【日本語研究部】
【日本語研究部】
その看板はうちの学校にしかない。そう、俺が世界初で作った部活だからだ。
我ながら意味のわからない部活だと思うが、ちゃんと6人という部員も無事集まったし、案外居心地も悪くない。
『みんな、おはような』
部室にいる個性の塊みたいな部員に語りかけるが返事はひとつしか返ってこない。
並べられた本棚。そのなかの国語辞典、外来語辞典、ことわざ辞典、慣用句辞典、カタカナ語辞典、古語辞典……
そして、その隣には俺こと細田迪の本だ。
今日は小説の続き書かなくていいんっスか?
ツリ目の八重歯野郎、なんて呼ばれている部員柴灯日良に言われる。
お気づきだろうか
この部活は細田迪の小説家の道を行くための部活。ここの部員 柴灯、小田原、与古田、智羽、三日市は最早俺のアシスタントなのだ!
ここの学校は断じて普通の学校だ。
東京都藤羽大学、通称『羽大』。
上の下の中くらいの生徒達が集まるいいとも悪いとも言い難い、そのくらいの学校と言っていい。てか、言われている。
ドアがノックされる音。
三日市酉
『来やがったなアイツら』
そうため息を吐くのは普段無口な三日市だ。
こいつは賢い。世界トップクラスの大学にも行けるはずだがテレビに出たくないと、この大学へ。
そのため息マンの隣で目を輝かせるのは与古田リア
名前の通りハーフだ。可愛いものを探す女子は好きじゃないがコイツは可愛いの定義が可笑しいので許容範囲としよう。
ドアがゆっくり開けられる。リアが駆けつける。
『おにぃちゃん!!』
そう言うのは三日市の妹……ではなく。
『兄様』
そう紳士的に呟く幼女も三日市の妹……ではなく。
この物語の主役と言っていい人物
『矛』と『盾』だ。
そのまんまの『矛盾』なのであるが、その名前には訳がある、……が。
兎に角、困るくらい可愛いのである。
『んぁあ!可愛い!』思わず声をかける俺
『うん!ありがとう、ゆうおにぃちゃん!』笑顔で答える矛。
『いや、とんでもない』やはり紳士的に答える盾。
『また今度何か買ってあげるからね!』むぎゅうっと抱きしめる俺
『ゆぅおにぃちゃんだいちゅき!』と抱き締め返してくれる矛。
『あ、ありがとうございます、迪兄様』と照れる盾。
なぜこんな可愛い女の子達がここに居るかは……
『ンだよ俺が召喚してやったってのによォ』
このやり取りを見て不満げに呟くコイツ……三日市酉が【能力】を持っているからだ。
『黙っとけって』幼女好きのやばいやつ、智羽が宥める。
智羽筵。こいつは可愛い漢字とかいうのを研究している。
仲裁に入った智羽に便乗し、リアも喋り出す
『可愛いんだからいいじゃないですかぁ↑
ほら!ここの指の爪なんて最高ですし!』
『るっせぇなぁ』
古語辞典を眺めていた柴灯が怒り出す。
『三日市が召喚した【故事成語】の矛と盾。可愛いとか爪がどうとか。いいだろ、故事成語面白いだろ?』
静かに頷く小田原悟。
だめだ。ちゃんと説明しないとあたまがこんがらがる。
まず、この可愛い物体を生み出したのは三日市だ。
三日市は能力をもっていて『言葉の擬人化』ができる。もっとちゃんとした人を作りたかったようなんだが、幼女好きの智羽のせいでこんなふうになってしまった。
が、その可愛さは異常で与古田リアに受けがよかった。小田原はずっとそれを眺めている。
そんな日常生活である。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈登場人物
細田迪 ほそだ ゆう
柴灯日良 さいとう あかり
小田原悟 おだわら さとる
智羽筵 ちば むしろ
三日市茜 みっかいち ゆう
与古田リア よこた りあ
矛 ほこ
盾 たて