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4.シャインの存在によって。

ここまで第1章。

今回は、他の登場人物の様子です。








「ほほ。まさか、そのように才覚溢れる学生がのぉ」

「えぇ、学長。彼の少年――シャインくんは、凄まじい力を秘めております。わたしの見立てでは、千年に一度……いや、いまだかつてない才能の持ち主かと!」

「辛口のマキナに、そこまで言わせるとは。相当なのじゃな」



 学長室にて。

 マキナは学長であるリデリッドに報告していた。

 というのも、昼に行われたAランクの学生による魔法実践の結果について。シャインの放った【ショット】の威力たるや、並のそれを凌駕していたこと。

 さらには上級生であるジャックの防御魔法を無効化する、特殊能力まで備えていたこと。それらの状況を興奮気味にすべて語ったマキナ。



 学長は心底嬉しそうに頷きながら、こう訊ねた。



「はて……。ところで、どこの家の子じゃったかな?」



 それにマキナは、頭を垂れながら答える。



「公爵家――リーシャス家の養子、とのことです」

「ほほう、リーシャスの。これはまた、面白いことになりそうじゃの」



 よぼよぼと、立ち上がったリデリッド。

 そんな彼を支えるように、隣に立ったマキナ。

 二人は窓際へと向かい、外の景色を眺めた。そして――。




「マキナよ、注視するのじゃぞ。場合によっては――」




 学長は、真剣な声でこう告げるのだ。




「シャイン・リーシャスの存在は、動乱を招きかねない」――と。










「ちくしょう、ちくしょうちくしょう! あのガキ、どこの家の奴かは知らねぇが、この俺様に恥をかかせやがって!!」



 ジャックは悪態をつきながら家路についていた。

 六つも下のシャインから受けた屈辱に、その表情はひどく歪んでいる。こんなはずではなかった、と。格の違いを見せつけるはずだったのに、と。

 ジャックのプライドはズタズタだった。


 しかし、すぐに報復をしないのは勝てないと理解しているからか。

 彼は苛立ちを隠そうともせず、ある場所へと向かうことにした。



「けっ……。憂さ晴らしには、やっぱりここだぜ」



 ――そこは、貧困街。

 浮浪者がうろつき、ある者は地に這いつくばっている。

 建物はどれもこれも朽ちており、おおよそ人間的生活をするような場所ではなかった。ではなぜ、ジャックはここに足を運んだのか。

 その理由というのは、明白だった。



「け、人間のゴミ共め――【ショット】」

「かはっ!?」



 路肩にうずくまる男性目がけて、ジャックは【ショット】を放った。

 突然の攻撃に、男性は目を見開いてのたうち回る。内臓へのダメージがあったのか、少量ではあるが口から血を吐き出していた。

 それを見て、ジャックは笑う。



「蹂躙は心地いいなァ! おら、立てよ……!」



 狙いを定めたのか、彼は男性に蹴りを加えた。

 口角を歪め、悦楽に浸りながら。



「ん――誰だ?」




 その時だった。

 なにか、後方から足音が聞こえたのは。

 振り返るがそこには、誰もいない。ジャックは気のせいかと思い、貧民への暴力を再開するのだった。







「はっ、はっ……!」



 カトレアは息を切らして逃げる。

 貧困街に足を運んだところ、まさかジャックを見かけるとは思ってもみなかった。さらには、あのように歪んだ行為、見ていられなかったのだ。

 涙が出てくる。

 身分の違いはあれど、人であることに変わりはない。



「ごめん、なさい……」



 だけど、自分にあの人を助ける力はなかった。

 逃げることしかできない。少女は、悔しさに唇を噛みながら懺悔した。もし自分に、あの少年のような勇気と力があれば、と。

 そうは思うが、ないものはねだっても仕方なかった。



「でも――」



 しかし、カトレアは諦められない。

 いや、諦めなかった。




「私にも、なにかできることが……!」




 抱えた荷物に視線を落とし、小さく頷いた。

 少女は決意する。




「私も、シャインくんみたいに強くなるんだ!」






 いつかきっと、弱い人も守れるようになるのだ――と。




 


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「ざまぁはないけど、コメディに振ったお話」新作です。こちらも、よろしくお願い致します。
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