補食カウントダウン 6
狙う影、飛び散り、振り撒かれた水のなかにはソレはいた、気配を殺し、息を殺し。
その者は小さかった、小人と、言う程ではない。
ただそれでも細く小さかった。
そしてその者ひっそりと水の中に、潜み。
口に魔力と水を含む。
後は放つだけだ。
必殺の水砲を
密かに嘲笑い、その者は頬を膨らませる。
「ま、そんなことさせる訳がないけど。《溜め撃ち・一貫》」
ひゅ、っと風を切る音がなり、水の中に潜んでいた者の頭部を撃ち抜いた。
「ふう、次。」
PALETTEのサラリーマン風の弓兵、夏目 真二は、そう静かに呟き、次の獲物を探す。
「流石、真二くんっ、こっちもさっさと片付けなきゃねっ!《魔法剣・氷》」
敵の群れの中央の上に飛び上がり、そう口にするのはPALETTEのリーダー、雅 愛華だ。
愛華は持つ剣を、落下に合わせ下へ向けると、魔法と、武技を同時に発動させる。
そして発動するのは、魔法と武技を組み合わせた。
オリジナル技
「《氷衝槍創》ッ!!!」
愛華の剣が、地面に突き刺さった瞬間、落下の勢いと、剣術Lv6で発動できる武技《落牙》の威力が合わさり、途轍もない衝撃波を槍のように撒き散らす、そしてそれらは魔力を帯び、衝撃波は物質となる。
出来上がるのは、無数の氷の槍だ。
そして、その槍に串刺しにされるモンスターの群れ。
これがPALETTEのリーダー
──“魔導剣士”愛華の実力だ。
「よしっ次!」
そう笑い、次の群れを探し、走り出す。
すー、と水のようなモノが中を浮かび、旋回する。
凄まじい速度で、水飛沫を飛ばしながら。
それを目で、追う一人の男。
PALETTEの、パーティ、タンク件アタッカーを勤める男、岡村 神田だ。
「水を纒い、中を舞う怪鳥……か。」
そう呟く神田は、刀に手をかける。
それに呼応するように、怪鳥は男へ猛スピードで突っ込む。
「眼で、追える、動きは単調、やはり、あの絶技には遠く及ばない。」
そう男が呟くのと同時に、男の居た場所へ怪鳥が襲い掛かり、そして水の柱が天まで上がる。
水が天へ昇る轟音の中
しゃりん
そんな鈴の音のような音が静かになると、
水の柱が、歪み、横へ断たれる。
そして現れる、首の断たれた怪鳥、血を滴らせ。
崩れ落ち死骸を横たわらせる。
その死骸にチラリと一瞬、目を向けると男は次の大型のモンスターを探しに、歩を進める。
男はユニークスキル持ちだった。
そのスキルは『瞬眼』、動体視力を任意で、飛躍的に上げるスキルだ、男はそのスキルを活かし、精密なカウンターや返しを得意としていた。
正直、男は自信を持っていた、刀の腕、動体視力に絶対の自信を、ステータスさえ、追い付けばSランクにすら、と。
だが、今朝その自信が砕かれた。
あのこの世のものとは思えない美貌の男の娘が、投げられ、斧を叩きつけられる瞬間、確かに見えていた。
時間が緩やかになる自分の視点で、見えた。
だが抜刀が見えなかった。
そして、抜刀から、振るう刀すら。
だが、確かに見えたことがあった。あの男の娘がしたのは抜刀からの、ごく普通に刀を振るうことだけだ。
抜きからの斬りの居合いではない。
抜刀から待ってからの、振り斬りだ。
あの光景が脳裏に張り付き、忘れられない。
だが、そんな常識離れした光景をみて、神田は……憧れてしまった。
少し、思い出し、普段はピクリとも動かない口を動かし、笑みを浮かべた神田は歩き出す。
「ねぇさーん!」
「はいはい、何処ですか…?」
「わりぃ、腕の間接が少々」
「はいはーい。」
PALETTEの、ヒーラー件バファー役の女性、松村 美里は、ほんわかとした笑みを浮かべ、男の腕に緑色の光を当てる
その光を受けた男は、腕をぐるぐると回し、頷き笑みを浮かべると
「流石ねぇさんだ痛んだ間接が全快した!しかも違和感が皆無だぜ!あんがとよっ!」
「よかったーですよー。」
そのまま、手を振り男を見送る。美里。
「さて、かけ直しますかー、付与術《全体強化・少》…!」
手を広げ、青い光を波のように、戦っている全員に届くように広げる美里。
「ひゅー♪ 流石お姉さま、流石だねぇ。」
そう軽薄そうに近寄るのは、PALETTEのシーカーを勤める男、山田 大城だ、今は美里の護衛中だ。
「あらあら、居たのですねぇ」
「そりゃ、ひでぇよお姉さまぁぁ」
「あらあらふふふ、貴方も行ってよろしいのですよ?」
「いやいや、楽な仕事を自分から放り投げる馬鹿は、いやせんよ?」
「あらー、本当に役立たずねぇ~~」
「お、お姉さま、たまにとんでもねぇ毒を吐きやすねぇ……おれ傷ついた…!傷ついたおれの心を治してーー!」
そう飛び上がり、抱き付こうとする大城。
「やっぱり、この子が護衛は嫌ねぇ~~」
ズドン!!っと、鳴り響き、大地に埋まる大城、それに背を向け歩き出す、美里。
「まったく、エロスケめ~」




