2.潜在魔力測定での一幕。
色々と無自覚。
「えっと、入学後のオリエンテーションでは身体測定と――」
「おはよう、シャインくん!」
「あぁ、おはよう! カトレア!」
入学式翌日のこと。
割り当てられた教室の中で予定を確認していると、元気よくカトレアが挨拶をしてくれた。昨日とは打って変わって、とても明るい女の子になっている。
きっとこれが彼女の本来の性格なのだろう。
「やっぱり、カトレアは笑ってる方が良いよ」
「そ、そうかな……!」
なので、素直に感想を述べる。
するとどういうわけか、カトレアは顔を真っ赤にしてうつむいた。
その理由が分からずに首を傾げていたが、考えても仕方ないと思い、こんな質問を投げてみる。
「ねぇ、カトレア? この……【潜在魔力測定】って、なに?」
それというのも、オリエンテーション資料に書かれていたこと。
身長や体重などの測定は分かるのだが、その項目については何も分からなかった。こちらが首を傾げていると、少女は気持ちを切り替えるように説明する。
「その人の中に、どれくらいの魔力が眠っているのか。あるいは、どれだけ魔法に適性を持っているのかを測定するんだよ! 魔法学のクラス分けは、それをもとに決めるの!」
「へぇ……。なるほど、そうなんだ」
あの村にいた頃、身体能力に自信はあったけど。
魔力というものについては、自分の中のことなのにまるで分からなかった。これは中々に楽しみで、少しだけ怖い検査になりそうだぞ……?
「おーい。それじゃ、オリエンテーションを始めるぞ!」
そう考えていると、教員の男性が俺たちを呼びに来た。
カトレアと目配せして移動を開始する。
そして――。
◆
――いよいよ、潜在魔力測定の順番だった。
先にカトレアが、測定の水晶というものに手を翳している。
するとそれは、力強く輝いて教員のみんなを驚かせた。こちらとしては意味が分からないが、戻ってきたカトレアの表情を見る限り、良い結果だったらしい。
「みて、シャインくん! 私――Aランクだったよ!」
「Aランク……。わ、一番上じゃないか!」
「えへへっ!」
話を聞いてみると、やっぱり好結果。
嬉しそうに笑うカトレアを見て、こちらも気合が入った。
「それでは、次の生徒!」
「あ、はい!」
そんなわけで、次は自分の番だ。
水晶の前に立って、手を翳すように指示を受ける。
深呼吸をして意識を集中させると、水晶が輝き始めた。同時に身体の芯の部分が熱くなっていくのが分かる。感覚は、掴めてきたぞ……!
「ふぅ……!」
それでは、ここからはさらに集中力を高めるだけ。
俺は息を深く吸って、吐き出しながら、体内の熱を指先に集中させた。
すると――。
「へ……?」
一瞬の出来事。
カトレアのそれよりも強く輝いたかと思えば、水晶が割れてしまった。
教員たちはみな、目を丸くする。他の生徒たちも何事かと、口々に話し合っていた。呆然としていると教員から、震える手で結果の紙を渡される。
そこに、書いてあったのは――。
「上限突破のため、対処法的にAランクとする……?」
良く分からない文言だった。
カトレアに訊いても、首を傾げるばかり。
とにもかくにも、俺もカトレアと同じクラスだった。
その結果だけで不思議と嬉しかったのである。
「史上二人目、か……!」
でも、その時の俺は知らなかった。
一人の教員が、こちらを見て肩を震わせていたことに……。