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TS聖女は覇道を逝く。 〜サイコパスが聖女に転生しました〜  作者: サクシャンティウス
一章/善悪超越
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二話、難易度ベリーイージーが酷い

名前:フィリア・リザリッド

属性:雄

ランク:C-(B寄りのC)


「こちらが貴方の部屋になります。はい、これが鍵ね」

「ありがとうございます、寮母さん」

「いいえ~、必要なものがあったら何でも言ってね~」


 フィリアは寮母から鍵を受け取り、簡単な挨拶を済ませた。フィリアがいる場所は王立魔道学園の学生寮である。

 聖女として教養を身に着ける必要があると判断した王国により、フィリアは王立魔道学園に通うことになったのだ。


 本来、王立魔道学園は貴族の子息や令嬢が通う場所である。

 身分が平民であるフィリアは特待生、という扱いの元、特別に入学が許されている。


「(まさか、二度目の学生生活を送ることになるとは……)」


 フィリアは自室に一人、前世と現世の状況を照らし合わせて嘆息を吐く。

 それと同時にフィリアは二時間前に手に入れた情報を脳に思い浮かべる。


「聖女候補に聖騎士……か、面倒になったなぁ……」


 二時間前、フィリアはマルクスに連れられ王城にいた。聖女候補や魔物の活性化についての説明である。

 文献に残されている聖女の伝説や、魔物の活性化の原因。様々な話を聞いたもの――――


「(有り体に言えば世界の危機を救うために聖女に成ってほしい、っつーことだな)」


 ロールプレイングゲームに有り勝ちな設定だった。しかしそれゆえ頭がするりと理解出来たためフィリアは内心有難いと思っていた。


 ――――聖女の成り方、とやらを抜けばの話だが。

 現在のフィリアは聖女ではない、正確には聖女候補なのだ。聖女に成るためにはある手順が必要らしく、それこそがフィリア(中身オス)が面倒だと嘆いた理由である。


 聖女候補は聖騎士と絆を深めることで聖女と成る。それは王城で宰相に言われた言葉だった。

 絆を深める、文献ではそう伝えられているらしいが絆を深めると聞いた瞬間に何を言ってるのかをフィリアは理解していた。


「間違いなくコレのことだよな……」


 フィリアは目の前に浮かんでいる謎のプレートを見る。


【マルクス:好感度4】


 マルクス、それは昼間に出会った敵(騎士)の名前だった。好感度、と記されており聖女に成るためには絆が必要。

 それだけの情報があれば後は容易に想像できた。


「好感度が一定を越えると聖女に成るんだろうなあ……」


 フィリアは世界が滅ぼうとメス堕〇ルートに入る気は無い。ならば好感度を上げなければいいと考えるがそれも難しいのだ。

 何故ならマルクスの好感度は何もしてないのに上がったのだ。スキンシップや好感度が上がるような言葉など掛けていない。それどころかいつ上がったのかさえ気付けなかったのだ。


 納得できないが、現実として目の前にあるならば無理にでも理解が押し寄せてくる。

 どういうわけか好感度が恐ろしいほど上がり易くなっているのだ。


「難易度ベリーイージー、とでも言うべきか」


 ストーリー至上主義勢、童〇がかつて描いた楽園、平凡な女が何してもイケメンが寄ってくるホラー漫画――――総じて難易度ベリーイージー、仮称ではあるものの、あながち間違っていないため次の問題へ目を向けた。


「好感度をどうすれば下げられる……?」


 難易度ベリーイージーならば、好感度を下げるのもまた容易ではないだろう。とフィリアは仮説を立てた。

 その上で好感度を下げる方法、フィリアがメ〇堕ちルートを回避するならばそれを見付ける必要がある。


「って早く荷物整理しねえとッ」


 考え事をしていると気が付けば外は真っ暗になっていた。明日から王立魔道学園の一年生として通学するため、荷物を整理しなければならないのだ。


 ◇ ◇

「フィリア・リザリッドです、未熟で無学な平民の身ではありますがどうぞよろしくお願い致します。一早く仕g――勉強が追い付けるように努力します」


 翌日、簡単な自己紹介を行い王立魔道学園高等部の一年生として転入を果たした。

 転入、と言っても前日は高等部の入学式だったため入学と言っても過言ではないだろう。


 前日にフィリアは父から「貴族相手には謙った挨拶をすれば敵が増えないよ~」とアドバイスを受けていたため、前世の経験もあり挨拶は成功であっただろう。


「平民だけど中々礼儀正しいじゃない」

「あの子なら少し仲良くしてあげてもいいかもね」

「TS触手好きなら仲良くなれるかな……」


 フィリアはコソコソと話をしているクラスの令嬢たちの様子を見て成功であったと確信する。

 場所は指定されていないらしく、フィリアは近くの席に座って授業の準備を始める。



「はい、授業はここまで」

 時刻は流れて午前の授業を全て終えた。授業内容は中学生程度のものであったため、一部の公式以外は難なく理解できていた。

 魔法の授業も魔法学が現在に至るまで、などの話であったため感覚的には歴史と科学に近いものだった。


「今日はもう授業がありませんので、各自昼食を摂って帰宅してください」


 講師の女性がそう告げて教室を出ると生徒は学食に向かい始めた。


 午後の授業が無いのは学生寮に住む生徒の荷物整理を配慮した上だ。王都に住貴族は家から通う者も多いのだが、遠い地に住む貴族の子供は学生寮に住むこととなる。

 貴族の子供は沢山の荷物を持って学生寮に入る為、一日では荷物整理が終わらない場合が多く、入学式から三日は午後の授業が無い。


「(……さて、そろそろか)」


 ほとんどの生徒がいなくなった教室でフィリアは独り覚悟を決める。


「あれ? リザリッドさん、学食に行かないのかい?」

「……よォ、マルクス」


 背後から予想していた通りの男が声を掛けてきた。マルクス・ラグナード、学生でありながら騎士見習いとして働いている攻略対象の一人。


 あろうことかマルクスはフィリアと同じクラスだったのだ。良くも悪くも接触する機会が多いのだ。ゆえにフィリアは何かしらのアクションを仕掛けてくると察知していた。


「なァ、マルクス」

「ん? なに?」

「お前――――豚のような面をしているな」


 好感度を下げる、そのためにはありとあらゆる手を使う。フィリアはそう決めたのだ。ゆえに普段ならば取らない行動でさえフィリアは使う。


「……え?」

「聞こえなかったか? 貴様の顔面は醜い豚だと言ったのだ、失せろ豚」


 フィリアが出来る最大の罵倒、これ以上の罵倒は前世の学生時代が蘇るため出来ないが、貴族相手に豚というのは罵倒の域を超えて処罰されても文句の言えない暴言である。

 だが、これで好感度が下がるだろう、とフィリアは推測した。


「――――ふっ、僕を醜い豚と蔑むなんて……おもしれー女」


【マルクス:好感度6】←好感度2上がっている。


「テメエ舐めてんのかァァァァァァ!!」

「ふぁっ!?」

「醜い豚と蔑まれて好感度上昇だァ!? お前はMか!? Mなのか!?」

「女王様どうしました!?」

「やかましい誰が女王様だ! ハイヒールで踏みつければいいのか!? あァン!?」


【マルクス:好感度7】


「(ま、まずい……ここにいたら更に上がってしまう……!!)」


 予想を超えた難易度ベリーイージーの強さにフィリアは困惑を隠せなかった。そして即座に逃亡を選択したのは正解だろう。

 今のマルクスには何を告げても全て好感度に変えるほどの精神力があった。


 フィリアは教室を出てから、次の手段を考え始めた。罵倒してもマルクスは好感度を上げるという事実、それを踏まえた上で次の一手を考えなくてはならないのだ。


「(まずいまずいまずいまずい、他の手段を考えなくては……! 俺にあれ以上の罵倒は無理だ……! ならどうする!? このままメス〇ちルートに行くのだけは避けなくては……!)」


 罵倒以外の好感度を下げる行動、常識的考えて思いつく通りは無かった。だが今のフィリアには常識を破壊してでもメス堕〇ルートには行きたくないという執念があった。


「――――殺るか」


 だからこそ、その手段が頭に浮かんだのだ。日本人の感性とは思えない鬼畜外道な解決方法。それを実行すれば間違えなく好感度は増えないだろう。


「いやいや、流石に殺人はできねえわ……」


 何より恋愛ごとで殺人など、真っ当な日本人ならば行うはずがない。それゆえフィリアはその手段を心の奥深くに封印した。


「……あっ」


 その時、フィリアは一つの手段を閃いた。罵倒以上、殺人未満の方法であり、フィリア(お豆腐メンタル)でも実行できそうな手段である。


「――――これならいけるな」




 一方その頃、マルクスはフィリアの罵倒されている状況を思い返していた。その表情は複雑なものとなり肩を震わせていた。


「しかし僕を豚と呼ぶなんて……なんて失礼な……」


 マルクスは貴族の子息であり、偉い部類に含まれる人間だ。ゆえに平民であるフィリアの態度に怒りを感じるのは当然だろう。


「でも、不思議だな……何故こんなn」

「――――喰らえフィリア流格闘術秘奥義玉よ、汝に終焉を(ゴールデンブレイク)ッ!!」


 マルクスは頬を染めていた。

 フィリアの背後から奇襲を仕掛けた。

 その行動が見事に重なり、頬を染めながら股を蹴られる男、というシュールな光景が出来上がってしまった。


 マルクスは記憶を頼りに快楽を感じていた。だからこの奇襲も許してしまったのだろう。

 その証拠に今も玉を蹴られたという事実に気付いていない。

 だがそれも瞬間的なモノ、一度状況を認識してしまえば――――


「――、――」


 このように、声すら発せ無くなってしまう。顔が青白くなり、その場に倒れて股に手を添える。


「おい豚、誰が休んでいいと言った? 立て、立場を教えてやる」


 マルクスの耳に届くのはまさしく悪魔のそれだった。立場を教えるも何もマルクスは貴族なのだが、今この状況では卑しい豚となっていた。


 これこそがフィリア(ヒロインを超越した何か)の考えた対ベリーイージー作戦である。

 罵倒だけで無理ならば、暴力も入れてしまえばいい。何も知らない人がみれば完全にイジメの現場だが、今回ばかりは仕方がない。ドMにはこれほどの行動を起こさなければ好感度を下げない可能性があったのだ。


「ぁ、ぁぁ、ぁぁぁっぁ」

「ん? あんだって?」


 マルクスは股間を抑えながら何かを呟いていた。顔は依然として青いままだ。フィリアはマルクスの傍に寄り、声を聴いた。


「ぼ、くの股間を、けりなが、ら……ばとう、するなんて……おもしれー、女」


【マルクス:好感度8】←好感度1上がってる。


 そう言い残すとマルクスは気絶した。


「……どうすりゃいんだよ」


 ◇ ◇

 その日の夕方、フィリアは学園内を探索していた。対策を考えなくてはいけないことぐらい分かっているのだが、気分転換しなければやってられない。という考えの元である。


「ねえ見て、あの人って……」

「ハーヴェル公爵家の忌み子よね……汚らわしい」

「やっぱりTSは最高だぜ、はよ帰って自〇すっか」


 そんな中、生徒たちの悪意が含まれた声が耳に入った。フィリアには関係のないことのようだった。しかしハーヴェルという単語に聞き覚えがあったため、半ば興味本位で生徒たちの視線の先を追った。


「……あれ? あの子……」


 視線の先にいたのは亜麻色の髪をした少女だった。歩く姿はまさに孤高の令嬢、表情は硬く冷たささえ感じる、それでいて変化が微塵も見られない。


「――――あの子、ラスボスやんけ」


 評価を入れて頂けると幸いです。

 一点や二点でも入れていただけると嬉しいです。作者の心が軋む程度ですので正直な評価をしてください。


 感想で『つまらない』などのコメントをする場合は『具体的な理由』を述べていただければまだ考えていない部分(二章以降)に影響するかもしれません。


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[良い点] マルクス何も悪くないのに扱い酷すぎて草 [一言] おもしれー女
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