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斜め上の竜騎士  作者: ぴっぴ
第1章 竜騎士候補生
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第9話 囚われの竜騎士

「ね~! メシまだ~?」


「ウ・ル・サ・イ! 静かにしろ」


 公爵をぶん殴り、止めに入った親衛隊員15人程を病院送りにしたシュガーは地下牢に入れられていた。そして何時もの様に平気な顔をして看守に飯の催促をしていた。彼にとって大事な事は食う事と寝る事なのだ、それに牢の中は雨も降らないし魔物も出ないので、森でサバイバルをするより楽なのだった。


「シュガー様、差し入れです」


「あれ~? コア。どうしたの、こんな所に来ちゃ駄目だよ、君まで国から睨まれるよ」


「私はシュガー様の従者ですから」


 牢屋に入っているシュガーにコアが差し入れを持って来た様だ。シュガーは牢獄送りに成っているので非常に立場が悪い、彼に関わると公爵家を敵に回す事に成るので誰も彼に近づいて来なかった。それも当然である公爵家は王族と親戚なのだ、龍の帝国での実質的なナンバー2で有る。彼に逆らうと出世どころか命が危ないのだった。


「シュガー様、これを」


「何これ?」


「ヤスリです、鉄格子を切るのにお使い下さい」


 どうやらコアはヤスリを差し入れたくて来た様だ、コアは素直に牢獄に入ることを良しとはしない様だった、脱獄しろと言っているのだ。どんな手段を使ったのかは分からないが、看守の目を盗んでヤスリや食べ物を運んで来るとは流石は従者学園主席卒業の肩書きは伊達では無いようだった。シュガーが戦闘能力特科なのに比べるとコアはオールマイティに優秀なのだ、そして遠慮も慈悲もまるでない所が人間離れした美貌と相余って周りから恐れられているのであった。


「要らないよ、ここは居心地が良いんだよ。3食昼寝付きなんだ、僕は一生ここで良いかも」


「駄目ですシュガー様、折角竜騎士になったのですから大きな野望をお持ち下さいませ。引きニート等、言語道断です」


「大きな野望? もしかして世界征服とか!?」


「それもよろしゅうございますが、いきなり世界征服は難しそうです。先ずは国を一つ手に入れた方が宜しいかと・・・・・・」


「そうか~、世界征服は駄目なのか。そうだね小さな事からコツコツやらないと駄目だよね」


「国を盗るのが小さいとは思えませんが、まあ良いでしょう。こんな所に居るのは時間の無駄ですので、出てください。文句を言う連中はぶちのめせば宜しいのです、な~に世界は広いですから、他にも良い国が有りましょう」


「ここのご飯、結構美味しいから気に入ってるんだけどな~、引きニートって世間体が悪いからしょうがないね、そんじゃ脱獄しようかな」


「他所の国にはもっと美味しい物がございますわ、私達なら脱獄した後は他の国に逃げれば何とかなりますわ違う国で活躍致しましょうシュガー様」


 シュガー一人なら別段人畜無害で大人しく牢屋に入って居るのだが、コアが加わると話がややこしく成るのだ、コアは従者学園主席だけの事はあり非常に頭の回転が速い、そして普通の人間とは違う考えを持っているのだ。力こそ正義、弱肉強食こそ人間界の真理であると思っていた。まあ此れは大体に於いて正しい、貴族や王が偉いのは人徳や人間性なんて何の関係もない、彼らには金と地位と武力が有るから偉いのだ。それが無くなれば誰も彼等に敬意を払ったりしない。そしてシュガーとコアの戦闘能力は竜の帝国でも上位に位置する、そんな者が牢獄に入っているのは間違っているのだ、だから間違いは正さなくてはならないのだ。


「随分物騒な事を言ってるな」


「やあ騎士団長さん、こんにちわ」


「悪びれる様子すらないのか、貴様は!」


「とんでもございません、シュガー様は反省して毎日涙を流していますわ! そうですね、シュガー様!」


「うん! 反省してるよ。僕は毎日泣いてるんだよ! 本当だよ騎士団長!」


「もう良い! 貴様が反省なんかするわけ無い! 公爵を殴っても平気な顔をして、止めに入った親衛隊までボコボコにした位だからな」


「でも、自分の龍を馬鹿にされたら僕だって怒るよ。騎士団長は怒らないの?」


「そりゃあ自分の龍を馬鹿にされたら私だって怒る! だが、公爵を殴ったりはしないな」


「それは騎士団長の愛が足らないせいですわ、シュガー様は龍を愛してますから怒ったのですわ!」


「そうそう、愛だよね。大切なのは愛だと思うんだよ。愛は地球を救うって昔の大嘘つきも言っていたしね!」


「もう良い! 貴様らを野放しにしておくと危険だからな。シュガーに正式に任務を与える!」


「「任務!?」」


「そうだ! 貴様らにぴったりの任務だ、そこで思う存分暴れてくるが良い!」


 そしてシュガーに特別任務が与えられた、彼は帝国のエリート部隊から外れて単独で辺境の魔物の討伐命令を受けたのだ。シュガーが竜騎士で無ければ死刑も有ったのだが、帝国の竜騎士は一応貴族、そして貴重な戦力でも有るので辺境で死ぬまで働けって事だった。


「不公平ですわね、無礼を働いた公爵には何の罰もなくてシュガー様だけ辺境送りなんて」


「僕は構わないね、王都は息苦しいから辺境の方が良いな」


「それもそうですわね、王都に居るヘッポコ騎士より辺境の人間の方が根性が有って面白いかも知れませんわね」


 そしてシュガーとコアと龍は辺境へと移動する事になった。その時コアは冒険者時代に溜め込んでいた資金を全て下ろし馬車や武器、そしてシュガーの趣味の大工道具等を買い込んでいた。辺境でも何不自由無く暮らす気満々のコアであった。


 彼等の送られる辺境は帝国の外れ、強力な魔物が多く住むために開拓がはかどらない地方であった。ここに送られる人間は主に犯罪者や食い詰めた農民、そして王族に良く思われていない貴族等、早い話が帝国のアウトロー達が住んでいる貧しい地方だったのだ。そして中央もここには開発の金を出さないので非常に貧しく、開拓も全く進んで居ない誰も欲しがらない土地なのだ。別名絶望の地、それが辺境である。

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