3.Aクラスでの実践練習。
はい、無自覚。
――Aクラスの授業が始まった。
クラスごとにカリキュラムが異なるらしいが、ひとまずここでは基礎魔法の習得から始まるらしい。詠唱の内容に、魔力の制御方法。
これはリーシャス家にあった文献でちらりと見た気がする。
「えっと、まずは【ショット】か……」
そして、この授業では上級生の手引きを受けることになっていた。
その上級生の到着を待つ間、俺は教科書と睨めっこ。
「よぉ、お前が相手だとはな!」
「え……?」
その時だった。
なにやら聞き覚えのある、嫌みたらしい声が聞こえたのは。
見ればそこに立っていたのは――。
「あ、お前!」
入学式で、カトレアのことをイジメていた上級生だった。
俺は少しばかり身構えて、睨みつける。すると彼はくつくつと笑ってから、やれやれといった風に肩をすくめるのだった。
「おいおい、今は授業中だぜ? さすがに手出しはしねぇっての」
「…………」
俺はその言葉に、少しだけ警戒を解く。
それでも睨むことはやめなかった。こいつは、カトレアに酷いことをした。
その事実は変わらないのだから。
「それじゃ、試しに【ショット】を撃ってみろよ」
「え……?」
そう考えていると、相手の上級生はそう言った。
「お子ちゃま魔法なんて、このジャック様には効かねぇからよ。防御魔法だって使うし、ケガなんて万の一つにもしやしねぇ」
「…………分かった」
どうやら、これは挑発だ。
だったら俺は、それに乗らざるを得ない。
上級生――ジャックに目がけて、俺は意識を集中した。【ショット】は小さな魔力の塊を相手にぶつけて攻撃する技。詠唱も短く、基礎の中の基礎。
威力も当然に低く、戦闘では主に牽制に使われるものだった。
「さぁ、こいよ!」
ジャックが防御魔法を展開した。
それに向けて、俺は【ショット】を放つ! すると――。
「お子ちゃま魔法なんざ――――ぶぺらっ!?」
「え、あれ……!?」
ジャックは異音を発しながら、後方十メイル先まで吹き飛んだ。
防御魔法が意味をなさず、貫通したように見える。無様な体勢で気絶したジャックを見ながら、俺はついつい唖然としてしまった。
「これ、なにかやっちゃったのか……?」
周囲の驚きの視線が、刺さる。
しかし、そんな中で一人だけ声をかけてくる人がいた。
「グレィトゥ!! ――さすがは、千年に一人の逸材だ!!」
「あ、えっと……。マキナ先生? でしたっけ」
「あぁ、そうさ。以後お見知りおきを」
このクラスを担当する教員――マキナ先生は、そう言うと俺の手を取る。
そして、嬉しそうに目を細めた。
「わたしは、キミを歓迎するよ。シャインくん!」
「あ、はい……」
熱のこもった声。
俺は思わず、引いてしまうのだった。
「あの、ところでジャック先輩は……」
「ん、あぁ。アレは適当に医務室に運んでおこう」
――いいのか、それで。
俺は何やら、癖の強い人物に目をつけられたようだった。