補食カウントダウン 5
先頭をあるく、童鬼さんが愚痴る。
「うなぁー、確かにおれもわりぃけど怒りすぎだよなー?坊主ぅ…」
うーん、なんともゆえん!
「いや、あれは熊公が悪い、余はそう断言するぞ。」
「普通いきなりはないよー、いきなりは。」
「ないない、ありえない。」
「ちゃんと寸止めするつもりだったわ!」
「本当にー?」
「……んぅむ。」
「そこは断言しておくれよ……。」
「あんた達……緊張感の欠片もないわね……」
「あん?こんな階層、寝てても死なんわ。」
と、童鬼さんが。
「余が低俗共と同じ次元に座すると、思わん事だな。」
と、盟主さん。
俺としては、
「後、七百歩も歩かなきゃ、影すら見えない距離ですからね……、警戒も何もないと言うか…。」
「んぉ?おお、マジだそんくらいじゃねぇか、スゲェじゃねぇか坊主、この距離から気配探れんのか。」
「もちろんハクヤくんですか。」
「なんで、嬢さんが誇ってんだよ……。」
「え、そんな距離まで気配探れるの?凄いわね…、うちの馬鹿と交代してくれない?」
あははは…。
でもほら、童鬼さんに蓑状態で担がれてるおっさんが暴れてるから…。
「うぉい!流石に冗談だよな!姉貴!?」
「うっさい!取りあえず感覚でセクハラするアホはこんな扱いで十分よ!!」
その情けない叫びを聞き皆が笑う。
んー、楽しい、こーゆーパーティ攻略、ってのも楽しいかもな。
そんな風に話、情報を共有し、水のダンジョンの奥地へ向かう。
景色は綺麗、大きな水辺に、少ししっとりとした森、そしてゴツゴツとした大地に、大きな山。
そんなとこを、結構順調に歩んでいたわけだけど。
ま、進んで行れば、モンスターにも当たる、それにしてはモンスターが多いような……ここってこんな湧くようなダンジョンだっけ……?
でも皆さん強いのでまったく問題になってないけど。
それに役割分担、チーム分けが早い早い。
まず、先陣を突っ走ったのが童鬼さん。
「ハッハァ!!いいねぇ!!いいじゃなあいのォ!!」
童鬼が振るう片手斧が、熊を一振で胴を別つ
そして童鬼が、持つもう片方の片方斧が、背後から迫る水を纏う猿の頭を粉砕。
「テメェラァ!!まだまだ大仕事が残ってんダァ!!こんな所でかすり傷でも作ってみろォ!!!速攻帰宅させんぞぉぉおおおお!!!!」
童鬼の怒鳴り声にも似た鼓舞が、破壊者の祭りの闘志を滾らせ上げる。
「「「「「「ォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」」」」」」
落雷が落ちたかとすら思わす、声が大地を震わす。
それを鬱陶しげに、顔を歪め、だが口は楽しげに笑う少女達。
「まったく、暑苦しい。」
そう口にすると中に浮く一人の少女が、
手を横に優雅に薙ぐ
次の瞬間、少女の前方にあった筈の、巨大な水樹が潰れる。
だが、それすら関係ない、といや。
その脅威すら認識も意識も出来ない木偶の坊。
白い太った巨大なヒトガタのナニカが、一番小柄な赤髪の少女に走り出す。
木々を薙ぎ倒し、大地を砕き。
その姿はまるで動く、建物。
だが赤髪の少女はソレを認識してもなお、不敵な笑みを崩さない。
「盟主の右腕、この”憤怒の魔神”に挑もうと言うの…、ハッ、雑魚が、役不足なんだよッッォオ!!」
元気爛漫の表情から、言葉使いから何まで豹変した赤髪の少女は壮絶な笑みを浮かべ、ドス赤いオーラを纏うと、拳を振りかぶる。
それにヒトガタのナニカは恐怖を覚えたのか、いきなり止まろうとし、こけるように、跳び跳ねてしまう。
それを見据え、落胆の表情を浮かべる赤髪の少女。
「馬鹿にすらなりきれないのかよ。
失せろ、雑魚が。」
振り抜かれた拳は、ヒトガタのナニカごと大地を歪め、砕く。
それをぼんやりと、見るのは、翠髪の目隠し、をした少女
「”転送”」
目隠しをした少女が、いきなりそう呟くと、ダンジョンのフィールドに、ドン!と聳え立つ山に、黒い円城のナニカが囲うよう現れる。
そして、目隠しをした少女は、フィールド上の水辺に顔を向けると
「山落とし」
そうまた呟いた。
そして水辺にの上空に現れる黒い円、その中から崩れ落ちるように、何処か見覚えのある形状の物体が落ちる。
そして水辺は、塞がれた。
その中から這い出ようとしていた、モンスターを閉じ込めるように。




