灰塵の担い手
「お、おお!教官!これ全て魔道ぐ、いえ、まさかっっ!!───禁具!?」
白夜は可憐が見抜けた事に、嬉しそうに笑顔で頷いた
禁具、禁忌の武具
込められた呪、術、祝福、がある位に到達してしまった武具の別名
見た目は魔道具と変わらなく、間違えて使用してしまい、町を腐敗させた事もある。
その為使用にはある資格を受け取らなければいけない。
「この中で欲しいの持ってっていいぞ」
「え?い、いやいや教官?禁具一ついくらするか知ってますよね!?」
「知ってるって、大丈夫、もう払っといたから」
「ば、馬鹿ですか!?」
可憐は怒る、何故か?それは禁具一つで十億は軽く越えるから、そしてもう一つ禁具には適性と呼ばれるモノがある、その適性の種類は軽く千を越え
例え適性が有ったとしても、魔力や気が足りなく
担い手として認めて貰えない事も唯ある
それを白夜は部屋の一角を埋める数の禁具を買い占めたのだ
「ま、まさか可憐に馬鹿と言われるとは、意外とダメージでかいぞ!?」
「それは私に失礼では!?っ!て!そんなことより!!」
「アッハッハ、大丈夫だって可憐はこの中のほとんどを使える」
目を細目、試すような視線を可憐にむける白夜
その引き込まれそうになる瞳に、なぜこのようなと怒って?いた筈の感情に冷や水に沈め込まれた様な錯覚に陥る可憐
だが白夜は答えを出さない、ただ目を細目、口に薄く笑みを浮かべるだけだ
「っっ!どうなっても知りませんよ!!」
なぜ怒ってのか自分でも分からなくなった可憐は、乱暴に一目見た時から魂が引かれた物に手をのばす
引き抜いたのは、大振りの大剣
刀身は赤、否、赤というよりは深紅に染め上げ
刀身の中央には丸い空洞が
可憐が引き上げたソレを見て思った印象は
焔で出来た剣
形は確かに定まっているのに、何故かそう可憐には思えた。
大振りの大剣を掲げた可憐の腕に炎の様な刻印が蠢く、それを見た白夜は思う、やはりソレに選ばれたか、と
「それは【灰神の巨剣】と呼ばれる火の禁忌が代表するモノの一つだな、その中じゃ断トツに位が高いモノだ、よく引き上げた今日から可憐がそれの担い手だ」
そう締め括ると白夜は自分の事の様に嬉しそうに笑った
「あ、え……?」
「手に馴染むだろ?」
「は、はい!」
いやそれどころかと、可憐は自分の身体に刻んだ禁術に意識を向ける、そこには少し前まではバラバラに何とか纏め術と体をなしていた多数の禁術が、今は一本の剣状に纏まっていた
「き、教官……」
謝りたい、自分の為に、自分を自分以上に信じていてくれたこの人に……だが
「──ありがとうございます」
想いと反して可憐の口から出たのはそんな言葉だった、そしてそれは謝られるより
白夜にとっては一番嬉しかった言葉であった。
「──うん、喜んで貰えて良かったよ」
そう雑じり気の無い笑顔で微笑む白夜を見て、ああ、この人が皆から好かれる訳だと再度認識した可憐であった。




