八頭の獣
返されたブレスは雪を巻き上げ、木々を衝撃だけで粉砕していく。
そのため、白夜達から見たモンスターの場所は見えづらく………
──ボッッ
巻き上げられた雪を蹴散らし、顎を開き食らい付こうと迫る八頭の獣
「だが…まぁ、魔法無効のスキルでそうくるのはお察しって話だがな。」
食らい付こうとした八頭の獣、だが寸前で、胴体から羽を生やし、空中へと飛び上がり
───■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!!?
六頭と成った獣が、痛みに震え、ラッパに似たような声が空気を裂くような絶叫をする
それを見ながら、智核は無表情の中に呆れを含ませた声で白夜と話す。
「流石ですね、天と地程のステータスの差が存在する筈…なのですけど。」
チラリと
白い大地を赤く染める二つの頭をみる智核
「容易く落としましたね。」
「へへん」
自慢気に、そしてどこか照れくさそうに、
微笑む白夜
その横で、拳を構える常世。
そして、目を血走らせ、怒り狂い、空中を疾走し突進してくる獣
「《鉄鎚》ーー!!」
ゴン!! 【拳術】Lv6の武技と、空気を唸らすような突進がぶつかり合う──
「うぎぎぎっ」
微かに勝ったのは、獣の突進だった。
未だに慣れない拳、 元のステータスと比べると貧弱過ぎるステータス、それらが微かに獣が勝れた要因だ。
だが…それが一つでも崩れれば…?
「其方は元から八のようなもの、それに対し此方は三人です、文句は受けつけません。」
押されそうな常世の後ろに立ちそう、言葉を放つ智核。
───《瞬間増強》
智核がそう呟くと、常世の体が一瞬赤く光る
付与──バフだ。
バフ、 ゲームでよく聞く、ステータスを一時的に上げるモノ、それはこのおかしな世界にも存在する。
【付与術】【身体強化】などなど
多彩に存在する
その中でも智核が今使ったのは瞬間的なバフ、
それは【身体強化】や【○○化】などと比べると持続性はないが、一瞬だったらそれら持続性のバフを大きく上回る強化が可能
それが【瞬間増強】
その倍率、持続性のモノを20分間○○を2.5倍とすると
【瞬間増強】は1秒間全ステータスを一万倍だ。
そしてソレラは術者の魔力や魔力密度、または技量によって倍率は大きく変動する。
智核の場合ざっと…その倍率は───脅威の1億倍
だからこの結末は予定調和だったのだろう。
空中で、拳を振り抜いた姿勢の常世
肉片と化す獣
「ありがとー!ハハ!」
「いえいえ、構いませんよ」
血が撒き散らされ凄絶な場面とは、程遠いほのぼの空間を生成する二人。
それを見て、ほっこりしてしまう白夜。
だが警戒は怠らない、
だってこうゆうモンスターは───
ぽこぽこぽこ……
肉片が音を立て膨れ上がり、肉片の頭上に天使の輪っかのようなものが現れ
数秒とせずに無傷の獣の姿がそこにはあった。
「ハァ…再生に、ありゃ【光魔法】Lv9で扱えるようになる《輪再》……の上位互換か。」
「イエス、それに【回復魔法】Lv15、人間が天使しか使えないと思い込んでる領域の魔法……《天開蘇生》も仕込んでたみたいですね。」
「魔力ごと壊した方がいいかなー?」
「いえ、そこは大丈夫ですよ、あの程度の技量ならあと、7回殺せば死にます。」
「「じゃあ、らくだ」」
膨大な魔力と共に、ラッパの音を響かせる獣。
「かわいいですね。あれ威嚇のつもりなんですよ。」
「いやー、絵面が………」
「もう油断大敵!爪でやろー!」
それを言うなら油断しないだよ常世……と出そうになる言葉を呑み込み、智核と白夜は一応構える。




