第十試合と第十一試合
▼◆真央那奈◆▼
『第十試合、開始でございます。』
試合開始と共に鈴木御影が影と成り、槍の様に那奈の外周を回りだす。
それを見て薄く嗤う那奈
ハッ、そっこうか。
「クハッ♪いいだろう今は気分がいい受けてやろう。」
回っていた影が槍を成し、何千との影の槍となり。
那奈を追い詰める様に回りながら、その鋭利な影を那奈に向かわせる。
さながら那奈は、何千の槍で貫かれる処刑を待つ死刑囚。
だが腕を組み仁王立ちをしながら立つ那奈は、死刑囚とは微かにすら思えない、その姿まるで魔王。
「油断大敵。【防御無視】【突き強化】【死・付与】」
御影は何千の影槍にスキルを乗せる。
相手の防御力を無視する効果のある【防御無視】
突きの貫通性を高める強化型のスキル【突き強化】
相手に斬る突く射る、と言った行動をした時相手に1%の確率で死を付与するスキル。【死・付与】
それでも那奈の不敵な笑みは変わらない。
そして次の瞬間、全ての影槍を受けた那奈
──だが、千の影槍は那奈の皮膚を、薄皮一枚も貫けなかった。
それに驚愕の表情を浮かべるのは御影だ。
「な…ぜ…?」
「ふむ?お主…しらんだな?ステータスの表示にHPが有るもの達はな、皮膚そのものが貴様らとは違う防御力で成りなってるのだ。貴様の使った【防御無視】はステータスの防を無視する、だがそれではHPで上がった皮膚の抵抗力は貫けないのだ、そして暗殺者の中級職で憶えられる【死・付与】は、これに関しては普通に妾が【即死無効】のスキルを持っているからだな。分かったか?」
ゆっくり丁寧に御影の希望を折る姿は正しく魔王。
ほんの一瞬、目の前が暗くなった御影。
だが直ぐに体制を立て直し、策を考える。
まだ抗うか…。
「ふぅむ、その活きはよし。魔王なら全てを受けてしかるべきなのだろうが……今は妾も目標がある、前菜共に構ってやる程暇でもないのでな。」
その那奈の魔王らしい言葉を無視して、御影は影に潜り那奈の円上を回り続ける。
理由は那奈が影を破壊してくるかも知れないからだ。
那奈の雰囲気は何処か"影を破壊する"そんな非常識を容易くやってしまうような威圧感がある。
──べりべり
「……え…っ?」
思考し、逃げ回る御影が頭を掴まれる感触を受けた次の瞬間
──御影は影から引きずり出される。
べりべり
そんな音と共に。
御影が顔を上げた瞬間目に入るのは。
──三日月の様に割れた那奈の笑み。
「みっけ♪」
そんな恐怖の言葉と共に片腕で御影を持ち上げる那奈。
とん
少し那奈が跳ぶ御影の頭を持ちながら
「じゃあの?…前菜」
ゴンッッッッッッ!!!!!!
御影を地に叩き付けた衝撃で大地が抉れ上がる。
その抉れ上がった大地の中心で右手を血に染め上げながら那奈は笑い言う。
「待っていろ?妾の黑き神よ♪」
◆▼北雫▼◆
「つまらない。」
私の女神、かっこよくて綺麗で神秘的だった。
だから少し頑張ったのに
「…てててて手がっぁああ!!」
雫の無機質の目の先は、両手を斬り落とされ騒ぐ男、宝前清隆
ステータスも育ててない、技術は半端、体術ははっきり言ってゴミ。
まぁ、この人が悪い訳ではないけど
「不完全燃焼だなぁ」
「こ、ここここう──」
首がポロンと落ちた瞬間、外に転移された宝前清隆
──チャキン
「よし、と。」
座っていた岩から飛び降りる雫
「次は……うん。思い出してもらえるといいな…。」
そう寂しそうに笑う雫
その後直ぐに雫の勝利が宣言された。




