番外編 冬乃
「やっぱり、強いのね会長くん。」
「強いってもんじゃないでしょう…と、言うより会長くん…?」
「今さら…?んん、下の娘が通ってる、小学校で長い事、生徒会長を白夜くんやっていてね。娘が会長、会長言うから私は会長が名前だと思ってた時期があってそれから、あのこは私の中では会長くんよ。」
「成る程…しかし昔からあぁなんですか?会長様」
少し考える仕草をする冬乃
「……昔より、柔らかくなったかしら。」
「あれですかい!!?」
「…うるさいわ。……そうよ昔ならもっと強烈だったわね」
「あれ…よりですかい。」
「ええ、昔私と娘を拐った奴らが居たわ。」
話し出された内容に驚くメンディー・山岡
そんなメンディー・山岡を無視して話し出す冬乃。
「私。昔からこんなんだから、娘達は私に頼みごとを全くしてくれなかったわ。」
思わず頷きそうになる首を押さえるメンディー。
「でも下の娘が本当に…いえ初めてね。お願い事をしてくれたの。──手を繋いで遊園地に行ってみたいって。目をぎゆっと閉じながら、私。こんなんだけど娘バカだから──即、遊園地買い取ったわ。」
やりそう…メンディーは神妙な顔でそう思った。
「油断してたわ、いえ浮かれた私は護衛を遠巻きに付けてしまって、娘共々拐われた。相手もそれなりの実力者だったわ。」
「九京家の護衛を抜いたんですかい!!?」
「ええ、それに目的も今でも分かってはないわ。推測は付くけど。携帯もスマホも札も全部、奪われたわ。そんな中でも娘は私を抱きしめ守ろうとしてくれたの。普通逆なのにね。」
「やはりお嬢様は昔からお嬢様なのですね。」
「ええ、涙で震えながらずっと自分を責めるあの娘を、私は励ます言葉が出てこなかった。昔の私は今より口下手ですからね、嘘や誤魔化し騙しの言葉ならすらすら出るくせに、娘の心を守る言葉すら出てこなかった。そんな時でした。」
「娘が『助けて会長』て、そう言った瞬間、娘の隣に白髪を揺らす会長くんがいたわ。初め見た時私。女神か何かを娘が神降ろししたのかと思ったわ。まぁすぐに気が付いたわ娘がよく話してくれる会長くんだってね。」
「でも…そんな都合の良いことありますか…?」
「言いたいことはわかるわ。"マッチポンプ"でも違うわ。会長くんを見て直ぐに分かった。こんな仕事をしてると相手を見ただけでどんな人か直ぐに分かるわ。分かってしまう。──会長くんは極度のお人好しよ。自分の委員会の副会長が"助けて"そう呟くだけで駆け付けるような、ね。ただ…」
「ただ……?」
「お人好し特有の善性、それの幾つか有るのだけど境界線だけが抜け落ちてた。人を手にかける。
現れ娘の姿を見た会長くんは直ぐにその場の私と娘意外全て皆殺しにしたわ。」
子供が容易く人を皆殺しにする、それがどれだけ異常な事か、メンディーが息を飲んだ。
「その後、直ぐにその私達を拐った構成員、その裏側に居るもの達全て、謎の死を遂げたわ。
原意は分かる、いえ気が付いたて言うのが最適ね。会長くんはその後何度か娘が家に連れて来たわ。会長くんは九京の職員達を見る時本の少し顔をしかめる時があったわ。──気になった私はその職員を調べたの、その職員達はスパイや汚職、巧妙に隠され、会長くんの件が無ければ今も気が付けなかった程に。」
「会長様は人の心でも見えるのですか…?」
「それも出来るらしい、式理に群がる大人達を見てから気持ち悪すぎて止めたらしいわ。
それより気が付いた理由ね。それは──会長くんの異常な勘よ。」
「か、勘…です…かい…?」
「ええ、会長くんは全てが勘で分かってしまうのよ。それこそ全知に近い程に。」
「それは…」
つまらないのでは…そんな言葉を掻き消す様に冬乃が言葉を被せる
「本人がある程度、調整出来るみたい。会長くんは自分の近しい人達の危機に特に反応するようにしてるみたいね。」
「さすが冬乃様凄まじい慧眼です。」
「会長くんに直接聞いたわ。」
「冬乃様実は心臓に髭でも生えてるのでは…?」
「失礼ね。ふふ、だからて、訳でも無いけど…私は娘が信じる会長くんを全面的に信じ『お母様!お母様?お母様!?』娘からのメールだわ。」
でしょうね!と言う言葉をメンディーは何とか飲み込んだ。
「会長が学校きてないですわ、そう言えば今日は平日ね……えーと、『会長くん連勝中よ』と。」
困惑するお嬢様の姿が目に浮かんだメンディーは後でメールを追加で送ることを決意した。
「あぁ、そうね御影」
「はっ…!」
「うおっ!!?」
こいつ選手として出てた…!!?
「神凪家の支援をもっと増やしといて。会長くんが使えると思ったなら。」
冬乃はこの先を言わない。
「はっ…!」
「冬乃様…今のって…」
「情報、偵察担当よ。」
や、やっぱり冬乃様油断ならね~ッ




