべる。
それを見て、愛華は苦笑いしながら「この戦闘狂共め……」と、失礼だろうと思いながらも、そう思わずにはいられなかった。
「ふっ……面白い、余の魔眼でも、 見えないとは……な。」




