第17話 追放された竜騎士
シュガーの乗る馬車は大型で少し変わっている、人が乗れるだけでは無く後ろに荷物を載せられる場所まである。上級貴族の馬車より大型で頑丈な造りをしている装甲馬車なのだ、普通の冒険者や竜騎士に持てるような物では無いのだが、2人の冒険者としての稼ぎがいかに凄いか見て分かる程の物だった。そしてこの馬車は王都の冒険者の間では有名なのだ、何せ車体が赤い。そして双剣に竜のエンブレムが馬車の横にデカデカと書かれていた。此れはシュガーとコアの冒険者チームを表すエンブレムなのだ、これを見た盗賊は逃げ出し、貴族は顔をしかめて見るという曰く付きの馬車なのだ。
「コア、何してるの?」
「報告書を書いています、騎士団長に提出しなくてはなりませんからね」
「ふ~ん、僕のする事有る?」
「ここと、ここにサインをお願いします、シュガー様」
「・・・・・・なんか、事実と違う・・・・・・」
「ふふふ、甘いですシュガー様。これで良いのです」
「でも・・・・・・」
「この方が騎士団長が喜ぶのです、間違い有りません」
コアの書いた報告書には、この半年間シュガーとコアが辺境の無法者千人と戦って辺境を開放したというラノベも真っ青な英雄譚が書かれていた。実際は1日で雑魚無法者を殲滅して辺境を開放したのだが、ここに出てくる無法者は魔王が率いている魔王軍の様に書かれていた。そしてそれを愛と勇気と感動の冒険者パワーで討伐する話になっていたのだ。
「良いんですよ! どうせあの連中は私達が苦労すれば喜ぶんです。正直な話等する必要は有りません」
「まあそうだけどね、まあ良いか。開放したのは事実だし、嘘がバレたら逆ギレすれば問題無いよね」
「その通りです、視察されても問題有りません。私の部下達は口が硬いのです」
「まあ良いや、どうせ悪口言われるのは確定だしね。精々からかってやろうかね」
そして半年ぶりに竜騎士団の建物の前に堂々と馬車を置き、騎士団長に面会を求めるシュガーとコア。騎士団の建物はシュガーの馬車が見えた途端に大騒動が起こっていた、騎士団創設以来の問題児シュガーが仕返しに来たと皆は思っていたのだ。
「御免下さい! 騎士団長さんいますか~!?」
「なななな! 何しに来た! シュガー」
騎士団の建物の入口から顔だけを覗かせて、今日の警護担当だろう竜騎士がシュガーに訪ねている、シュガーがあくびでもしたら気絶しそうな位顔色が悪かった。きっと彼は半年前にシュガーに竜共々ボコられた騎士に違いない、あの事件でシュガーがトラウマになった竜騎士は2桁いたと言う噂だったのだ。
「もう御終いだ~! シュガーの奴が仕返しに来たぞ~!」
「皆逃げろ~! 今度こそ殺されるぞ~!」
「騎士を呼べ~! 騎士が殺られてる隙に逃げるんだ~!」
「あいつ等辺境で死んだんじゃね~のかよ! 誰だ嘘言ったのは」
「何だか凄く誤解されてますねシュガー様」
「アハハハ~、注目の的って奴だよね。僕は時代が違えばアイドルになれたのにね~」
「周りの人間が逃げ出すのはアイドルとは言いませんよシュガー様」
「アハハハ、それじゃ魔王って事で宜しく」
帝国の守護神である竜騎士達が大騒ぎしていてもシュガー達は平気な顔をしている、彼等は周りの空気等は気にしない。彼等は空気を気にする必要が無いのだ、空気とは周りに気を使わなくては成らない弱者が読むべきもので強者は気にされる側なのだ。
「シュガー! 何をしておる!」
騎士団員が大騒ぎしている中を騎士団の団長が現れた、彼はこの国で2番目に強い竜騎士だった。騎士団長は巨大な火竜に乗る竜騎士なのだ。因みに一番強い竜騎士は国王陛下である、国王は代々巨大な白竜を操り戦う竜騎士なのだ。
「何と言われましても・・・・・・、ちょっと辺境の報告に来ました」
明らかに激怒している騎士団長を見てもシュガーは平気な顔をしていた、別に悪い事をした訳でもなくチャント辺境の報告に来ているのだから怒られる事は無いからだ。本来なら辺境の治安を回復させて竜騎士の威厳を世に知らしめたのだから勳章位は貰えるはずなのだ。
「報告だと? 辺境の?」
「そうそう」
「シュガー様、ちょっと黙ってて下さいませ。シュガー様が話をすると先に進みませんから、私が説明いたします」
「アハハハ、任せた! コア」
シュガーが話すと大体話が通じない、シュガーは大方の人と話が合わないのだ。そもそも人に話を理解させようとする気も無いし、理解される必要も無いと思ってるから。
「騎士団長、これが辺境での任務の報告書でございます。それと半年分の給金を受け取りに参りました」
「うむ、報告書は受け取ろう。半年分の給金は無い! 現地で調達するが良かろう」
「・・・・・・給金無し・・・・・・ですか。辺境の治安を回復させて竜騎士の威厳を高めた我々に対して・・・・・・これは又思い切った対応ですね~」
どうやら辺境に島流しされたシュガー達は騎士団から抹消されている様だ、シュガーは給料が無いのに腹を立てている様だが、こう言う決定は上層部が決める事なので平の竜騎士が幾ら文句を言っても結果は変わらない。それにコアにとっても竜騎士や国がどうなろうと一切興味は無い、むしろ余計な邪魔をされないだけ好都合なのだ。シュガー達は実力が有るので後ろ盾や肩書き等必要無いからだ。
「シュガー様、帰りましょう。我々は騎士団をクビに成った様です」
「え~マジ!? 竜騎士をクビになった人間って史上初だよね、何か凄い様な凄く無い様な・・・・・・微妙な気分だよ」
「さっさと失せろ! 公爵に無礼を働いた事で本来は死刑でもおかしくないのだぞ! 2度此処に顔を見せるな! 一生辺境で暮らすが良い」
騎士団長がニヤニヤ笑いながらシュガー達に告げる。普通の竜騎士だったら困って騎士団長に泣きつく所ろなのだろが、シュガー達は全然普通じゃないのだ、これでも騎士団の人間だったから遠慮して行動していたのだった、騎士団のクビキから開放されてしまったシュガー達はとうとうリミッターまで解除されてしまった状態になった。
「行きますよシュガー様、色々忙しいのですから!」
「え~、給料出ないと困るよコア」
「平気です、お金は稼げば良いだけですから」
「それもそうだね、竜騎士よりも冒険者の方が稼げるもんね!」
とうとうこの国はやらかしてしまったのだ、破天荒なシュガーが一応遠慮していた事等誰も思わなかったが、シュガーとコアにシガラミが無く成った事で人間の形をした災害が世の中に放たれたので有る。
「シュガー様、先ずは冒険者組合に行って素材を金に変えましょう。その他にも色々と・・・・・・」
ニヤリと微笑むコアは物凄く悪い顔をしていた、シュガーよりも遥かに凶悪な人間を野に放った事に騎士団長達が気がつくのはかなり後になってからだった。




