冥府から伸びる巨腕
──視点:凍土 静一
ふう…
「ここで最後ですのね…」
てことは……はぁ想像以上に手間取りそうですわね
静一が後ろの氷像に視線を向ける、そこには一切動く気配が見えない四本の巨椀
だが静一は確信していた、あの大厄災を乗り越えた勘が訴えているのだ
──決して目を離すな
その勘の正しさを証明するように
──ピシッ
氷像に細かい亀裂が広がる
あの隊長さんは見えなかったようですけど私なら見えるでしょうか…
「【鑑定】」
▽百椀の死鬼▽
存在59
△ △
…結構ヤバめのが出てきましたわね…私のレベルが先程のレベルアップも合わせて86
ですけど本来モンスターと人の基本性能がまず違いますしね…それも相手が上位種のモンスターともなると…
いくらレベルが勝っていようともステータスは圧倒的に負けてますわね
私が勝てるのは……技術、魔力、そしてユニークスキル…ですわね…
さて思考タイムもここまで…ですわね。
───ガン!!!
氷を内部から一本の巨椀が突き破りでる
全貌の見えない死獣が今顕現する
ソレは死だ
灰色の腕が全ての生きる命を冥府に引き摺り込むだろう
魂すら凍える冥府へ
今汝を引き摺り下ろそう
『─────━━━━━━━━━━━━━━!!!!!!!!』
「うるせぇですわ」
初手を制したのは静一であった、雄叫びをあげる死鬼をダンジョンに押し戻す様に氷の槍が死鬼に降り注ぐ、何千と降り注ぐ氷の槍が死鬼の巨椀を貫き抉る
『━━━━━━!!!!!!!!!!』
だがそんなもの知るかとばかりに五つの巨椀を振り回す死鬼
そして振り回す巨椀の風圧に吹き飛びそうになるのを堪える静一、だがそのせいで次の手を撃てずにいた
次の瞬間暴風を突き抜ける様に一本の巨椀が静一目掛け突き出される
「──ッ!?チッッ!!!シャァッッッ!!!」
間一髪、武装している小剣と長剣を駆使し、受け流す静一
だが近代兵器を軽く越すような攻撃を、全て流すなんて人外の様な事をできる筈もなく、腕の骨に致命的な負荷が掛かってしまう
まぁそれでも十分に人外の領域だが…
……っつしくりましたわッあのデカブツあんなに動けるだなんてッ
『━━━━━━!!!!!!!!』
なによりまだ七本目っ
蛇のように静一にうねり迫る六つの無傷の巨椀
「自己再生もちですのッ!?──【身体強化・速】ッ!!!」
それに対し静一は自分の速度を倍々的に強化するスキルを発動し、流し斬る
『━━━━━━!!!??』
「──【走氷】!!!」
静一が斬った箇所から凍りその氷が巨椀を衝撃の様に走り抜ける
…浅い…ですわね
「本体までは届きませんわね……」
自己再生もちと長期戦……
「ちょっとキツイですわ……」
弱音を吐いてもしょうがないですわね……
怒り狂う様に暴れる七本の巨椀を見て少しうんざりする静一であった




