閑話 みつめる つみ
「いいのか、アンリ様」
「なにが?」
「わかっているだろ、あのくそガキをほっておいたら何するか分からんぞ。」
ああ、確かに
「不味いかもな。」
「なら!!」
「なら?どうする?」
「ッ!!」
「どうも出来んだろ?まだ何かをしでかしたわけでも、規律を犯したわけでもない。
私はどうもできんよ」
そう、それが私の制約、私自身が私に課した制約。
「っ……わかっている…!!だが彼処は不味い!!最悪連帯責任で此方が壊滅させられる!!わかっているだろ!?」
…こいつが焦った姿を見るのは久しぶりだな、相当若様にボコボコにされたのが堪えたと見る。
それに、 まぁこいつの話も一理あるか
「まぁな。あのジジイならやりかねん、だが若様なら恩情の一つはくれるだろう、あんなゴミ共を守り自立させるために頑張る慈愛深い若様なら。」
「本当にそう思うか!?あの化け物の事だ、確かに自分に振り掛かる不条理なら嗤って流すだろう…だがあの化け物の周囲の人間にもしもでも害があってみろ!!あの化け物は怒り狂うぞ!!
そしたら残るは確定された終末だけだッ!!!」
まぁ若様はそうゆう所あるよな、でも大丈夫だろ。
「フィンレー周りをよーく視ろ」
「話をそら──ッッ!?」
気が付いたか。
アンリに言われ、話を逸らす気か!?と声を上げようとしたフィンレーだが自分の”勘”に従い周囲の空間を、自分の魔力と闘気を混ぜ魔眼に昇華させた瞳で見渡す
──そして初めて気が付く、総議会内部に張り巡らされた数えるのも馬鹿らしくなるほどの暴力的なまでの数の魔眼に
「ぃ、何時からだ……あの化け物は何時から…」
何時から…か。
「若様が初めて家に来た時からだな。」
まぁこの魔眼、半年前くらいから急激に増えたが…明らかに魔眼の段位じゃないモノもあるしな。
本当信じられない速度で進化されていくお方だ。
「ッッッ」
おー、冷や汗だらだら脱水症状にならんがいいが。
「ま、だからとっくの昔にあのガキは詰んでるよ、ほっとけ」
何処かで微笑む若様の影がちらつく
「あ、あぁ」
十三聖王が一人に数えられるコイツが影一つでここまで怯えるか……これじゃ金色の神狼じゃなくてただの怯えた犬だな。
クハッ、本当に怖いお方だ…




