第7話 龍の祭壇
周りの仲間は不思議に思っていたが、シュガーとコアの相性は良かった様で卒業間近になっても仲良くやっていた。そしてコアは自分で優秀と言うだけの事はあり、学業も戦闘訓練連もブッちぎりのトップで従者専門学園を卒業するのだと言う。シュガーは学業は壊滅的だったが、戦闘力は化物クラスなのでこれまた高成績で卒業という事になった。竜騎士の本文は国を魔族から守る事なので、頭は一応付いていれば問題無いって事に落ち着いたらしい。
「あいつ等仲が良いな」
「マイナス同士で上手く行ってるんじゃ無いの、あの2人」
初めは両者共に個性が強すぎて上手く行かないだろうと思ってた2人だが、意外な事に何故か馬が合う様だった。喧嘩もせずに仲良くやっている・・・・・・と言うか、コアが一方的にシュガーの面倒を見ていた。シュガーはコアに言われるままに生活している感じだった。世間ではシュガーは尻に敷かれていると言う状態だったのだ。
「シュガー様、今度の休みの日には冒険者組合のクエストをお願いしますね」
「うん良いよ、何するの?」
「オーガの討伐です、1匹10万ゴールドに成りますので、沢山ぶっ殺して来て下さいませ」
「了解! 僕、討伐は得意なんだ、オーガが絶滅するまで頑張るよ」
「竜騎士になれば装備にお金が掛かりますから、今のうちから蓄えなくては行けません。私も一緒に行きますから直ぐに終わりますわ、シュガー様」
竜騎士候補生のシュガーとコアはアルバイトとして冒険者組合のクエストをこなしていた。シュガーの得意技は殲滅、コアの得意技も殲滅、兎に角目に付く魔物は全てぶっ殺すスタイルなのだ。2人の異常な戦闘力は冒険者組合でも驚異を持って語られ、ブラッディ・ドールと殲滅のシュガーの名前は広く知られていたのだった。そして2人は冒険者組合に登録して僅か1年でAクラスの冒険者として有名に成り、そして2人は贅沢を全くしないので冒険者組合の貯金残高は大変な額に成っていたのだった。
そうやって仲良く学園に通っていた2人もそろそろ卒業という時期に入って来た。そして竜騎士候補生の卒業は龍の帝国のお祭りでもあった。卒業生は竜を得るために龍の祭壇と呼ばれる帝国の聖地で、竜を呼ぶ儀式と共に行われるのだ。この儀式には国王は勿論全ての竜騎士と上位貴族全員が出席する壮大な儀式だった、新しい竜騎士を迎える事の喜びと新たなる軍事力を他国に見せつける為に龍の帝国でも最大規模で行われる2年に一度のお祭りなのだ。
「もう直ぐ卒業だな、厳しい2年間だったぜ」
「ああ、長かったな」
「もう2度と御免だぜ」
「全然堪えてない人間が約1名居るけどね」
「僕は2年間暇だったよ」
5人の候補生の中でもシュガーだけは元気だった。他の4人が訓練でヘトヘトに疲れていてもシュガーは平気だった、なにせ彼だけは戦闘訓練が免除されていたのだ。彼に戦闘訓練をさせると教官が危険なので、彼だけは何時も一人でランニングとウエイトトレーニングだけだったのだ。
普通の人間なら何か思うところが有ったり、悩んだりする所なのだがシュガーには一向に堪えた様子は無かった。彼はお腹一杯ご飯が食べられて、コアと買い物に行ければそれで良いと思っていたのだ、他人からどう思われようと気にしない強さを彼は持っていたのかも知れないし、もしかしたらタダ単に鈍いだけの男なのかも知れない。どちらにしろシュガーは平気な顔で竜騎士候補生生活を終えるのだった。
「シュガー様、ちゃんと服を着て下さいまし」
「うん、似合ってるかな?」
「似合ってますよ、既に王者の風格が有ります」
「コアは相変わらずメイド服なんだね、もっと良い服着ればいいのに」
「これが私のバトルスーツなんですのよ」
卒業式の行われる日、その日も朝からシュガーの身支度をコアが手伝っていた。この日は王様から竜騎士候補生は騎士の称号をもらうので、候補生は全員豪華な礼装を身につける。そして降竜の儀式で現れた竜と共に帝国にお披露目されるのだ。
この日になると流石に他の候補生にも全員従者が付いていた、全ての従者が美男美女、そして礼儀作法も完璧、そして勿論戦闘能力も折り紙付きのエリート達だった。どちらかと言えば、いつの間にか体の何処かに竜の紋章が現れ、竜のパートナーに成る竜騎士よりも、努力と根性で強くなった従者の方が人間としてみれば優秀な事が多かった。
「さて、行くぞ! 皆、用意は良いか!」
「「「「おう!!!!」」」」
今回の候補生のリーダーは騎士団長の長男のジョナサンが務める、彼の父は騎士団長であり貴族としても伯爵の位を持っているので候補生の中でも最上位の地位に有った。それに戦闘力こそシュガーには勝てないが彼は学業も礼儀作法も完璧にこなすエリートでもあった。
ジョナサンを先頭にして候補生5人が竜の祭壇へと向かう、そこは大きなコロシアムの様な形状になっていて、観客から候補生が良く見える様に成っている。そしてその観客の中には国王と上級貴族、そして竜騎士全員が集まっているのだった。